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Chapter17-6

挿絵(By みてみん)





 ありえない特徴を聞いて、実際にそれを見ても"ありえない"という感想しか三人には浮かばない。


 涎をたらす口には、セリーニが千切った血まみれのギルド隊員の袖が銜えられており、執着して追いかけている事が観察できた。




 本来ツインズは視覚を持たない魔獣の為、嗅覚と聴覚が発達している。セリーニは嗅覚に優れた魔獣や獣が、負傷者の血の臭いに寄ってこない様包帯の上から薬草の汁を掛けて血の臭いを誤魔化したが、それでも限界はある。



 今は番で行動していないのか一体で行動するツインズは、嗅覚を頼りに逃した獲物を探している事をセリーニは感じ取ると、足元に転がっている石を拾って帰り道とは逆方向の茂みに投げた。



 がさっ、と茂みが揺れる音に反応したツインズの目線は、しっかりと音の発生した方に向かって移動しており、六つの目が"飾りではない"事を三人は理解する。音のした方へ一気に走り出し、姿が消えたところで三人も一気に走り出した。




 後ろから追いかけてくる気配はない。だがいつ気付かれるかは分からない。息が上がる苦しさを抑えたまま、セリーニはリーコスが負ぶっているギルド隊員の背中を押して少しでもアシストしながらキャンプ地まで走り続ける。




 だがツインズは"番"だからこそツインズと呼ばれる。死角になっていた場所から突如現れたもう一個体に、リーコスの足が地を踏ん張りブレーキを掛けた。




「さっきのやつか!?」

「いや、番の方です…!体格が一回り小さい…!!」



 突如番のツインズが大きな爪をむき出しにして三人に襲い掛かる。リーコスの後ろに居たセリーニは一気に前へ出ると、剣を抜いて鋭い爪を受け止めた。



 がむしゃらな力で振り下ろされた爪は重く、受け止めた力が腕に伝わって軽く震える。一点に集中した力とは違い、重心が広く、全体的に掛けられた力は受け止めるのも難しい。


 爪を外へと薙ぎ払い、硬い毛皮に刃を食い込ませ、太い骨をも剣で両断し肉を絶つ。接合部から訳二秒、一気に血が地面を濡らすと同時に、ツインズの叫びが森を震わす。痛みに悶えて暴れる前に、セリーニは落ちていた石を拾ってツインズの目に投げる。ジワリと目から涙があふれ、手で目を覆い痛み藻掻く間に三人はツインズの脇を抜けて走りだした。





 あと少しで防魔法の効果が行き届いている内周に入る。ただひたすらに走り、キャンプ地点にたどり着いた頃には、セリーニとリーコスは地に崩れる様に膝をつく。

 カーラは急いで三人の元に駆け寄り、リーコスから負傷者を抱える様に引っ張ると、気を失いかけているギルド隊員の顔色を確認して、近くに居た制服を着ている生徒に声を掛ける。



「生徒達、負傷者の手当てを!リーコス隊員、セリーニ隊員、よくやった」

「っ…ありがとうございます」


「カーラ隊長、個体を目で確認しました。接触は一回。腕と目を負傷させて逃げましたが、何れ"復活"して内周にやってくるかもしれません……」

「そうか…まだ防魔法文字メンテの効果は生きている。ツインズといえど、防魔法を察知して近付いてこないかと思うが……人を襲っているから、内周に入ってくるのも時間の問題か」



 医療班の生徒へと受け渡したカーラは、息を切らしながらも、怪我人を無事運んできたセリーニとリーコスに労いの言葉を掛ける。セリーニはカーラへツインズとの接触があった事を報告すると、考える仕草をしたカーラは早々に考えを纏めて専用通信機を操作していく。



「カーラ隊長、」

「どうしたリーコス隊員」

「……ツインズに闇魔法の魔力が見えました。対処する必要があります」


「…!!そうか、ではそれも含めて各隊長に報告を上げる。リーコス隊員……いや、第一王子。ご同行をお願いします」



 リーコスの言葉にカーラの顔色が変わる。ただでさえツインズという魔物が、人を襲わない臆病な性格というのに初めて人を襲う報告を聞き、退化した目が六つもあるという意味不明な報告が上がっているにも関わらず、追い打ちをかける様に闇属性の魔力を纏っているというのだ。


 光属性で対処せねば闇魔法は打ち消す事が出来ず、闇魔法は魔族や人間にも干渉していく危険なものであるとリーコスから聞いているカーラは、光魔法を使用する光の使者である第一王子としてリーコスに頼む。



「分かった。まずは急いで保護対象処分許可を取ってくれ。……人間を襲った動物は、絶滅危惧種とはいえ処分せねばならない」

「了解しました」



 リーコスの言葉にカーラは端末を操作しつつ各隊長と連絡を取っていく。予めカーラの指示を聞いていたであろう先輩隊員達は、新人隊員達を引き連れて内周の一番内側へとテントを移す指示を送っていた。



「第一王子、セリーニ隊員。一先ず一度ナノス支部に。ちゃんとした話を各隊長たちに伝えて、作戦を練る」

「分かりました」



 端末の操作を止めたカーラは二人にそう言うと、キャンプ地移動の指示を送っている隊員に"あとは任せた"と肩を軽く叩いてナノスの森を後にした。




着物きゃるちゃんぶっこわれで草。なおまだ出ていません、、、

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