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Chapter17-5

挿絵(By みてみん)




 エルミスが図書館で調べ物をしている頃、ナノスの森では訓練に励む新人ギルド隊員と騎士団員、そして怪我を治療する生徒達が活動していた。



「お疲れ様ですリーコス隊員。残り半分、頑張りましょう」

「有難うセリーニ隊員。…しかし、体力には相当自信があったが…森の中で動くのは思った以上に体力がいるんだな」

「森の移動は高段差もあって非常に厳しいですからね。ただ慣れている私に付いてこれているので、その自信はそのまま持っていてください」



 防魔法の届かないナノスの森外周、そこで指定された薬草を採取し、森の生態系を調査するセリーニとリーコスは一度足を止めて休憩する。水筒に入れていた水を飲んで一息つくリーコスに、セリーニも水を飲みながら周りに狂暴な魔物や動物が居ないか見渡した。



「残りは南側だが…今のところ生態系は崩れていないのか?」

「はい。去年の調査から目印となる薬草の生成場所は特に変わっていませんし、動物の縄張りに関する目印も、場所の変動は少ないです。糞や足跡も、他を縄張りとしている動物のものは無いので、大丈夫でしょう」



 道中、様々な動物の縄張り跡や、糞に混ざる木の実の説明、薬草が生成する場所の近くに植わっている特定の雑草の話をしつつ、辛うじて人の通り道として出来上がった道なき道を歩くセリーニの知識に圧倒されながら、リーコスはナノス支部が記録している資料にひとつひとつ書き加えていく。


 山歩きに慣れているセリーニとは違い、少し息を上げながらセリーニの後ろを付いていくリーコスを時折心配しながらも足を止めないセリーニは、調査するエリアの半分を見終えて休憩にしたのだ。



 リーコスは資料の記入間違いがないかセリーニへ紙の束を渡して確認を取ってもらい、周りを見渡して危険がないか確認していく。ぱらぱらと紙を捲る音と、風で木々が揺れる音だけが当たりを包んでいた。




 "ガサッ"――風ではない、小さな枯れ葉の音が遠くの方で聞こえ、セリー二とリーコスが一斉に警戒態勢を取る。パキン、がさがさ。段々と近付いてくる音は、明らかにこちらへと向かってくる。

 二人は音のする方に視線を向け、段々とはっきりしてくるシルエットに、思わず剣を抜こうとしていた手を離して音を発生させている方へと駆け寄りだした。



「大丈夫ですか…!?」

「ひ、ひとだ…やっと人にであった……」

「傷が酷い。セリーニ隊員、手当てをしよう」



 二人は前方に倒れる血だらけのギルド隊員を抱きとめると、動物の縄張り場所ではない場所まで軽く運んで傷を見る。


 右腕の損傷が激しく、黒いギルド隊服の色を濃く染める血が滴っており、抉れた傷跡が服の上から見えた。セリーニは血の滴るギルド隊服の袖を全て千切り、ポーチから止血材を取り出しありったけ塗ると綺麗な布で腕を覆う。出来るだけ血と止血剤の匂いを撒く前に、綺麗な布の上から取ってきた薬草をすり潰して汁を垂らした。



「増血剤を…、何があった」

「ありがとうござい…だ、だいいちおうじ…?ということは、今は最終新人研修ですか…?」

「はい。…もしや、貴方はナノスのギルド隊員ではないのですか?」

「ナノスはナノスですが…自分は先の沼地から少し外れた村の駐在です。今朝…その…、」



 ナノスには、中央ナノス以外に四つほど小さな村がある。その村はナノスの管轄ではあるが、基本的に派遣されたナノスのギルド隊員が長期在住して勤務に当たるのだ。中央ナノスに勤務する者は、ほぼ全て最終新人研修のサポートに回っている為、最終新人研修が今である事を確認する者はほとんどいない。


 村の駐在と名乗ったナノスのギルド隊員は、リーコスから渡された増血剤を飲み、ふらつく頭を必死に働かせて説明をする。



「村が、襲われてしまいまして…。私ともう一人いたギルド隊員で退治しようとしたんですが、村は全滅……相方が、おとりになるから、必ずナノス支部に報告しに行けと……」

「……何に襲われたんだ」



「…………あれを、そう呼んでいいのかは分かりませんが、二体で行動する特徴を持つのは唯一つ。…ツインズです」



 村を襲った狂暴な魔物ないし動物の正体を問うリーコスに、ギルド隊員は目を瞑って"無いはずのものが有る個体"を思い出す。本当にそう断定していいのか、けれど己の知識で当てはまるのはこれしかないと、ギルド隊員は一つの魔獣の名を唱えた。



「ツインズ…!?」

「ツインズ…、…って、たしかアステラスの北地方の海沿いに住んでいるという魔獣ですが、…本当にツインズなんですか?」


「私もおかしいと思ったんです。ツインズなんてナノスに生息していない、絶滅種指定の魔獣です。ですが……通常動物である熊と類似した姿、鋭い爪、番で行動する、…ツインズ以外に見た事はありません」



 ツインズという単語にリーコスとセリーニは同時に驚く。ナノスでは生息していない魔獣であり、尚且つ北地方から出てくることはない。そしてなにより、



「ツインズは穏やか且つ臆病だ。…村を襲うというのは考え難いが……」

「ですが、番になって行動する熊もどきはツインズ以外に居ないのも確かです……。そういえば、ツインズには番で行動する以外にも、もう一つ大きな特徴があります。ツインズは目がありません、そこはどうでしたか…?」



「……それが、あったんです。目が、六つほど……」



「「…!?」」



 聞き間違いでなければ、六つと聞こえた。セリーニとリーコスは一瞬、この男性が混乱しているのかと考えたが、どうやら目は真剣なようだ。あった、と言えば、たまたま番で行動する変わった熊だと言えただろう。だが、六つと答えたのだ。



「……一先ず、カーラ隊長に通信を送りながら、テントに移動しよう。セリー二隊員、背中に乗せる手伝いを、」

「分かりました」

「あ、歩けます…!」

「だめです。もうすでに脚が震えてしまっています、そのまま足がもつれて腕の傷が酷くなってはいけません」



 リーコスがしゃがんで背を向けると、座っていたギルド隊員が慌てて立ち上がろうとする。だが震える脚に力が入らず、すぐに尻餅をつく羽目になってしまった。セリーニの力を借りてリーコスの背中に乗るギルド隊員は、何度も礼を言って"この御恩は一生忘れません…!"と涙を流した。



 道しるべを頼りに来た道を戻る三人。セリーニはカーラに通信で負傷者が居る事、沼地付近の村が魔獣に襲われ全滅した事、そしてその襲った魔獣がツインズであることを報告する。




〈ツインズだって?あのマヴロス地方の、むちゃくちゃ北側の海と森が接面した場所にしか生息しない臆病且つ人の気配がすると逃げる、あのツインズが?〉

〈はい。どうやらそのようです。ですが…その、なにやら通常のツインズと異なる特徴がある様で、――……目が六つあるそうです〉


〈…異なる特徴が異常すぎる。まぁ襲われたことに変わりはない、あと何分で戻ってこれる?〉

〈見積もって十五分かと〉

〈分かった。他のテントにいる隊長たちにも伝えておくから、その怪我人を追いかける獣に注意を払って戻ってくるように〉




 カーラとの通信が切れ、二人が歩く枯れ葉の音と風が葉を揺らす音以外は何も聞こえなかったが、セリーニとリーコスはぴたりと足を止めて低木が無造作に生えている場所に隠れた。

 枝が頬を擦れ、蜘蛛の巣が髪に引っ付くのもお構いなしに、三人は息を殺して気配を消す。




 段々と枯れ葉が擦れる音が大きくなり、海と獣の臭いが当たりを包みだした。そして低木の隙間から三人が見たのは、大小さまざまな形の目が六つ付いた、黒い毛皮に覆われている魔獣"ツインズ"だった。


 


大体のソシャゲは分かりやすいんですが、唯一未だに手探りなのがグラブルです。ガチャピンもムックも二回来ましたが、全部10連。しかし今日はムックくんがお仕事をしてくれました。そう、シヴァくんが召喚石から飛び出してきたんです。ようこそ。


久々にグリコのカフェオーレを飲みました。あまい。うまい。最高!


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