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Chapter21 そして"彼女"は背中を押した

挿絵(By みてみん)





 セリーニが"代表室"と書かれた部屋へと入るのは生まれて初めてだった。カーラの後ろに付いていき一礼をして部屋に入ると、祖父の他に弟と父親がその場に居る事に驚きの表情を薄らと浮かべる。



「ご苦労。指輪をこちらへ」

「は、はい!」



 ナノス代表と直接会話をするのも初めてだったセリーニは、少し上擦る声を抑えつつポケットから指輪を取り出して机の上へと置く。ふと視界に入るのは一冊の開かれたノート、レヴァンの字で綴られたそれは数値と見た目の変化が書かれたものだが、セリーニはそれが体温と血圧、そして目視による確認を記録したものだと瞬時に理解し、すぐ傍に居るレヴァンへと視線を移すと目が合った。互いに合う視線に、それぞれ労いの思いが交差する。



「術式の無効手続きを、」

「畏まりました」



 側に控えていた職員へと指輪を渡したナノス代表は、深く腰を落ち着けていた背凭れから上体を起こして姿勢を正し、カーラの元に戻っていったセリーニへと視線を向け、机の上に置いてあるメモ帳を軽く捲りながらペンを持つ。



「セリーニ・アンティ君だね?」

「はい……!」



 紙に綴られる文字。セリーニは名を確認するナノス代表に返事をした後、何か言われるのだろか、と一抹の不安を抱える。


 緊急事態と言えど、相当無茶無謀、しかも関係者以外立ち入り禁止の防魔法制御室へと侵入したのだ。結果は良かったかもしれないが、罰則を設けられる可能性もある。緊張で乾く喉をそのままに、次に発せられる言葉を待つ。



「君の行った事は―――勇気ある行動だ。カーラくんから聞いたけれど、一番最初にネイド君が犯人だと目星を付け、防魔法文字の異常から娘を案じて防魔法制御室へと飛び込んだ」


「……しかし、防魔法制御室へと、クラスの低い私が勝手に立ち入ったのは申し訳ありません」

「クラスの上下など関係ない。勇気ある行動は、身分や位を越えて起こすものだよ」



 とん、とん。メモ帳をペン先で軽くたたき、セリーニの言葉に首を振って笑みを携える。



「結果が良ければ、たとえ多くの規則が有ろうとも……全を為して行動した事を咎めることはしない。むしろ、功績を称えなければならない」



 ナノス代表の言葉に、隣にいたカーラも頷いているのをセリーニは視界に捉えながら、受けた言葉をじっくり脳内で処理を始める。一先ず分かる事は罰則はない、次は功績を称えられる。この二つだ。



「ナノスを救ったと言っても過言ではないからね」

「しかし、私は……、私は何もできませんでした……」



 過大評価という言葉がセリーニの脳内に浮かぶ。己がやった事と言えば、ネイドの真実を暴き、防魔法文字製作の為の魔力を提供したぐらいだ。あの場所にエルミスが来なければ、自分自身の命も落とす可能性だってあった。



「……確かに、君は一人だったら結果的にどうなっていたか分からなかった。エルミス君が来たからこそ、事が収まったからね」

「っ……」


「けれどね、"君も居なければどうにもならなかった"。それは紛れもない事実だ。君と、エルミス君の力、二つ合わさったからこそ出来た。どちらかが欠けていれば、ナノスは駄目だっただろう。だから君もとても大切で、それ相応の功績を上げている事をしっかり自覚してほしい」



 ぽん、とセリーニの肩を叩いたカーラは、"凄い事をしたんだから、誇らし気にすればいい"と声を掛けると、セリーニはその言葉に頷いてほんの少し暗かった表情を正す。その表情を見たナノス代表は、今一度セリーニへと言葉を掛ける。



「功績を称えて、何か褒美をと思っている。何か欲しい物、あるかな?」

「欲しい物……」



 突然の事だ、セリーニの頭の中にある欲しい物と言えば、中央の雑貨屋で売っていたうさぎのぬいぐるみぐらいだが、きっとそれを言えば"もっと大きい事!"と、この場所にいる大人たちは一斉に言うだろう。少しの沈黙の後、




「あの……オーダーメイドの隊服を下さい……」



「……あっはっはっは!!」



 カーラの大笑いが代表室に広がる。ずっと胸元が窮屈だと思っていた為、今回を機に新調するのもいいだろうと思っていたが、サイズを大きくするだけでは袖や裾が余る。胸囲だけ何とかしたいと思っていたセリーニの思いに気付いたのか、うんうんと納得の頷きをしながら、わしゃわしゃと頭を撫でる。



「……それでいいのかね?」

「はい」

「ナノス代表、それはこちらで手配します」

「……?うん。わかった。ではそれを報酬とする…ね?」

「はい!有難うございます!」



 男性陣が首を傾げる中、カーラはギルド隊服専門店の手配を通信機で行い始めると、ナノス代表は一先ずそれで良いのかという確認を取れば、セリーニは大きく頷いて元気な声を上げたのだった。



chapter21たいよろです。


買い物行った時、総菜コーナーで売っているほうれん草の白和えが好きで買ってるんですけど、いつも「ほうれん草の白和え」って値札に書いてあるのに、なぜか今日は「ほうれん草の胡麻和え」って書いてあったんですよね。二つ隣に置いてあるほうれん草の胡麻和えも「ほうれん草の胡麻和え」って書いてある値札が付いてて、二つとも内容量とか書いてあることが一緒でした。


もしかして私が今まで食べてたほうれん草の白和えは、、、、、、、いや、ズボラやろがい。買ったけども。


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