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第2話 ひとりごと



 神様がこの空の上、楽園で僕らを見守ってくれている神治世界「リーヴェルト」


 7つの国の人達はそれぞれ神様からの恩寵を受けて生活している。例えばリークリス王国の人達は魔術適正の高さを売りに騎士を目指している人が多いとか、そんな感じ。


 そして、200年前の魔族の大侵攻の際に通貨、及び言語の統一化がされているものの国家機密や古い唄に、はたまた子供の名付けなどに国の言葉が残っている——。







 ……知識 (かたよ)ってるよ。


 



「ねぇ、そう思わない?」



 僕は目の前にいる短く切られている黒髪にティアさんと同じの緑の目の彼に聞いてみた。



「…………」




 相手は表情を変えず口を(つぐ)んだまま。

 そして、風が吹いたかと思えばグニャリと歪んでしまった。


 そりゃそうか、そうだよね。


 話しかけたの水面に映ってる僕だし、何か言ってきたら怖い怖い。一冊は本書けそうだよ。




「これが本当の自問自答。…………何やってんだろ」




 いや、答えてないから自問無答か。


 湖の波の音に、木の葉の擦れる音が気持ちいい。あと、木漏れ日が本当に綺麗。






 記憶を失くす前の僕もこの景色を誰かと見ていたのかな。

 




 なーんて、ね。


 木のバケツを湖に沈めて水を汲む。





 どうしてこんなことをやっているか、というと……話は数十分前の一言に遡る。




『あ、えーっと外に出たらバケツ2つあるからそれ持ってぐるぐる登って……登ったら真っ直ぐ行ったところに湖があるからそこで水汲んできて! よろしく!』



 と、白い髪の女性に呼ばれて部屋を出て行く時にティアさんが言ってきた。




 そうして僕はバケツを2つ持ってここまで来たわけだ。



 要約すると僕は「おつかい中」ということになる。

 初めてくる場所から見知らぬ場所への生活用水確保旅。


 ま、後は溢さずに無事帰るだけだ。




「……よいしょっと」



 水入りのバケツ2つになるとさすがに重い。



 ……うわ、葉っぱ入ってた。

 思わず溜め息がでてしまう。持ち上げるの大変なのに。


 非力だな、僕。





「おい、デカイため息吐くわ一人で喋るわ頭大丈夫か?」



「へっ!? 」



 変な声出た。びっくりした……。

 背後から声がかかった。けど……なんとなく振り向きたくない。



「い、いつから見てたんですか?」



「いつから、ってお前さん『ねぇ、そう思わない?』からだぞ」



 うっわ最初からだ!

 そして変な裏声の上に絶望的に似てない!



「最初から「まぁまぁそう褒めるなって。

こう見えてモノマネは……」

「褒めてないです」



「ありゃ」



 もういっそ湖に突き落としてくれ。

 最初から聞かれてたなんて……恥ずかしすぎる。特に自問自答のくだり。



「おっ? 突き落とそうか」


「やっぱり、やめてください。……え? 」



 まさか心読まれてる?いや、そんなはずは……。

 試してみようか。




 天気が良いですね。




「だな、雨季前の貴重な晴れだ」



 読まれてるじゃないか。

 余計なこと考えないようにしよう。




 話しかけてきてた人を振り返ってみてみる。


 恐らく20代後半、と言ったぐらいの右顎に何かの引っ掻き傷のある男性だった。それよりも目を引いたのが木漏れ日に反射して少し(きら)めいている綺麗な白髪だった。


 そして暗めの紫色の目が真っ直ぐ僕をみていた。



 白髪の人なんてその辺によくいる訳じゃないし、きっと僕が目覚めた場所の人だろう。



「なーにボケた顔してんだ。トーアに帰るぞ」



 どうやらあそこは『トーア』というらしい。

 手を頭の後ろで組んで歩いて先に行ってしまった。



 ……手伝ってくれるわけじゃないんですね。



「手伝うわけねぇだろ。頑張れ若者! で、空から落ちてきた青年ってお前さんのことだよな?見ねぇ顔だし」



「……空から? 」



「あぁ。空から光の柱が出てきたんで気になってティア嬢が見に行ったら青年がいたとかなんとか」



 あれ話がよくわからないぞ?


 空から落ちたら人でもなんでも死ぬし空からの光の柱なんておかしいにも程がある。




「俺は寝てたから知らねぇけどな」



「寝てたんですか」



「あぁ。ってお前他に聞くことねぇのかよ」



「他に?」



「ほら、前にこんなことあったんですか? とかさっきから話してるいい感じのナイスなガイの名前はなんですか? だとかティア嬢に彼氏はいないんですか? とかな」




 1番目はまだしも、なんだよ後ろ2つの選択肢!

 そしていちいち裏声で話すのが微妙にムカつく。



「じゃあ前にもこんなことあったんですか? 」



「知らね」



 ………………え?

 元から重いバケツがもっと重くなった、ような気がする。



 知らないのになんで選択肢に入れたんだこの人。

 早く行こ……。




「俺は一言も知ってるとは言ってねぇからな。あー……でも族長なら知ってるかもな」


「ほい、行ってこい」



 背中を押された、ような気がした。



「えっ族……長? 」



 振り返ったときには後ろには誰もいなかった。

 そして、いつのまにか着いていた。


 さてはあの人……隠れたな。


 そうやって探したりする僕の反応見る気だ。呼びかけなんてされたら声真似されながら遊ばれる未来が見える。



 よし、先に帰ろう。きっと観念してついてくるだろうし。







 ——風が吹き上がり、青い葉が吹き抜けた空に吸い込まれていく。



 目の前に広がっているのは巨大で、深い穴。


 底には水が溜まって湖みたいになっていて、その周りの岩壁にいくつも扉や窓がついてある。


 ここが、トーア。


 町なのか村なのかは知らないけれど。








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