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Chapter20-5

挿絵(By みてみん)




 目的のポイント付近に到着したクネーラ達は、遠くの方で番の追い込みをしている隊員達を視界に捉えた。後ろは既に身体を再生させて動き始めようとしているもう一方の番、このままいけば上手く目的地で番同士を鉢合わせる事が出来るだろうと考えつつ、一メートルほどの小さな急斜面を飛び降りて走る。



「第一王子!!」

「わかった!!」



 クネーラがリーコスを呼ぶ、その言葉と同時にリーコスは神代魔法を使う為に呪文を唱え始める。走りながらも神代魔法文字は一切の乱れを見せていない。その器用さと精神力、体力の高さに"流石"だとクネーラは感心しながら、荒声を上げるツインズがどこまで来ているかを気配で感じ取る。



「(イケる、このままっ――……!!)」

『 闇の力を纏う者よ 神の光を持って闇の楔を打ち砕く 』



 リーコスの周りを囲う黄金の神代魔法文字が三本目全て揃った。後は束ねる為の呪文を唱えるだけとなり、クネーラはリーコスの後ろから前へと移動するようにスピードを上げ、追い込まれてきた番の股座に身体を滑らせるよう足を延ばしてスライディングし、逃げる番の背後を取る。



『 全てを 神の意志を代行する者也!! 』



 リーコスの呪文と同時に身体を回る三本の神代魔法文字が一つの束となって足元に魔法陣が現れると、ツインズの頭上にリーコスの足元の物と同じ魔法陣が現れた。闇属性の魔力によって犯されている身体から、黒色の魔力が魔法陣によって吸い上げられていく。その光景はリーコスにしか見えないものではあるが、ツインズのもがき苦しむ姿を警戒しながらも眺める討伐隊。


 クネーラは雌のツインズが逃げない様、大剣で両足を一気に切断して浄化魔法が終わるのを待っていると、ツインズの頭上に現れていた黄金の魔法陣が粒子となって消えていく。

 浄化魔法が完了したと同時に、番を傷つけられさらに興奮状態となった雄のツインズが、番の背後に居るクネーラを捉えて突進しようと、まず目の前にいるリーコスを蹴散らす為に鋭い爪を剛腕の力を使って振り下ろした。



「ぐっ――!!」



 リーコスは抜剣して重く鋭い爪を受ける。不安定な地、剣に乗るがむしゃらな力にセリーニの言った事が本当であると分かると、"親"の言った通りに剣を留めることなく爪を払う様受け流しながら身体を横へとずらして爪の威力を横へ逃がす。


 雄のツインズはリーコスが"邪魔"なだけで執着は無いのか、そのまま次の一撃を繰り出すことなくクネーラを見据えて突撃する。雌のツインズは逃げようとするも、両足を切断されているため地を這いずるだけだった。




 咆哮が森に響き渡る。小動物は草を鳴らして逃げ回り、小鳥は木々を揺らして飛び立つ。




 真っ直ぐ、六つの目で見据えて爪を振り下ろそうとするその目を、クネーラは敢えて同じように見据えた後、身体を回転させるように大剣を振り回した。


 鋭い爪を避ける様に身体をずらしながら、遠心力を使い大剣の重みと切れ味を最大限に活かしたその一撃は、ツインズの頭部を二つ一気に両断する。血飛沫がクネーラの身体を濡らし、森を一面紅に染めるその光景に臆することなく討伐隊達はその場で見ながら、ツインズの身体が再生するか、しないかを見守る。



「……」



 獣と血の臭いを、ナノスの森が生んだ風が掬い飛ばす。動かないツインズをじっと眺める事およそ五分と言ったところだろう、雄の番の腕がぴくりと動いた。



「うそ――、同時じゃなかったっていうの……!?」



 飛ばしたはずの頭が、肉を付け骨を形成する様再生し始めていく。一気に警戒が高まる討伐隊とクネーラは、ツインズがお互い再生し始めていくその光景を眺めつつ"ツインズの出方"を考える。



「(危ないのは雄が先に再生を終えた場合……、雌が逃げるまで全力で暴れるだろうし、雌もこちらを攻撃する可能性だってある。その中で二頭同時に狩るのは――)」



 不可能か。そう考えながら再生し始めた雌の足を再び切ったところで、討伐隊の後ろから戸惑いの声が聞こえた。



「危ないです!!」

「逃げてください。いま凶悪な魔獣を――」


「おぉ、これは……たしか番で行動するツインズだね。若い時に北で姿を見た以来だ。ここに居るのは随分珍しい」



 隊員たちの制止を特に気にする事無く再生中のツインズの元へ、木の葉を踏みしめながらやって来た老人にクネーラも視線を向けると、思わずその人物に驚きの声を出してしまった。



「あ、アンティ支部隊長!!」

「お……、……その髪の毛のはね具合、適度な体つき、ちょっと怖いお目目…クネーラ隊員かな?」

「はい!!お陰様で今は隊長へと…じゃなくて……あの、今討伐中でして、」



 老体にしてはすらりとした背筋の老人は、クネーラをじっくりと見た後脳内の記憶から少し若い頃のクネーラを思い出し、首を傾げながら確認をする。一見愛らしいその仕草にクネーラは"変わってない"と考えながら一回頷いた後、すぐに首を振って今の状況を伝えた。



 その間にも再生し続けていくツインズ。"アンティ支部隊長"と呼ばれた私服の老人は状況を理解した後、制止させようと近付いていた隊員に持っていた紙袋を渡しながら、隊員の腰に据えてある剣を抜く。すらりと抜き去られてしまった剣に隊員は慌てながらも、荷物を持っている手がどうすればよいのかと彷徨っていた。



「ツインズは互いの命を同時に止めるまでは再生する、――うむ、伝記通りでなにより」



 "アンティ支部隊長"はそう言い終わると同時に、ツインズの心臓部には既に穴が開いていた。



「(み、見えなかった……!!)」



 動体視力は良い方だと自他ともに認めていたリーコスでさえ、老人の剣の軌道が見えなかった。微かに腕が元の位置より揺れており、微量ながら剣に血がついている事が分かる。



「うーむ、やはり半年もサボると衰えるもんだ。昔だったら剣に血が付く事無く出来たんだけどねぇ。若いの、いい剣を持ってる。手入れをこれからも欠かす様に」

「は、はい……!!」



 血を掃って剣を鞘に戻してやり、紙袋を受け取った老人がそう言うと、圧倒されていた隊員が小さく頷きながら返事をする。


 刺し口から流れる血、もう少しで頭が全て戻るはずだったツインズの再生が止まり、一切の力が抜けた様に番の身体が地に横たわった。




 目の部分までしっかり残っているツインズを、生息地である北・マヴロス地方からやってくる解剖班に確認を取ってもらう為、討伐隊達でナノスのキャンプ地まで運び始める。




 その後ろに付いていく老人に、隣で歩いていたクネーラは総隊長に"完了"と文字を送った後、疑問に思った事を素直に質問として言葉にする。



「アンティ支部隊長、」

「もう引退したからアンティおじいさんでもいいよクネーラ隊員、…じゃなくて隊長」

「それはお恐れ多すぎますアンティ…元支部隊長。ところでなぜあの場に?」

「あぁ、孫に会いに行くためにね。途中歩いていたら血の匂いがして、妻を先に行かせて私だけここに来たんだよ」



 さく、さく。枯れ葉と雑草が敷かれた森の土を踏みしめながらそう語る老人は、ツインズを運んでいる隊員達の中から、一際目立つ容姿をしている隊員を見つけて首を傾げる。



「お……、あの方は第一王子かな?白い団服じゃなくて、ギルドの隊服を着ているようだけども……」

「第一王子はギルド入りをしたんですよ。現在の所属はA隊、アンティ元支部隊長のお孫さんが親子制度の親として指導しています」

「おぉ、そうだったのか。孫――セリーニも、入って一年以上経ったのか。……第一王子はてっきり騎士団入りをするかと思っていたが…いやはや、碌にラジオを聞かない生活を送ると時代に乗り遅れてしまうね」



 孫の話も間接的に聞いた老人は一年と少し前、薬学専門学校を辞めてギルドに入った事を、家庭用通信機の連絡で聞いた事を思い出す。引退した元ギルド隊である己には嬉しい話だったが、卒業と同時にではなく、わざわざ満十五歳である歳に入るとは思わなかったのだ。



 伝えた孫の声は真っ直ぐだった。理由を聞くのは無粋だろうと思い聞かず、ただただ"しんどくなったらサボる事"と伝えて通信を切った。新人として働く孫は、どうやら立派に成長していっているらしい。



 その事実を聞いて老人はゆるりと笑みを携えながら、クネーラの近況報告を受けつつツインズを運ぶ隊員達を眺めて歩くのだった。





明日は水曜日なのでおやすみです!!chapterはまだ続きますので明後日19時の更新となります~。


さっきテレビでやってたんですけど、豚しゃぶの鍋にニンニクスライスを入れたら灰汁が出ないってやってました。理由は分からないと店主さんもいってたんですけど、一回試してみたいです。豚しゃぶ食べたいなぁ。ああいうのっていっぱい食べたら満足して暫くいらないってなるんですけど、たまーにたべたくなるんですよね。あーおなかすいた…。

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