終章 終わりは始まり
南部編、最終話です。
赤い空間が途切れ、私達はそこから解放された。
仰向けに倒れた状態で目を開けると、太陽の光が見えた。
眩しさで目を閉じる。
どうやら、無事に外へ出られたようだ。
あのまま出られないんじゃないかと嫌な予感を覚えたが、そんな事にならなくてよかったと心底思う。
「みんな、無事?」
「うん」
「無事よ」
『むきずよ!』
胸の辺りからみんなの返事が聞こえる。
みんなの重みも感じる。
抱きしめたままだったから、当然だろう。
……雪風。
その文句気に入ったの?
眩しさに抗って細く目を開け、その安否を目にする。
確かに、みんないる。
精神が入れ替わっていたり、体が融合してしまっていたりなんて事もない。
よかった。
それがわかると、他の事を気にする余裕が出てくる。
じめじめとする。
湿気が多いのかもしれない。
水分が肌に張り付くような不快さがあった。
みんなを抱えていた手を離した。
思っていたよりも力が入っていたみたいで、凝り固まった手を難儀しながら緩める。
立ち上がる。
みんなも同じように立ち上がった。
どうやら、怪我をした者はいなさそうだ。
そして、周囲へと目をやった。
「ここ、どこかしら……」
アードラーは困惑した様子で呟く。
その困惑は、私も同じだった。
そこは周囲を緑に囲まれた空間。
一言で表すならそれは……。
「ジャングル……」
私達は、どこに飛ばされてしまったのだろうか……。
おまけ
短編にするにも短すぎるのでここに書きます。
「これです」
そう言って、カナリオは苔むしたその装置を指差した。
それは私がカルダニアで見た転送装置と同じものだった。
「これを調べている時に装置が作動して、私達は遠く異国の地へ飛ばされたのです」
ここはリオン王子の治める地。
森の奥にある場所だ。
恐らく、カルダニアの装置の繋がる先はここだったのだろう。
しかし、予期せぬ事態があって私もカナリオも予定外の場所へ飛ばされた。
そうか、二人とも予期せぬ事態に暴れてさらに予期せぬ事態を招いたのか……。
そう思うと、まるで私達が脳筋みたいじゃないか。
「今では失われた技術。遺物というものですね」
そう言って装置へ歩み出たのは、ムルシエラ先輩である。
「あまり近づかない方がいいですよ」
「何かあれば制御を試みます。失敗しても、あなたの報告は聞いていますからそれを頼りに帰ってきますよ」
私の忠告に、ムルシエラ先輩は笑って答えた。
まぁ、先輩が大丈夫だというなら大丈夫なんだろうけど。
でも先輩、何だか昆虫採集に来た短パン小僧みたいに目が輝いているんですけど。
不用意にいじり回して誤作動とかさせないでくださいよ?
私はこの装置にトラウマがあるので、一歩退いてしまう。
カナリオも同じような事を思ったのか、同時に一歩退いた。
結局、一度誤作動させかけたが、ムルシエラ先輩が強引に止めて事なきを得た。
装置は動力を切られ、王都に運搬。
研究される事になった。
とりあえずの区切りとして、ここで休止します。
またいずれ、じっくりと続きを書こうと思います。




