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Chapter18-6

挿絵(By みてみん)




 散らばっているメモ用紙を回収し、"拾った"資料を持ってテントを出る。まだ燃えている焚火に資料とメモ用紙をくべて燃やしたセリーニは、カーラが待機している西南関門前へと向かうべく走り出す。



 すれ違うギルド隊員や騎士団員に軽く会釈をして走りつつ、人の手入れが行き届いているナノスの森内周をひたすら走り続けていると、関門の役割を果たしている柱と大木が見えてきた。ベテラン隊員たちに指示を送っているカーラは、走ってきたセリーニに気付いて軽く人払いをすると、防魔法文字を安定させるために建てられた柱のドアを開けてセリー二を中に入れる。



 セリーニは初めて入る柱の内部をほんの少しだけ見渡した後、鍵を閉めて防魔法を発動させるカーラに一から説明を始めた。







「――……筋が通る。次は証拠だな…工房がどこにあるかは把握しているか?」

「いえ、さすがに私生活を見せるような方ではありませんでした」

「そうか……流石にナノス市が管理している工房を使っている事はないだろう。学校の個人工房か、家の工房を探すよう手配をする」



 そう言ってカーラは通信機を操作してナノス支部のギルド隊長を通じて手配をする。何度か交わされる魔法文字の光をセリーニも見ていると、了解の文字と共に通信が切られた。



「セリーニ隊員はどうする?」

「え、」

「工房へ向かうチームに入るか、それとも見回りへと回るか」



 カーラの言葉にセリーニは言葉を詰まらせる。本来ギルド隊員としてやることは"ツインズがナノス市に近付かないよう見回りをする事"だが、セリーニ自身は友人を巻き込んだ事件に決着を付けたかった。




「――工房へ、」



 "行きます"――……そう言おうとした時、空を裂くような破裂音がナノスの街に響き渡る。


 破裂音の衝撃によって地を揺らす地響きが発生し、カーラとセリーニはその場の壁に手を付いて地響きに耐えた後、鍵を開けて柱の扉を開く。



「なっ……!!」

「防魔法文字が……崩れて……」



 柱から出てきた二人を出迎えた光景は、ナノスを包む強固且つ絶対の防魔法である六本の魔法文字の一番上を走っていた一本目の魔法文字が、ぼろぼろと崩れていく光景だった。


 魔法文字を形成していた魔力が細かな粒子となって降り注ぎ、ナノスの街を包む。西南関門の場所まで防魔法文字として機能していた魔力の光が降り注ぐ、まさに異例な光景。


 驚くカーラは言葉を失い、セリーニは目の前に広がる光景を整理するための言葉を呟くが、余りにも非常な事態にカーラと同じように言葉を失っていく。




 長いようで短い数秒、立ち尽くしていたカーラの通信機がチカリと輝くのを視界に捉えたセリーニが、カーラの身体を軽く揺すって通信機を指さす。あまりの驚きに言葉を発する事が出来なかった故の行動に、カーラも"ありがとう"という視線を送って通信機を操作する。


〈おいカーラ隊長、"コレ"はツインズが接近したからか!?〉

「――…いや、……ツインズの接近であればクネーラ隊長から予告される。ツインズはまだ接近していない」



 総隊長の焦りを含んだ言葉と共に市民たちの悲鳴が通信機から聞こえる。無理もない、ナノス出身であるギルド隊員二人が声を失うぐらいの緊急事態、絶対の防魔法の一本が砕け散るという危険性に、防魔法を信頼している市民の悲鳴が上がるのは当然だろう。



〈チッ…まずいな。おい、市民の避難を迅速に!――……カーラ隊長、防魔法破壊に伴い、凶暴な魔獣が入り込む危険性もある、早急に見回りから警護に変更してくれ〉

「了解」



 相手の方から通信を切った為、総隊長の名前を形成していた魔力が粒子となって散る。緊急通信で指示を送るカーラの隣で、関門からでも見える時計塔を見るセリーニは、今日の防魔法メンテナンスがメリシア管理官の次、ナノス代表である事を考慮に入れて"なぜこんなことが起こったのか"を冷静に考え始めた。



(ナノス代表がこのようなヘマをすることは決してない。なら……この非常事態は誰が…?)



 ベテランのナノス代表では決して引き起こす事のない光景。なら誰が"制御管理室"で崩壊をするような事をしたのか。



 ―――過るメリシアとネイドの夫婦姿。仲睦まじいと思えるほどの夫婦仲。



 もしネイドが人を殺すために制御装置操作し、防魔法を破壊することが目的であれば……メリシアを利用したのかもしれない。そう考えたセリーニは、通信機から聞こえる声に返答をしているカーラに、焦りと決意を固めた表情を見せる。



「カーラ隊長、私、行きます」

「――……分かった。通信機は今から私と総隊長に繋げておけ。こちらから魔法文字で伝えておく」

「はいっ……!!」



 セリーニの表情にカーラも本来の任務を与えることなく好きにするように伝えると、混乱と悲鳴が起こるナノス市内へ入るセリーニの背中を見送る。

 決して無茶はしない隊員である事は分かっているが、カーラはどうしても気になる事がある。



「……必ず裁く為に、殺してはだめだぞ。セリーニ隊員」



 もしこの騒動がネイドが巻き起こしたものであり、友人を殺した犯人だと分かった場合、たとえ穏便な者でも怒りを露わにするものだ。



 決して本人には聞こえない忠告を、カーラは消える背中を見つめながら願った。


 





予告通りじゃない更新でお花咲いちゃう。

そして次こそ予告通りに明日お休みで、明後日にchapter更新に伴い21時更新です~。


今日なんでこんなに早いかというと、いつも更新してる19時に妹がご飯食べに来るので…おねえちゃんは時間を早めるのだった…えらいな~~~えらいめちゃくちゃえらいなぁ~~~!!うそですおねえちゃんがいもうっと来るの楽しみなんです。


では明後日21時にて~!

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