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Chapter20-6

挿絵(By みてみん)






 微かに聞こえる住民の悲鳴、獣の咆哮、隊員達の豪声をセリーニは聞きながら、隣で集中しているエルミスの表情を見た。薄らと額に浮かぶ汗が滴り、珠となって顎へと伝わり床に落ちる。スキャニング魔法を使用している為灰白色の瞳は青く輝き、絶えず魔力が減っているのか魔力粒子が身体から溢れ出ているのが見えた。



「エルミス、私はどうすればよいですか」

「今挿してるストッカーの中身が全部無くなったら、セリーニの魔力を使う。直す順番は三本目、二本目、一本目でな、っと。これはこっちか……、」

「マナを魔力に変える術式は魔法文字の一本目ですが、そちらから直す事は出来ないんですか?」

「一本目から直すと"詠唱開始"と判断されて、六本全て作り直す事になるらしい、……流石にそこまでする暇も根気もないからな。応急処置として壊されかかってる三本目の修復から始めて、二本目の防魔法文字安定術式、一本目の魔力変換術式の順番で直して蓋していく段取りだ」



 肝心の一本目が魔力変換術式なのは、一番地上に近い六本目よりも、高空にある一本目の方が凶悪な魔物に襲われる心配が少なく安全だからだ。それはナノスの総合義務で習う為、セリーニは一本目から直す段取りでは駄目かと聞くが、エルミスから返ってくる言葉によってより手間が掛かる事を知る。



 絶えず手を動かすエルミスと連動するかのように、スロットに差し込まれている満タンのストッカーがぐんぐんと中身を減らし、パンッ!と音を立てて粒子となり消えていく。スロットの本数は全部で二十本、差し込まれているストッカーは残り四本、使い切るのは目前だ。



「よし、三本目は直したぞ……」



 ボロボロになり崩れかかっていた三本目の防魔法文字が、まるで何事も無かったかのように文字を保ち、四本目と同じように円を描いて回り始める。残り二本となったストッカーの内一本が弾け、とうとう残り一本となってしまった。



「セリーニ、特殊パネルに手を翳してくれ」

「はいっ……」

「 ――魔力認証 システム認証許可 供給開始 」

「――!!」



 エルミスの呪文が魔法文字となってセリーニの周りを回り始め、上から下へと魔力の輪が降り注ぐ。ぐん、と一気にセリーニの身体に重力が掛かったかのように重みがやって来ると同時に、身体の魔力が一気に吸い取られていくのが分かった。




 本来ナノスはマナの密度が高く、下手をすれば人にも害が及ぶほどだと言われている土地。だが裏を返せば魔力には困らず、尚且つマナを栄養として成長する薬草や木々に恵まれている土地だった。


 木々はマナを吸い上げ成長していく為、その働きにより人に影響を及ぼさないと分かった大昔のナノス市民は木々を大切する。自然を生かす様に生活圏を確保し、やがて防魔法が発達しだす。時代を重ね、防魔法の技術がある程度成長した後、密度のあるマナを魔力に変換させる術式を組み込んだ時計塔を作ったと歴史書に載っていた事を思い出したセリーニは、大量の魔力を使う防魔法と、マナが溢れるナノスの土地の理が適っている事を改めて理解する。



「セリーニ大丈夫か、」

「は、はい。少し身体は重く感じますが……」

「魔力を大規模で吸い取ってるから当然だな。――っと、一応これ飲んどいてくれ」



 "魔力が無尽蔵とはいえ、感染するかもしれねぇし"……と、エルミスは片手をストッカーポーチに入れて、鍵やメモ帳の中から一本の試験管を取り出すとセリーニへと差し出した。



「これは…?」

「レヴァンが作った特効薬。今魔力を消費し続けるセリーニに万が一がある、魔力散布している薬に感染すると魔力が乱れるから、今のうちに飲んでおいてくれ」

「レヴァンが……これを、」



 エルミスから試験管を受け取ったセリーニは、淡く輝く中身を見つめる。なぜレヴァンが特効薬を作ったのか、その理由など今聞く場合ではない。"レヴァンが薬を作った"という事実がこの試験管にある。



「ガチ自信作だとよ」

「……飲みます」




 "二人ともよく聞くんだ。薬は作った本人が一番信用しないとならない、自分で作った物を、胸を張って勧めれてこそ一人前だよ"――かつてネリアが居た頃、初めて学校で薬を作る授業をした後に、その成果を老婆に見てもらった事があった。


 "自信が無い"という表情を見抜いた老婆が語り掛けた言葉は、決して軽いものではない。人の命に左右する恐れがある薬。それを勧める本人が不安がっては意味が無いという最もな言葉に、より一層気が引き締まったのを思い出す。



 同じような言葉をレヴァンも聞いたのだろう。自信作だと聞いたセリーニは、躊躇することなくゴム栓を開けて中身を飲み込むと、ゴム栓を元に戻してポケットに仕舞う。味は仄かに甘さと苦さが広がるが、決して悪くはなかった。




1/23 20:07 前書きに載っていたのをあとがきに移し、あらすじ絵の文章の一部を修正しました。



なろう運営さん、挿絵をつけるっていうページの一日1アクセス分は必ず私です。こんばんは。



最初に予告なんですが、明日もしかしたら定期時間である19時(30分前後)を、大幅に遅れてしまうかも知れません。少なくとも21時までには必ず載ります、ちょっとまってね。


毎回みてみん、挿絵をつける、そしてこのページを開くんですけど、みてみんの画像管理URLをぽーんと載せただけで画像表示できるんですかね?出来ないから挿絵をつけるってページがあるんでしょうけど、そろそろここらの手間をなんとかしたい。そう考えて半年が経ちました。


今日はやきとりとチューハイで優勝していくことにするわね(ねっとり)


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