第1話 世界の現状 ①
俺が今いる場所を色で表すなら〈白〉が一番近いんじゃないかと思う。上下右左前後、全方位がすべて〈白〉しか見えない。しかも先が見えないほどある。
それに〈ここ〉は人どころか自分以外の生き物の気配すら感じられない。
そもそも俺は〈ここ〉にどうやって来たかも覚えていない。
ただ自分の産まれてきてからの記憶はある。
…いや、あるよな?一応念のため確認すると
名前は皇 天翔
中学三年生で特技はピアノと大乱○みたいな格ゲー。 学力も一応良い方だと思う。運動神経も悪くないはず…多分
父さんの名前は皇 (すめらぎ )で
母さんの名前が皇 (すめらぎ )
兄弟は姉が1人いて名前が皇 (すめらぎ )だ。
学校でも一部除いてみんな仲良かったし、クラスに武術の達人やIQ150超えてるやつなどがいるくらいで、別に普通の生活してたはず。
「そんな確認しなくても大丈夫に決まってるでしょ皇君、私が記憶をなくすなんてヘマをするわけないから」
俺が記憶の有無を確認していると目の前に女の人が現れた。
「とりあえず自己紹介するわね、私は《プレイヤー》の1人で【level53,861】よ
名前はフィムって呼んでくれればいいわ
私は今はこれしか言えないから次あなたね」
「じゃあ俺の名前は…っていきたいところだけど多分お前ら俺のことをもう知ってるはずだから1つだけ質問するぞ。
何故俺は死んだんだ?」
「ふ~ん、一応そう思った理由を聞かせてもらってもいいかしら」
「勿論、じゃあとりあえず三つ理由を言うぞ。
まず1つ目は〈ここ〉が地球上に存在することが不可能だと思っている。
〈ここ〉は先が見えないほどあるわりには地平線のようなものがない。だがもし地球のどこかなら…いやたとえここが違う星でも球体なら地平線か水平線は見えるはずだ。つまり〈ここ〉は今確認されている星ではないということ。
次に二つ目は不自然に俺の記憶がないこと。
今俺の記憶は大体の記憶が残っている。だが〈ここ〉に来る直前と〈ここ〉へ来るまでの記憶がない。まるで
〈ここ〉に関する記憶だけを意図的に消したようにな。
ついでにあんたは“記憶を消すなんてヘマはしない”と言っていたがこれは〔指定したところ以外の記憶を消さない〕という意味だろ。
で最後に三つ目は、まぁ言っちゃえば勘だ。
不思議なことに俺の勘はよく当たるみたいでな。
というかこんな変な場所に気づいたらいたとかどう考えてもおかしいだろ。」
「…聞いていたけどさすがね、まさかいきなり〈ここ〉に来て慌てないどころか〈ここ〉が何か、私たちがどんな存在なのかがある程度分かっているなんて。
じゃあその質問を答える前に答え合わせをしましょうか。
まず〈ここ〉はあなた達の言い方をすると[天国]になるわ。
といっても天国とは似て非なる存在だけどね。
簡単に言うと[天国]は死者の国だけど〈ここ〉は死者が来ないのよ。」
ならなんで俺はここに居るのだろう?相手の反応からして俺が死んだのは間違いなさそうだが。
「とりあえず最後まで話を聞きなさい、
…まあ言っちゃうと〈ここ〉は天国でも何でもない。
《管理者》が雄一存在できる場所よ。
といってもさすがにあなたでも分からない単語が増えてきたでしょうからあとは《管理者》に聞きなさい。
あとあなたが死んだ理由だけど、実は私も死因だけは聞かされてないのよ。だから《管理者》が知っているはずよ。
あとそうだ、あなたさっきの記憶確認色々おかしかったじゃない。
何が『学力も一応良い方だと思う。運動神経も悪くないはず』よ。
学校のテストはすべて満点で学年ダントツ一位。どころか先生に教えられる知識量と理解力。
運動神経も何をやらせようと続ければ世界を狙える位の才能。
ピアノと格ゲーなんかすでに世界トップレベル。
家族も超じゃきかない程度の…っ」
俺はすこしだけ殺気をあてる。
まさかただの人である俺が殺気を出せるとは思わなかったんだろう。まだそんな出してないからびっくりしただけだ。
「そろそろ止めてくれ、
というか俺はそんな才能もないし天才でもない、ただ工夫しまくっただけだ。
それに家族と俺は関係ないだろ。」
「…なるほど、そういうことね。
わかった、もう言わないわ。
じゃあ今度こそ《管理者》のところまで送るわ。
また、今度会いましょう」
そうフィムと名乗っていた女の人が指を鳴らすと周りのただ白いだけだった空間がどんどん崩れていく。
段々増えていく隙間からカフェみたいな風景が見えてくる。
そして最後の欠片が崩れ、ふと周りを見たときにはフィムは消えていた。
「あ~フィムは帰っちゃったか、ひさしぶりに話せると思ったのに。まあいいや
はじめまして皇君。フィムから聞いたかどうか分からないけど僕が絶対無二の存在《管理者》のキリスだよ
よろしくね」
カウンターの奥からそんな声が響き、見てみるとス○バの店員の格好した小三くらいの男の子が現れた。
「あんたが《管理者》か?」
「うん、そうだよ。この外見と雰囲気じゃ信じられないだろうけど。
まあいいや。
じゃあとりあえず説明だけしてその後に皇君の質問に答えていこうか。
そもそもこの世は君たちのいる地球や太陽がある世界ともう1つあるんだ。厳密にいうともっとあるけど今は置いとこう。
そしてその二つの世界を造り、管理しているのが僕となる。だから《管理者》と名乗っている。
まあ、僕が世界に降りるとちょっとしたことで壊れちゃうから直接管理するのは無理なんだよね。
次にフィムが名乗っていた《プレイヤー》というのが、僕の仲間というか手下みたいな感じだね。
まあ大体のイメージをスマホのRPGで例えると《管理者》がスマホを操作している人で、《プレイヤー》は操作されているキャラクターになる。だから《管理者》が直接管理することは、機材なしにスマホ配線弄っているようなもの、つまりぶっ壊れるってこと。
ちなみに《プレイヤー》は9人いるから、君が10人目だね!
次に「おいちょっと待て」ん?どうしたの?」
「いや、『ん?』じゃなくて俺が10人目ってどういうことだ?おい」
「あれ?フィムに言われなかった?皇君には《プレイヤー》の1人になってもらうために〈ここ〉に来てもらったの。」
「俺知らない人の下に就くなんて嫌なんだが。」
「えっ、一応僕は世界造った神様のようなものだよ?
そんな存在の手伝いが出来るなんてなかなかない機会たよ?」
「いやそんなこと言われても俺の上にいるのは俺が決めたいんだけど。」
というか俺はもう決めてるんだが。
「じゃあ、君たちの世界が原因でもう1つの世界がピンチになっているって言ったらどうする?」
「は?」
「詳しく説明すると君たちの世界で発生している妬みや憎悪などの負の感情がちょうど第二次世界大戦が終わった辺りから許容範囲を上回ったんだよ。
普通なら崩壊していくはずなんだけど、何故かもう1つの世界に上回った分の負の感情が向かって行ったんだ。
まぁ溜まることは無かったけど代わりに《魔物》と呼ばれる存在になっていった。
《魔物》は基本的に動物より強く野生の動物はほとんど消え、人への被害も出始めた。
結果的に、直接溜まることはないけど今現在等加速度的に負の感情が間接的に溜まっている。
このままだとどちらの世界もどうなるか分からない。それこそ生き地獄のようになるか、爆発するか。
どちらにしてもよい結果にはならない。
さぁ、これを聞いて君はどうする?」
…正直、驚いた。俺も何か地球がうまく廻ってないんじゃないかと思っていたがまさか他の世界にまで悪影響が及んでいるなんて
自分の世界が原因で迷惑かけてるんなら勿論…
「分かった。俺が《プレイヤー》になって止められるなら協力する。」
「いや~助かったよ。」
「ただし二つ条件がある。」
「なんだい?」
「1つは、俺は納得出来ない指示なら従わない。それが例えお前でもな。」
「勿論いいよ!というか他の《プレイヤー》達も悲しいことにみんなそんなもんだし
で、もう1つは?」
そう言ってこっちを見て来るが多分俺の考えていることが分かるんだろう。だから言わなくてもいい気がするがこれは俺自身の決意だからここで宣言する。
「俺が全力でやれば世界は救えるだろうな?」
「うん!じゃなきゃここに来てないよ!」
俺は迷いなくそう言ってくれたお陰で少し安心することができた。