*ふぁいあーさぷらいず*
「うた、今日遅刻してきたな」
そんな風に話しかけてきたのは、隣の席の中川伸之だった。髪の毛は金髪で生え際が黒くなってきていて、見た目だけを考えると所謂ヤンキーみたいな奴だった。普段から一番仲が良く、ぼくの家に来たことのある唯一の友達だ。
「まぁ、ちょっとね」
今朝の女の子についてどう説明したものか、ぐるぐると頭を悩ませながら曖昧に答えた。
「ふーん、じゃあさ帰りに公園行こうぜ」
「こ、こうえん?」
少しどきりとした。
「公園にホームレスが住んでるって噂だぜ」
「まぁ、確かに」住んでるよね
なんて答えたそのときチャイムがなり、2時間目の算数が始まる。
「あ、宿題のプリント忘れた」
あっという間に帰りの会も終わり、放課後の時間となった。三時間目の体育の時間に大きな爆発音が聞こえ、ぼくの家とは反対側の方向から煙が上がったことを除いたら、いつもと少しずつしか変わらない学校での時間が終わった。
「うた!公園行くぞ!」
と、のぶに背中を押されながら下校する。朝、確かに存在していた段ボールに入った女の子のホームレスはまだ公園にいるだろうか。居て欲しいような、居て欲しくないような曖昧で複雑な気持ちと会話しながら、僕は公園に到着した。
確かポポロン。そう、ポポロンと言った女の子は、朝と変わらない位置で段ボールに入っていた。
何故か焼け焦げ、真っ黒になっていたけど。