第1回編成会議の一週間前
約40年前、如月レイカーズは一部リーグに所属し優勝争いが出来る強いチームであった。如月市に住んでいた少年はシーズン中は毎日のように球場へ足を運んだ。
憧れの選手、沸き立つ観客、街の中心は間違いなくレイカーズであった。
「失礼します。」
オーナー室に瞳子が入る。データを使ったチーム作りを提案するためである。そのためには新しい部署を作らなければならないが、それを決定するのはオーナーである。
「入りたまえ。」
オーナーの名は篠塚好古。如月市の出身である。農作物の先物取引で財をなし、20年前にチームを買収。それ以降10年以上オーナーに在職している人物である。
「失礼します。チーム編成について認可して頂きたいことがあります。」
「資料を持って来ました。ご覧下さい。」
オーナー篠塚は資料を読む。新しいデータによる運用には新部門を作らなければならず、そのためにはまずはオーナーに認めてもらわなければどうにもならない。
「勝てるようになるかね?」
「わかりません。しかし何かに挑戦をしなければ、変化を得ることは出来ません。」
オーナー篠塚は窓を見る。そこから如月市の街並みを見ていた。住民は野球が好きだが、かつて一部リーグにいた頃に比べると当時より熱狂的ではなかった。
また勝てるレイカーズが見たい。如月市の住民は誰もがそう思っているだろう。当然、オーナーもそう思っている。
「わかった、認可しよう。新設部門の予算も都合しよう。」
「ありがとうございます。チーム勝利のためにも善処いたします。」
その後、瞳子は仕事に戻る。新設部署を作るためやることは山積みだ。もしかしたら今が一番やりがいのある時期かも知れない。
オーナー室にて篠塚はペナントを見る。優勝した頃の年を表しているこれを見て、物思いにふける。
如月レイカーズは強かった時期はあった。しかしFA制度が施行されて以降、スモールマーケットのチームであるレイカーズは主力の引き留めが出来なかった。年々弱くなり優勝した3年後に早くも二部リーグに落ちてしまった。
無邪気な少年はある決意をして家業を継いだ。事業を拡げお金を稼ぎ、努力の結果チームの買収に成功する。
かつての少年の情熱は今なお冷めてはいない。
アスレチックスのパクり