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Chapter21-8

挿絵(By みてみん)






(すげー喋り込んでんな……)



 ウッドデッキの端に座り、セリーニが淹れたアイスティーを飲みつつデザートをつついていたエルミスは、少し遠くのウッドチェアに座っている老人と語るリーコスとセリーニを見ながらそう思っていると、ウッドデッキの床を歩く音が後ろから聞こえる。遠くへと向けていた視線を足音のする方へと移動させると、部屋着に着替えたレヴァンがエルミスの隣へと座って一息ついた。



「風呂入ったのか」

「おう、――なぁエルミス。エルミスもナノス代表に、なにか願い事無いかって聞かれたか?」

「聞かれた」



 香るボディーソープはすっきりとしたハーブ。ナノスの住民御用達のボディーソープはみなハーブ調なのかとエルミスは考えつつ、レヴァンの質問に頷いて答えながらアイスティーを一口飲む。



「何にしたんだ?やっぱり金一封とかか?」

「金には困ってねぇよ、金払いのいい常連ばっかりだし」

「えぇー?じゃあなんだよ」



 むしろ金払いの悪い客は常連にはしない。そう心の中で続きを唱えながらオレンジタルトを手づかみでかぶりついたエルミスに、レヴァンは案外本気でエルミスが金一封を強請ると思っていた様だ。首を傾げながらグラスに添えられたストローでミルクティーを飲むレヴァンに、エルミスはオレンジタルトの甘さと酸味、アクセントとなっているナッツの味に舌鼓を打ちながらごくりと飲み込む。



「防魔法文字を直した事をナノス市民に伝えない事」

「え!?なんでだ、それは伝えないと駄目だろ。エルミスのデカい功績がそこに詰まってるんだぞ?」



 思ってもみなかった言葉に、レヴァンはグラスを置いてエルミスの方へと身体を向けながら真剣な表情で語る。


 ナノス代表から権限を渡された背中を見送り、代表の体調を記録しながら窓の外へと視線を向け修復されていく防魔法文字を固唾を飲んで見守っていた。ナノスへと生を置いて十二年、あの防魔法文字は誰が見ても"元の防魔法文字"そのものだった。


 完璧とも言える修復は、ナノス市民に伝えて感謝されるべきだ。そうレヴァンは考えるも、どうやらエルミスの考えは違うらしい。



「功績がデカくても、な。第一オレが直したって知ってる関係者以外の全員は、"ナノス代表"がやったと思ってる。代表じゃなければ他の管理官が行ったと思ってる。それでいいんだ」

「それでいいって……」

「シナリオはこう、"メリシア管理官がネイドさんの手によって陥れられる。そこにレヴァンの薬によって症状が治ったナノス代表か、待機していた他の管理官がギルド隊員達と共に防魔法制御室へと入り確保、防魔法管理官達の手でナノスの防魔法文字が修復される"――だ。」



 その説明に一切エルミスの名が無い。不満の表情のまま聞いているレヴァンにエルミスは軽く肩を竦めて小さく笑うと、ほんの少し乾いた喉を潤す様にアイスティーを一口飲む。カラン。氷の音が遠くから聞こえる笑い声と混ざり融けた。



「これでいいんだよ、第一ナノス市民でもないオレみたいなガキが修複したって知ったら、それこそナノス市民は不安がるぜ?明日ナノス代表が朝にメンテするらしい、そこでオレが修復したって事を知ってる関係者は、口外禁止魔法がナノスの森全土に広がるメンテナンス魔力と共に掛けられる」

「口が滑るのも出来ねぇのかぁ……文字で伝えるのは?」

「出来るが、そもそも信じるやつはいねぇし。お前にきつい罰則がが来るぜ」 



 "誰かに伝わったって事が分かるのが口外禁止魔法だ"と付け加えながら残りのオレンジタルトを口に放り込んだエルミスに、レヴァンは"ちぇっ"と軽く悔しそうな表情を浮かべてエルミスの皿に乗っているクッキーを摘まんで齧る。その横顔をエルミスは見ながら、少し丸まった背中をぽんぽんと叩き、機嫌を直す様に一回撫でれば、不満そうな表情のままのレヴァンがエルミスの方を見る。



「オレは、ナノスで出来た初めての"友達"である"お前"が覚えてくれてるだけでも充分嬉しいぜ、頑張った甲斐がある」



 そう、たとえ全ての人間が知らずとも、誰かが覚えていれば報われる。決して記憶を忘れさせる魔法を掛ける事ではなく、あくまで知っている人間はひっそりと覚えているだけで良いとエルミスは思ったのだ。

 ナノス市民の為に、目の前で不満そうな表情から感極まっている相手の為に。覚悟を背負ってやり切った証は、目の前にいる"友人"が覚えているだけでも充分。



「~~~~…………男前かよ!!」



 ニッ、と笑いながらそう言い切ったエルミスに、レヴァンは思わず叫びながら男前の身体に抱き着く。



「おうし!大親友であるおれは覚えてる。一生覚えてる!ナノスを救ってくれてありがとう!」

「おう、どういたしまして。ところで――レヴァンは何をお願いしたんだ?」



 ぽん、と背中を軽く叩いて礼を受け取ったエルミスは"フェアじゃねぇな"と考えてレヴァンが何を願ったか聞く。抱き着いていたレヴァンはその質問にガバリと身体を離してミルクティーを飲むと、人差し指を一つ立てた。



昨日雪降ったのに、もう晴れて溶けました。こんばんは!!


最近の便利グッズホンマに便利すぎてびびります。個人的に百円均一のキッチン用品とバス用品は愛用していますが、まだ使ってないやつあるんですよ。生クリーム伸ばすヘラみたいなやつ…


そろそろケーキ作る時か…。



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