美女との出会いやわ
「私もお話を聞いてもよろしい?」
スレンダー美女が主人公に声をかける。
「構いませんよ」
(おっ、美女からの逆ナンやんけ)
「出塁率や長打率が重要とは、どういうことかしら?」
(ですよね~、逆ナンのわけないか)
期待は裏切られた。
「そうですね、まずチーム全体のお話です」
「例えばホームランが多いのに得点が取れない。これはどういうことかわかりますか?」
瞳子は当然のように答える。
「それは重要なタイミングでホームランが打てないことだわ」
「大差の試合で打つ選手とかね」
続けて質問する。
「ではチーム打率が高いのに、得点に繋がらないチームは?」
「チャンスに弱い選手が多いから」
なるほど。セイバー以前の常識で答えてると主人公は思った。warやOPSと言った指標も、この世界ではないのであろう。そして主人公は自分の見解を述べる。
「長打が多いのに得点が少ないのはチームの出塁率が低いせいです。同じだけ長打が打てるチームなら、より出塁出来るチームが得点しやすくなります。」
「その逆のまた同じような考えです。打率が高いチームは一見打てるチームに見えます。しかし長打が少なければ、進塁は各駅停車になり長打が打てるチームよりも効率が悪くなる」
瞳子は反論する
「しかし得点圏打率を見れば、チャンスに弱い選手もいるわ」
「それはシーズンにおいて、得点圏打率の打席数が少ないからです。1シーズンで約500打席ほど回ってきますが、得点圏はそれよりもはるかに少ない。数字の誤差も出てきます」
「得点圏もより長いスパンで判断すれば、通常の打率との誤差もなくなります」
瞳子は一考する。自分たちが考える常識とは違ったものであり、普通は取り入れるものではないだろう。しかし選手編成で頭を悩まし何か救いが欲しかった瞳子としては、何か魅力がある考えのような気がしてならない。
「投手の話もしましょうか。真っ直ぐな速球を否定するのは何故かしら?」
「否定はしません。ただゴロを打たせれば球数は少なくてすみます。三振を奪うのには最低でも3球は必要で、普通は見せ球も含め4球は投げます。しかしゴロを打たせれば1球で済ませることも可能です」
「でもゴロを打たせれば、ヒットになる可能性もあるわ。エラーでの出塁もある」
「ゴロでは長打にはなりなせん。しかしフライなら長打になる可能性もあります。運が悪ければホームラン。エラーに関してはアマチュアならともかく、プロならばシーズンに100も200もしないでしょう」
その他、少しばかり話を続けた後、二人は別れた。瞳子は最後に名刺を渡す。
「私の連絡先が書いてあるわ。またお話しましょう」
名刺を渡されやはり逆ナンかと考えたが、名刺に球団関係者だとわかると主人公は落胆した。そして主人公は思った。
「どこで寝ようか?」