改革案
(ひえー、緊張するなぁ)
前の世界ではプレゼンの経験がほとんどないために、自信は全くなかった。それでも自分を拾ってくれた美人GMには恩を返したい。
「まず初めに意思決定科学部門の役割です。」
「この部門は他とは違った考えを科学的、つまりは数学的なアプローチをもって検証します。」
会議室はざわめく。
「まずはこちらの資料をご覧下さい。」
印刷された資料を配布する。
「まずは過去10年の優勝チームの総得点と総失点、得失点差です。年によりばらつきはありますが、最低限とるべき得点と防ぐべき失点が出てきます。」
「そして次ですが、総得点に関して必要な要素を検証しました。」
「こちらのデータから総得点では、打率、本塁打より出塁率と長打率がより相関関係を持つことがわかりました。」
「つまり補強や育成においては長打率と出塁率を重視するべき何です。」
「次に投手ですが~」
資料を元にセイバーメトリクスについて語っていく。皆は何か怪訝な表情である。それも仕方ないことだ。それまでになかった考え方なのだから。
会議は終わった。緊張のせいか疲れが出てきた。自動販売機で一番甘そうなカフェオレを買う。
けとこれからどうなるのであろうか?前の世界のMLBではデータを扱うアナリストと現場のコーチとスカウトとの軋轢があったらしい。自分はいずれ起こるであろう内紛を抑えることが出来るのだろうか?
不安にさいなまれるなか、瞳子さんが声をかけてきた。
「お疲れ様。今球界の常識に一石投じたわね。」
「めっちゃ緊張しました。皆さんあまり納得してなかった様子ですが」
「それは仕方ないことよ。何事も新しいものには反対を受けるものだわ。」
「出来るのでしょうか?」
「わからないわ。でも何か違ったことをしなければ、大きな変化は得られない。これはその第一歩よ。」
瞳子さんはセイバーメトリクスを信用してくれている。期待は裏切れない。
「そうそう、意思決定科学部門だけどね。オーナーに直訴して作ったものだから。失敗すれば私はGM解任させられるかも知れないから、頑張ってよね。」
(ガーンだな、プレッシャーをかけられた。)