序章 1628年6月4日
改稿:2019年7月より、読者の皆様より頂戴したご意見、誤字報告を元に全般的に修正をいたしました。
ストーリーの流れは変えず、細かな補正とご意見の多かった指摘事項の見直しを行いました。
※この物語は、戦国時代に転生した現代人が歴史を変え、それを後世に伝えるまでの架空の物語です。
作中、実際の名前がわからない人物(特に女性)が登場しますが、物語の都合上、作者の想像で名前を付けます。そのような場合は前書き、または後書きで史実と混同しないよう注意書きさせて頂きます。
また、作中で筆を執る主人公が当時を回顧する場面は“~~~~”で括ります。
「敵は本能寺にあり!」
戦国の歴史に詳しくない人も、この言葉が何を示しているかはご存じだろう。
1582年6月、明智光秀が織田信長を討つときに発した言葉として世に伝わっている。織田信長は京の本能寺にて明智軍に襲われ、全国統一を目前にして49年の生涯を閉じた。この時、信長の後継者である息子の織田信忠も共に命を落としており、光秀が実質的な後継者として、各地の武将に号令をかけた。しかし、謀反を起こして主君を殺害した光秀に従う者は少なく、逆に中国大返しを敢行して戻ってきた羽柴秀吉に討たれ、豊臣の時代へと流れていく。
私はこの織田から豊臣へと移るきっかけの事変を、全力で回避した。
その結果、織田家によって天下は統一。安土に幕府が開設され、私もその要職について戦国時代の終焉に尽力した。
私は、ありきたりなパターンで元いた時代で死を迎え、気がつくと戦国の世に転生をしていた。そこで生き残るためにもがいていく中で、ご主君に対する忠誠が芽生え、どうしても“本能寺”で命を落としてほしくないと思うようになり、何とかして変を回避しようと労苦した。
かくして変は回避され、こうやってご主君と天下統一後の世を過ごすことができたのだが…。
乱世は終焉を迎え時代は偃武へと移り、既にご主君を含め、共に戦った仲間は他界し…俺は余生を持て余している。
そうだ。
私が転生してから本能寺の変を回避するまでの日々を物語にするのも面白いと思い、後世に残すべく、筆を執った。
後世の歴史家が見れば、度肝を抜かれるような話になるだろう。それから書いた物語は、時代の経過の中で紛失されないよう、信頼のおける寺社に保管してもらおう。
うむ、そうしよう。
-戦国の世に、未来から転生した人間がいて。
-歴史を塗り替えたという事実を知れば、どうなるであろうか。
-私がその場にいることができないのが、非常に残念だが。
この乱世を生きぬいた一人の男として、ご主君の偉業を後世から称えられるよう、そして名もなき方々も日の目をあびれるよう、できるだけ事実通りに詳しく書き残そう。
思い立ったが吉日。
私は、筆を滑らせた。
既に隠居した身故、時間だけはたんまりとある。
そうだ、未来人であることがわかるよう、ところどころ現代言葉をおりまぜよう。西暦も使って見ようか。…昔のことを思い出せるであろうか。私も年老い、馬に乗るのも億劫になった。…でも、私の記憶を。歴史としての記録を後世に残したい。
その日から、津田忠輝は恩信斎と名を変え、奥の書院に引きこもり、ひたすら筆を走らせる日々を送った。
1628年6月4日
物語を書きあげた恩信斎は息を引き取った。
彼の70年の生涯を綴った物語は、後世偶然発見され、世界中の人間に衝撃を与える物となる。著者である津田恩信斎の研究が盛んに行われた。
※この物語は、戦国時代に転生した現代人が歴史を変え、それを後世に伝えるまでの架空の物語です。
作中、実際の名前がわからない人物(特に女性)が登場しますが、物語の都合上、作者の想像で名前を付けます。そのような場合は前書き、または後書きで史実と混同しないよう注意書きさせて頂きます。
また、作中で筆を執る主人公が当時を回顧する場面は“~~~~”で括ります。
津田恩信斎:主人公の死ぬ直前に使用していた名前。本物語は途中で主人公の名前が変わります。