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クロエ武芸帖 ~豪傑SE外伝~  作者: 8D
倭の国編
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二十三話 忍法・忍者緊縛落とし

 ぼかしていますが、少し下ネタが入ります。

 私の前に現れた男は、黒装束と両手に小刀と手裏剣を構えるあからさまなニンジャであった。


 最初に見た時から思っていたけれど……。

 逆手に持った小刀に、ザ・ニンジャと言わんばかりの定番アイテムである手裏剣を構える姿は、まるで「私はニンジャですよ」と無言でアピールしているかのようだ。


 ニンジャは無言のまま、左手の手裏剣を立て続けに二つ投げつけてくる。

 片手で、どこからともなく手裏剣を繰る技術は恐るべき手際の良さである。


 それに加え、同時に自らも私に向かって走ってくる。

 私が手裏剣を白狐で弾くと、続けざまに小刀の斬撃が加えられた。


 しかし、振るわれたニンジャの小刀が、白狐と合った瞬間に斬り折られる。


 驚きを見せる忍者の顔に左手で拳を見舞う。


 綺麗なブリッジ回避でかわされた。


 うは、サイバーパンクなニンジャっぽい!

 これが本場か!


 ちょっと興奮する。


 その間にも、ニンジャは再び手裏剣を二つ投げつけてきた。

 今度は弾かず、左手の人差し指と中指と薬指の間にそれぞれ受け止める。

 そして投げ返した。


 ビッテンフェルト流闘技の前では、手裏剣など止まった手裏剣にすぎん。


 咄嗟の事に動揺しつつもなんとか避けるニンジャ。

 その間に、私は高く飛び上がってニンジャへ襲い掛かる。


 上段への攻撃を警戒して防御態勢になるニンジャ。

 が、私は空中に魔力の足場を形成し、その裏を手で押して地面へ向かって加速。

 空中からナギッ! と一瞬にして着地した私は、無警戒だった忍者の足元を蹴り払った。


 すかし下段である。


 転んだニンジャはなんとか後ろへ転がって転倒を免れたが、次に放たれた魔力縄クロエクローを避ける事が適わず、ぐるぐる巻きになった。


 こうして、私は謎のニンジャを捕縛する事に成功した。




 魔力縄で捕縛したニンジャの両手を上げさせて縛り、胴体も木に括りつけた。

 囚われた姫騎士の構えだ。

 くっころ状態である。


 その状態のニンジャを尋問する事にした。

 自殺防止のため、口には魔力縄を噛ませている。


 もう安全なので、すずめちゃんもそばに呼んでいる。

 足元では雪風がふわふわころころとしていた。


「先に言っておくけれど、舌を噛み切っても私は治せるから意味がないよ? だから、自害は考えないように」


 言ってから、口の魔力縄を外す。

 ニンジャは縄を外されて、むっと憮然とした表情で私から顔をそらす。


 何も言わぬ。

 という様子だ。


「で、あなたは誰なのかな? どうして私を監視してたの?」

「……俺は何も言わねぇ。たとえどんな事をされたって、口は割らねぇぞ」


 やっぱりそうか。


「そう。なら、その覚悟がどれほどの物か試させてもらおう」


 左手で魔力縄を持ち、右手で鞄を漁る。

 私は触れていないと魔力縄を維持できないのだ。


 鞄の中から、ビンを取り出した。


「ふふふ、こいつが何かわかるかぁ?」

「な、何だそいつは?」


 ニンジャにビンを見せると、毅然とした態度をとりながらも怯えを含んだ声色で訊ね返す。


 くくく、強がっているのが丸わかりだ。

 そんな様子でいつまで持つかな?


「これは、七味だ」

「七味だと?」

「そうだ。陳皮、胡麻、山椒、紫蘇など、七つの味から構成される調味料だ」

「それで、何をする気だっ……?」

「慌てるな。

 こいつは様々な風味を持ち、うどんやそばは勿論、肉にかけて焼いてもよく合う。

 想像してみろ。

 こいつを焼いた鶏肉にかけて食った時の味を……。

 パリッとした皮、溢れ出す肉汁、その油特有の風味と甘味の中にぴりりとした辛さとなんとも言えない良い風味が充満するのだ」


 ごくり、とニンジャは唾を呑んだ。

 ふふふ、どうだ。

 腹が減ってきただろう。


「しかし、注目するべき所はそこじゃない。大事なのはその七つの味の内、主に辛さを担う物だ」

「まさか、それは……」

「そう、唐辛子だよ。ふふふ」


 私はビンをニンジャの目の前に持っていった。

 ビンのガラス越しに赤い七味を揺らして見せる。


「この赤だ。火のようなこの赤は、まさに燃え上がるような熱を人へ与えるのだ」

「だから何だって言うんだ!」

「こいつを、お前の大事な所へ塗り込んだらどうなるかな?」

「な、何だと!?」


 ニンジャが驚愕する。


「これを塗りつけられた部分がどうなるか、想像に難くないだろう?」


 唐辛子というものは、どこかの国では刑罰として用いられたらしい。

 確か、浮気をした人間の局部に塗る、とかだっけ?

 つまり、それをされると刑罰になるくらいには辛いのである。


 私はビンを地面に置く。


 まぁ、実際やる気はないんだけどね。


 すずめちゃんもいるし、そんな所は見せられない。

 それに、私が使う専用のジョイスティックはこの世で一本だけだ。

 アードラーと兼用である。

 それ以外は触る事はおろか、握ったり、擦ったりとか絶対にしたくない。


 だから、実の所これはただの脅しだ。

 少し脅してみて、吐かなかったらこのまま放置して街道に戻ろうと思っていた。


 この男はあからさまにニンジャだ。

 どうせ、前田で襲ってきた連中の関係者だろう。

 だから、私を見張っていたに違いない。


 それに「忍者」とは耐え忍ぶ者。

 こんな脅しでは絶対に屈しないだろうし……。


「……わかった。言う通りにしよう……。何でも話す」


 おい。

 どんな事されても口割らんのとちゃうんかい。


 でも、せっかくだ。

 聞けるなら聞いておこう。


「じゃあ、あなたはどこの誰で、どうして私を狙ったのか教えてもらおうか」

「ああ、わかった。俺は……俺は……」


 男は情報を流す後ろめたさからか、次第に声を小さくしていく。

 話す言葉を聞き取ろうと顔を寄せる私。


 そんな私に対して、男はかすかに笑った。


 その瞬間、私の首筋に背後から刃が当てられた。


「また会う事になるとはな……」


 背後から聞こえた声。

 恐らく、首筋に当てられた刃の主だろう。

 その声は女性のものだった。


「あの時の、女ニンジャか……」


 確証はなかったけれど、そんな気がした。

 ある方の感想コメントが頭から離れなかったのです。

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