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Chapter22-3

挿絵(By みてみん)





「エルミス、さっき朝飯食ったのに本当にチャレンジメニューなんて食えんのか?」

「おう、あと三軒回るからな。付き合うなら食う分セーブしとけよレヴァン」


「なるほどな……エルミスでは解読不能の図を、俺に解読させるために貸し出してほしいと頼んだのか……」

「そのつもりだったんだが……」



 喫茶店で老婆と別れ、エルミスがやりたかったというチャレンジメニュー巡りへと駆り出された三人は、テラス席に座ってそれぞれ注文した品を待っていると、最初にエルミス以外のティーセットがやって来た。


 エルミスから資料本を受け取ったリーコスは、事細かく書かれているページを眺めつつ、時折ナノス市民の声に応じて手を振り笑顔で応える。



「セリーニもそれが分かるとは思わなかったんだよなぁ」

「えっ!?芸術的ではありますが、決して分からないような部類では……」

「いやねーちゃん、流石におれはわからなかったぞ」

「えぇ!?レヴァンもこんな図を描いているような……」

「いーや!おれはもっとちゃんと描いてる!はず!」



 そう、セリーニもぐちゃぐちゃで理解不能な図を解読できるという事に、エルミスは驚いた。だが驚きと当時に、初めてセリーニと出会った時を思い出す。



(そういや、リーコスの似顔絵でオレを探してたんだっけか……)



 やいやいと言い合う姉弟を視界に入れつつぼんやりと思い出していた時、エルミスの目の前に巨大な二段ホールケーキがやって来た。



「お待たせしました、チャレンジメニューのチョコレートと紅茶のダミエケーキです」

「おぉー!美味そう…!!」

「時間は三十分です」

「よし……いただきます!」



 エルミスの合図と共に砂時計をひっくり返した店員が店内へと戻っていく。グラサージュしたチョコレートの光沢にナイフを刺し込んでワンピース分を切り取ると、ダミエ柄の断面を確認する。ほんのりと茶色の紅茶とチョコレート色が段々に重なっているソレを見て笑顔満点のエルミスは、大きな口を開けてワンピースの半分ほどを口に含んだ。


 ほろ苦いながらも甘さの立っているチョコレートと、香りの高い茶葉を使った紅茶の味わいが混ざり、香りが鼻へ抜けていく。



「うーまっ!うまい!」

「だろうな。見れば分かる」



 リーコスはエルミスの表情を見てそう語ると、再び資料本のページを捲る。どうやら次の項目はナノス全域を表し、六本の柱をどこに置くかの図案の様だ。様々な案があったのか複数書かれており、かなり悩んでいた事が分かる。



「六本の制御柱で防魔法文字の強度と安定を得る、……本当に、よくこんなことを考えたものだな」

「そもそも魔法文字を安定させるために安定術式を時計塔本体に組み込まずに、制御柱に組み込んでるだろ?だから安定している防魔法文字の効果がナノス市だけじゃなくて森も護ってる。正直すげーよ、それ考えた奴。絵はあれだが……」



 絵は、と付け加えながらケーキを食べ進めるエルミスに、リーコスは誰が考えたのか、と背表紙の方を見る。普段書いてあるはずの責任者の名前の名が書いていない事に、ほんの少し眉を上げて驚くと、隣で紅茶のマカロンを食べていたセリーニの方へと視線を向けた。



「セリーニ隊員、時計塔を作った責任者について、なにか教科書等に書かれていなかったか?」

「えぇっと……いいえ、とくには。時計塔が出来た年や、仕組み等は習いはしたんですけど……。レヴァンはたしか選択科目に歴史を先行していましたね、何か習いましたか?」

「いんや……おれもせんせーに習った限りでは、関わった人数やら時計塔の術式の仕組みぐらい……」



 姉弟二人の言葉にリーコスとエルミスが思案気な表情を同時に浮かべる。



 ナノスの絶対的防御、最大の護りと言っても良い時計塔を作る責任者は、どう考えても教科書等に載ってなくてはいけない存在だ。語り継がれてもおかしくはない存在であり、資料本に名を残さなければならない人物、その名が無い。



「あっ、でもその時計塔の中心人物だった人は、かなり変わった人だったらしいって、歴史のせんせーが言ってた!」

「ふーん、変わったやつなぁ……」



 レヴァンの言葉にエルミスは軽く相槌を打ちながら、皿の端に盛られていたフルーツをフォークに刺して口に放り込む。


 変わったやつ――、最近夢に出てくる丸型眼鏡のおさげ頭が時計塔の図面を工房で書いていた事を思い出す。あの女性を形容するのであれば、確かに変わった人物という言葉が似合うだろう。


 だが変わった人物であれば名前ぐらい載るだろうという考えが、エルミスとリーコスの脳内の片隅に残った。



手越君の生放送で、手越君がむちゃくちゃゲーム上手いという事実を突きつけられてしまった…こんばんは!!


野球界のレジェンドが天国に旅立ってしまわれました。野村監督は新人の田中投手をすぐにマウンドに立たせ、調子が悪く負け星が続いても根気よく使い続けたのが印象的でした。絶対に光るものがあるからこそ、マウンドに立たせ続けて経験を積ませたかったのだろうと。そして創立して間もない楽天に優勝を与えてしまう、その凄さが今でも思い出せます。



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