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Chapter3 初めての魔法道具

挿絵(By みてみん)





「おぇぇぇ…」



 早朝の地下書庫に響き渡るえづく声。紫色の魔力を放出する魔法陣から現れたエルミスが第一声に発した声だった。空っぽの胃がびっくりするほど胃液がクラッシュし、何も入っていないのに胃もたれを起こしている感覚がエルミスを襲う。

 日付が変わる二十四時から早朝四時の四時間、修理の手を止めて上巻を読む作業を進めていた。なにせ一冊分の文字数の為読むのに時間が掛かり、下巻と照らし合わせながら読めばあっという間に時間が経ってしまっていた。



 数枚のメモを下巻に挟んで転送魔法陣の上に乗り、上巻の空間から地下書庫に戻り今に至るエルミスは、まだ少しグロッキーな身体に鞭を打って階段を上り工房へと出る。本来ならば朝日が差し込むのだが、生憎窓はガラスが割れてしまい板によって閉ざされている為、明るい、という事だけが目の前の特殊硝子で確認できる。



(こりゃガラス屋が泣くな…)



 大儲け出来る嬉し泣きか、あるいは忙しさで手が回らない猫の手が欲しい焦り泣きのどちらかだが。規格の範囲であれば取り付けは可能だが、特注で作られるガラスは再び一から作る為時間が掛かる。外装に拘る人は少なくない為、忙しさで焦るのがエルミスには想像できた。

 冷却箱から炭酸水の入った瓶を取り出し専用の栓抜きで蓋を開けて中身を飲む。味のしない唯の水だが、爽やかなのど越しと胃の気持ち悪さを緩和する炭酸にほっと一息つきつつ簡易寝室を通ってシャワー室へと向かった。





 エルミスが改めて上巻と下巻を両方読み進めて気付いたことは、神代の技術は決して古いだけのものではなく、なぜ失われてしまったのかと思うほどの万能さがあった。だがその万能に届くには、高度な技術が必要である事も分かった。その技術を簡単に習得出来るかと言われれば、今のエルミスは首を横に振る。



「作るときの一番の壁は鋼と鉱物、魔法素材を混ぜる技術と練度か…」



 シャワーのお湯がティールブルーの髪を濡らす。しゃかしゃかとシャンプーで髪を洗いながら頭に刻み込んだ材料たちをどうやって一纏めにして一つの素材にするか、ただそれだけが頭を埋め尽くしていた。暫くは失敗作を大量に作り出して正解を導き出さねばならない、と考えつつシャンプーの泡を洗い流して身体を洗い綺麗にする。




 シャワー室から出て髪を乾かし服に着替えるまで約三十分が経っていた。炭酸が弱くなった残りの水を飲み干しつつ簡易寝室から出て空になった瓶をケースに入れて工房から出る。

 朝日がほんのりと差し込んだ良い早朝だった。昨日の騒動が嘘のような静けさが街を包む。


 昨晩リーコスが持ってきたバッグの中にはセリーニのハンカチも入っていた為、先にギルドへと向かいセリーニへと返すついでにシゼラスへと来てもらう様にクエスト登録をせねばならない。ほんの少々遠いが人が居ない静かな早朝だと歩くのは苦ではない為、エルミスはレンガ道を歩いていく。

 かちゃかちゃ、と歩く度にポーチに入っているストッカーが鳴る。昨日リーコスを怒らせた原因のプレートが入っているストッカーポーチは、エルミスにとって貴重品を入れる場所だ。家の鍵、おやつ、セリーニのギルドカードなど、ストッカーとスイッチストッカーに混じっていても、マナが入ったストッカーは手で触れたら分かるため特別取りミスなどは無いが、逆を言えばストッカー以外の物だと落ちてしまうと分からない。

 今回たまたま軽いプレートが十本取り出したストッカーに挟まりポーチから飛び出したのだろうと予測するが、滅多に多くのストッカーを取り出すこともない為、今でもストッカーポーチへとプレートが仕舞われている。



 パン屋から漂う良い匂いに鼻を擽られつつギルド中央支部の門を潜ると、夜間シフトのギルド隊が玄関周りの掃除を行っていた。おはようございます、と挨拶をしながら受付へと向かい、セリーニのギルドカードを受付へと出す。



「おはようございます。どのような依頼でしょうか?」

「出来れば今日中、時間はいつでも、鍛冶屋シゼラスの方にこのギルド隊員を向かわせてほしいんですが…」

「シゼラス…少々お待ちください」

「…?」



 受付の男性はシゼラスという言葉を聞いて席を立ち、整頓された書類ケースの引き出しを開け中から一枚の紙を探し出し"これだ!"と言わんばかりの顔をすると、そのまま席に座って受付のカウンターに書類を置く。



「リーラ・ロドニーティス様から"必須クエスト"として設定されている内容と同じか確認していただけますか?」

「へ?あ、はい…」



 受付隊員の思わぬ言葉に素っ頓狂な声を出しながら、フリークエストとはまた一つ違う材質の書類へと目を通す。母親の名前とエルミスの名前、そして"エルミスと同行したギルド隊員を指名、シゼラスへの機密クエスト。その後魔法学校へ来訪求む"と書かれている。いつのまに…と考えたが、行動力の良い母親の事、昨日の間に登録したのだろう。機密扱いは必須クエストとなっているのか、金額も書かれており既に支払い済みの判が押されている。



「…合ってます」

「了解しました。一応ギルドカードを通しておきますね」



 カウンターの上に置かれたセリーニのギルドカードを手に取った受付隊員は、専用の読み取り機にカードを差し込み現れた魔法文字を指で操作している。



「それ、…もし差支えなかったら、何をしているか教えてもらえますか?」

「ん?あぁ…これはですね、個人のギルド支給の専用通信機にクエスト内容を送っているんですよ。必須クエストやギルドカード提出時のクエストは通信機に送られるので、ギルド隊員がスムーズに確認できるんです。送ったクエストを遠くからでも隊員が受理できるんですよ」

「なるほど…ありがとうございます」



 セリーニを初めて指名した時も受付嬢が何かを確認していたなと考えていたが、専用通信機にクエスト内容を送っていたのだろう。あの時はフリークエストだったが、椅子を出していたセリーニが送られたクエスト内容を確認し、通信機を使ってクエストを遂行可能と返したのだとエルミスは納得する。礼を言って受付隊員からギルドカードを返却してもらうと、"良い一日を"という言葉に軽く笑顔を見せつつ手を振って玄関を出た。



「あれも、第三大陸の品物なんだろうなぁ」



 機械と魔法の国・第三大陸クラティラスは"機械"と"魔法"の融合を目指す大国。魔法特化のアステラス国とは違い、魔法を機械に組み込んで一つの道具としている。通信機や魔法遮断器から、生活用品まではほぼ第三大陸からの輸入品で、貿易を結んでいるアステラス国は第三大陸の魔法機械を輸入し、機械に組み込むギアや魔法装飾、西地方特産の食物等を輸出しているのだ。




 店から戻る途中でラグダーキに入る。ちりんちりん、とドアベルが店内に客が来たことを知らせると、カウンターに立っているコラーリがぱちーん!とウインクをしてエルミスを出迎える。



「おはようエルミスちゃん!今日は早起き?て・つ・や?」

「徹夜。おはようコラーリさん。メシ、注文できる?」

「ばっちりおっけぇ~ん!なにする?」

「いつもの。ソースだけおまかせ、あとなんか炭酸の飲み物。食後の珈琲は有り」

「はいはぁ~い」



 フリルの黒いエプロンがウッド調の店内に似つかわしいと初めは思っていたエルミスだが、今では慣れてしまった。慣れは怖い。筋肉が溢れる男にフリルのエプロンだ。だがなぜか今では良く似合うと思うほどにまでなってしまっている。

 店内を見渡しながらカウンターの椅子に座るエルミスは、"いつもの"にソースをおまかせで注文すれば、コラーリはばっちり決まった長いまつげでウインクしつつOKサインをする。彩られたマニキュアはピンクベースに白い花柄が可愛らしくあしらわれていた。


 椅子に座ったまま窓ガラスを見て割れていない事に気付いたエルミスは、食事を作り始めたコラーリに質問する。



「窓ガラス、割れてねぇな」

「昨日は朝から大風だったでしょ~?このお店ガラスが特注だから、風見鶏に付いてるプロペラが一定のスピードを超えたら雨戸を閉めておくって決まってるのよん」

「へぇー…今度からここの風見鶏を参考にさせてもらうとするか…」

「あら、その口ぶり…もしかして割れちゃったのかしらん?」

「あぁ、お陰で工房の中が嵐みてーだったぜ」



 濃厚なバターの香りと、ベーコンと玉ねぎの程よい香ばしさがエルミスの鼻を擽る。米と一緒に合わせてバターライスを作ると、形を整えて皿に盛ったコラーリは、嘆くエルミスに"災難だったわねぇ"と返しながらカパンッと音を立てて卵を割り、ボウルに卵を三つ割り塩コショウを少々、空気を含ませて掻き混ぜながら熱したフライパンの中でしゅわしゅわと泡立つバターを眺めている。



「でもでもでも、今回もまた王子さまがガツーンと解決してくれたじゃな~い!」

「…まぁな。お陰で王宮から東は無事だったし…王宮の建物とガラスなんてぶっ壊したら、直すのに何年かかるか分かんねーし」

「そもそもお城建てるのが何年かかるか分からないわよぉ~」

「…たしかに。そういうのは職人ぐらいしかわからないだろーな」



 フライパンの熱で熱された卵液をしゃかしゃかと手早く掻き混ぜふわりと空気を含ませながら、くるくるとドレープに仕上げてバターライスへと乗せる。波打つドレープオムライスの周りに温めたホワイトソースを掛けその上にチーズを乗せれば、火のギアが組み込まれたバーナーで炙ってチーズを溶かす。

 最後に乾燥パセリを振り掛け、ハート型にくり抜いたプロセスチーズを乗せたオムライスの皿とスプーンがエルミスのカウンターに置かれた。



「いただきます」

「はぁ~い、どうぞ~!それにしても…王子さまも大変ねぇ。ギルドに光の使者に…身体がいくつあっても足りないほどなのに、すごい体力だわん…」

「昔から頑張ってるからな、アイツ。…ん、美味い」

「ありがと~!あらあら、幼馴染の目線でも頑張りが分かるってやつかしら?」

「まぁな。アイツがちいせぇ時は疲れてる顔してたぜ、体力が付いて疲れを外に見せなくなったのは…割と最近だな」



 もぐり、一口含めば濃厚なチーズとホワイトソースにバターライスが程よく合っている。コロコロとしたベーコンをしっかり噛めば、塩味と燻製の香りが口の中の味を変えていった。ごくん、と飲み込み次の一口を作っていると、コースターを引いた上に氷とレモンが浮かぶ炭酸水が置かれ、可愛らしいハートのストローが刺さっている。



「しぃ…っかりと、私の筋肉(あいじょう)で絞っておいたわよん!」

「…おう」



 濡れ布巾で手を拭いているコラーリの周りはレモンの爽やかな香りが漂っているのを、カウンター越しのエルミスが感じるほど(あい)を込めたのだろう。しっかりと色の付いているレモン炭酸水のストローを唇で啄み軽く吸えば、案外酸味と甘みが炭酸と共に入ってきた。どうやらはちみつも入っているのか、思っていたよりかは飲みやすく、酸っぱいという顔をすることなく喉を通り胃に入っていく。




「そういえば聞いたわよぉ~!エルミスちゃん、"ギルド、期待の新人女剣豪ちゃん"のギルドカード持ってるんですって?」

「……その新人がセリーニの事だったら当たってるぜ。相変わらず情報が早いな、どこから仕入れたんだ」

「仕入れるもなにも、噂になってるのよん!人気の新人ちゃんが"唯一"ギルドカードを渡した相手って…このこのぉ~!やるやるぅ~!」



 サクランボもつけちゃう!と"新人ちゃん"の髪と目の色を連想させる赤いさくらんぼをレモン炭酸水のグラスに入れたコラーリは、もぐもぐとハート型のチーズを食べているエルミスの額をつんつんと突いて隅に置けない男子になっちゃったのねぇ~と呟いた。



「…ギルドカードって、普段はばらまくモンなのか?」

「んー、まぁエルミスちゃん達の様に"常連"みたいなのがギルドにもあるのよ。"あの隊員に今後も頼みたい"っていう依頼者が隊員に言ってカードを貰もらうの。新人ちゃんも色んな人からカード頂戴って言われていて、その都度全部断っているってお客さんから聞いていたのよねぇ…」


「……オレ、頼んでねぇけどくれたぜ」

「…!?」



 もぐもぐ、ごくんとしっかり咀嚼したものを飲み込んでセリーニからギルドカードを強請る事なく貰ったことをコラーリに伝えると、ばっちりまつ毛で彩られた目をかっぴらいて驚きの表情を作った後、慌てて店内をきょろきょろと見渡す。朝まで飲み酔いつぶれ眠っている客、珈琲を飲んで新聞に集中する客、エルミスの話は聞いていないわね…と、ほっと厚い胸を撫でおろすコラーリは耳打ちするように手を口元に持っていきエルミスへとこそこそ話しをする。



「エルミスちゃんが強請ったならまだしも、"自主的に貰う"ってなると、強請っても貰えなかった男どもにジェラシー向けられちゃうから、自主的に貰ったっていうのは内緒にしておくのよん…!」

「お、おう…。ね、強請ったことにしておくぜ…」

「そうそう、そうしておきなさい…。エルミスちゃんはなにか強請ったら貰えそうな可愛い顔しているから、筋が通るわ」



 ママが美人でよかったわねぇ、とにこにこしながらコラーリは内緒話の格好を解いて調理器具を洗い始める。どうしたら強請ったら貰える顔をしているのかは分からないが、似ているなら顔より背が良かったと思いつつ、エルミスは残りの一口を食べて皿を少し奥へとやりながらレモン炭酸水のストローを指で摘まんで口に含む。



「ふぅ…美味かった。今日、そのセリーニに用があるんだ、なんか簡単な手土産作れるか?」

「あら~!いいわよ~、そういう気遣いはパパそっくりねん。じゃあ珈琲入れて飲んでる間待っててくれる?」

「おう」



 食べ終わった皿をシンクに置きながらエルミスの注文に両手でOKサインをしたコラーリはコーヒーミルを棚から取って食後の珈琲の準備を始める。



「…期待の新人は分かるが、セリーニってそんなに人気なのか?」

「人気よぉ~。老若男女問わず、特にマダムとジェントルからの評判がいいわね。若い層は強くて可愛いって言っているわ」



 がりがり、コーヒーミルで豆を砕く音がラジオから流れる音楽と共に響く。ふと、現在豆を挽いているコラーリが言っていた言葉を思い出してエルミスが質問すれば、ハンドルを回す腕を止めて粉になった珈琲を取り出す相手がしみじみとした声を上げながら頷いた。



「"東から来た赤い剣豪"…なんて呼ばれているのよ~?途中から中央に引き抜かれてきたんだけどね、なんと引き抜いてきた人がギルドAAクラスの総隊長なのよ~!」



 きゃー!と、可愛らしいかどうかは分からない声を上げてくねくねと身体を揺らしているコラーリを止める様に、シュンシュンと湯気を立てるポットが沸騰を伝えた。

 東から中央にやってきたことは知っていたが、引き抜いてきた人物が最高クラスの総隊長だったというのは流石のエルミスでも驚く。総隊長お墨付きの移動であれば、人気になるのも頷けるが、やはりエルミスも接して分かる通りセリーニは丁寧さと接しやすさがあり、それがより人気に歯車を掛けているのだろう。


 ペーパーにセットされた挽きたての豆にお湯を入れて泡を立てて蒸らし、沈んでいく泡の壁を出来るだけ底に付かない様に湯を注いでいくコラーリは、さらにセリーニの話を続ける。



「本当は十五歳からのギルド入りだから上限Cクラスだけれど、特別にB昇格の話も出てたんだけどね?新人ちゃん、なんて言ったと思う?」

「…うーん、コネみてぇだから嫌っていいそうだが、」

「おっしーい!本当は"しっかり規則に従って、来年の評価で決めていただけると嬉しいです"…って、言ったのよ~!すごい出来る子よ~!」

「真面目だなぁ…」



 出来上がった珈琲と共に冷えた牛乳とシュガーポットを出したコラーリは、伝票にチェックを入れつつ手土産の品を作り始めた。香り高い珈琲に角砂糖二つを入れてティースプーンで掻き混ぜるエルミスは、ラジオから流れる音楽が朝のニュースへと切り替わった為、しっかりと話の内容を聞こうとほんの少しだけラジオのスピーカーを近付けた。



『――おはようございます、早朝五時半のニュースをお伝えします。西地方を襲った巨大魔獣の一種"フレースヴェルグ"による被害から一夜明け、被害報告を受けたアステラス国王は、地方復興の予算を大幅に増やす事を決定しました――』



 だろうな、と、牛乳を入れてくるりくるりと円を描いて沈んでいく白を眺めつつ珈琲を飲むエルミスは、至極当然のニュース内容にうんうんと頷く。口の中に広がる牛乳と珈琲の奥深い味わいにふぅ、と一息つきながらソーサーの上にカップを置いて内容の続きを聞く。



『王都アステラスの被害は騎士団とギルドの調査によって纏められたものを、分かり次第参謀によって発表されるため――』



 被害の大きい西地方に多くの騎士団員とギルド隊員がいるのだろう、被害の少ない王都はまだ総被害額が纏まっていない様だが、どうやらこのニュース内容を聞いていると、幾らか国からお金が出そうだとエルミスは考える。あのガラス窓の足しになるといいが、と考えながら、手土産が出来上がるまでゆったりとした時間を過ごした。






***************







 "予想以上に張り切っちゃったぁん!でも美味しさ保証つき!"……と、新聞と雑誌を読んで時間を潰す事約一時間、可愛らしい紙の袋に入った土産を渡すコラーリはやり切った顔をしていた。新人ちゃんに気に入ってもらいたいのだろうその努力をエルミスは感じ取りながら銀貨一枚"千レクト"を支払い、コラーリの労いを受けながら店を出た。


 人はまだ少ないがそれなりに職人たちが歩いているのを見ながら店に戻ると、一応貰った髪の袋を確認する。冷却せねばならない生菓子なら、冷却箱に入れなければいけない必要があるからだ。かさ、と軽い音を立てて袋の中を見ると、さらにラッピングが施されてはいるが見たところ焼き菓子のようだった。昨晩母親が手提げ鞄の中に入れてくれたセリーニのハンカチを袋の中へと丁寧に入れ、改めて袋を閉じて作業机に置くと、メモを取り出して"来客用"と書きテープで止める。こうしないと父親が食べてしまう可能性があるからだ。

 


「ちょっと仮眠取るか…」



 まだ開店には一時間ある為、大きなあくびを一つしながらエルミスは重い足で簡易寝室へと向かい、父親が起こしに来るまでの間、とっぷりと睡眠の海に身を投げ込んだ。






次回も夜九時前後更新予定なのですが、もしかしたら夜七時に余裕が出来たら載せたいです。

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