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Chapter17-3

注意(!)


今回のお話には「性的」なものを連想させる描写、並びに「死」の描写があります。

死の描写は人が爆散したり、中毒死したりします。気を付けてください。性的なものについては出来るだけ端的に、軽く、そしてマイルドに表現していますが、性的な表現に変わりありません。


そしてこのお話には「薬物中毒」を強く連想させる話が多く出てきますが、決して現実で行ってはいけない「非道」として描いています。フィクションです。決して現実世界に能動させる為の描写ではありません。


挿絵(By みてみん)





 それを目の当たりにし、初めて己に物心がついたと思った。




 アステラス国から少し離れた離島で、総合義務教育卒業間近であるネイドは、ごく普通に過ごしていた。


 離島はナノスで実験できない特殊な実験をするための研究所が多く建てられており、ネイドの親はその研究所で働く研究員だった。




 ある日、ネイドの友人とその家族が、友人の卒業と共に引っ越す事になった。



 表向きは転勤という扱いだったが、実際にはその父親が請け負っていた実験に失敗してしまい、薬物中毒とほぼ同じ症状になってしまったという事だ。父親を研究対象にする為、離島からナノスの研究所へと"転勤"する事を知ったネイドは、




 "薬物中毒になった人間が見てみたい"




 そう思ったのだ。



 夜に出る船便にその家族が乘ると知ったネイドは、夜遅い家族に何も言わず家を出る。しっかりと鍵を閉め、鍵はいつもの右ポケットに。一度ぽん、とポケットの上から鍵が入っている事を確認してから、船着き場まで走り出した。



 街灯の明かりを頼りに走り続け、すれ違う大人の合間を潜り、潮風を身体に浴びる。海の音が近付いたと気付いた頃には、船の明かりが真っ黒な夜の海に反射している船着き場に到着した。



 乱れる息を急いで整え、ひっそりと息を潜めながら死角になる植え込みに隠れて転勤する家族を探す。もう既に船へと乗り込んでしまったか?と視線をゆっくり動かして乗り込んでいく人の顔を確認していくこと十五人目、該当人物が居た。



 とても中毒者には思えない、ただの人だった。想像では発狂をしたり、生気が無くなったように動かなかったりを思い浮かべていたネイドだったが、タラップから落ちないようにと手を握るのは、ネイドの父親と然程変わらない優しい横顔だった。 


 船の中に消えてしまった家族。拍子抜けだと内心がっかりするネイドは、家族が帰宅する前に帰らねばと立ち上がった時、船の眩しい明かりに一つの小さな影が見えた。逆光で顔は分からない、だがその人物がはっきりと"友人の父親"である事が分かる。




『すごいしあわせだーーーー!!おれはいま!!しあわせなんだ!!しあわせだとおもいたい!!しあわせじゃなくなるのか!?しあわせにきまっている!!しあわせに、』




 潮の音と共に聞こえる大声。そして、



 大きな破裂音と共に、人影は破片となった。





 ネイドは家に帰ると、まだ両親が帰ってきていなかった。保温状態の風呂に入る為に脱衣所に行き、洗面台の鏡に映る己の顔を見る。


 目をかっぴらき、唇は綺麗な弧を描いていた。その顔と全く同じで、心も興奮と感動に包まれていたのだ。



『薬によって幸福を得ているのに、死を選択する……分からない。分からない。でもすごい、あれが中毒者なのか……!』



 己の鼓動が分かるほど、ドクドクと心臓が全身に血液と酸素、そして興奮を送っているようだった。風呂に入っても、家族が帰ってきても、遅い食事を取っても、ベッドの中でも、ずっと興奮は醒める事は無かった。



 "中毒症状の人間をもっと見たい"――そう思っていても、中々事故は起こらない。違法な薬物に手を出す者も、研究者だらけの離島には居ない。


 あの日の興奮が忘れられず、ネイドは時折思い出しては虚しさを得る。思い出だけでは駄目だ、あの興奮は、瞬間(リアル)を見なければいけない。ネイドは虚しい気持ちを埋める方法を考える。



『敢えて中毒者を作ってしまうか……、いや、流石にそれは駄目だ。事故が起きればナノスに実験台が行ってしまう。そもそも中毒症状を引き起こす物質が、この島に生成していない……』



 幻覚作用や興奮作用を引き起こす薬草や身、木や菌等がこの離島に生成していない事は既に知っているネイド。研究員が使う島だからこそ、そういった作用を引き起こす物が生成していない離島を選んだのだろう。


 理性と興味を天秤にかけるのが研究員。手を出す前に、手を出せない状況を作っているのだ。


 だがそれではネイドが面白くない。ネイドはあくまで他人の行動が見たいのだ。観察をするための材料が手に入らなければ意味がない。




 しかし、ネイドはとても運が良かった。





『君、こういうのに興味ない?』



 図書館のフリースペースで調べ物をしながら勉学に励むネイドの隣に、一人の女が座る。観光で来たのか、あるいはビジネスで金を巻き上げる為に来たのか。


 ネイドよりも一回り年上の女は、青色の粉が入った透明の小袋を出してきた。そういう誘い文句は、中身の成分を聞かなくても分かる。



『興味あります』



 女は真面目な少年を中毒にして、親の金を盗んででも薬から逃れられないようにするつもりだった。子供は誰かを仲間にするため安易に勧める為、爆発的に中毒者も、金も増える事を理解していた。


 だが、女は"薬物"ではなく、薬物の幻覚作用による幸福と絶望を得る"中毒者"に興味を持つネイドの事を理解していなかった。





 観光中仮住まいとして予約していたホテルの一室。噎せ返るような汗と体液の香りを纏い、乱れたシーツの上で死んでいる女性を見下ろすネイド。


 その薬物を摂取した女が、時間ごとにどういった症状が起こったのかを事細かくノートに書きこみ、そのまま致死量分を摂取した後、快楽と死へ近付く幸福と恐怖に、泣き叫びながら天国と地獄へ向かう女性。



 一部始終を見たネイドはその素晴らしさに、初めて己の研究意欲が満たされた瞬間だった。


 ネイドは女性のバッグから小分けにされた薬物を拝借し、誰にも出会わないように窓から魔法を使って出ていく。ネイドは己が関係している事を紐付けられない様に、一切女性に手を出していない。"お先に、見本を見せてください"と言って、女性に薬物を摂取させ、その経過を見ていった。女性を検死する者は、中毒死として処理するだろう。




 ネイドは薬物を解析し、比較的少ない量で幸福と絶望を得る様に改良する。その改良に向けて、何人ものクラスメイトや研究員を犠牲にし、一年で離島の約半数を死に追いやってしまう。



 薬物が急に出回った事、元凶である女性が死して尚横行している事に疑問を持った離島の研究員とギルド隊が、一軒ずつ家を捜査すると知ったネイドは、研究が滞ってしまう事だけが非常に心苦しかった。




注意書きどう書けばええんか分からんくて、ガイドラインをぺろぺろしながら見てたんですけど、きっとどっかにあるんやろな…。自己流の注意書きですが、フリでもなんでもなく絶対に現実世界でやるなよ!中毒になっていいのはインコ臭だけや!!!!!


あ~、モッツァレラチーズのおいしいやつ食べたいなぁ。。。

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