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クロエ武芸帖 ~豪傑SE外伝~  作者: 8D
倭の国編
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十七話 クロエ忍法帖

(これまでのあらすじ)角樫房光から暗殺者に気をつけるよう言われたその夜、クロエはニンジャに襲われた。遺伝子に刻まれたニンジャに対する本能的な恐怖がクロエを蝕む。


 小刀と手裏剣を両手に構えた、冗談みたいにあからさまなニンジャを前にして。

 私は、抱き上げたすずめちゃんを畳みの上へ下ろした。


 すずめちゃんは今の騒ぎで目を覚ましており、下りてすぐに私の背後へ回った。


「変身!」


 叫ぶと、枕元においていた鞄。

 変身セットが弾けて布地を辺りに撒き散らす。


 襲撃者が何事かと怯み……。

 一瞬後、私の体には強化服が纏われていた。

 新たに組み込んでいた白狐の入ったホルダーが後腰うしろごしにつく。


 交渉ごとには必要ないと思っていたが、念のために変身セットを持ってきていたのである。


 黒一色の装束に身を包んだ私もまた、あからさまにニンジャのようであった。


 私は襲撃してきたニンジャに向けて、パンッと強く両手を合わせた。

 オジギする。

 ニンジャが何事かと怯む。


「ドーモ、クロエ=ビッテンフェルトです」


 ニンジャ同士の闘いにおいて、挨拶は基本である。

 これを怠るとスゴイシツレイにあたるのだ。


 この目の前のニンジャは挨拶をせずに奇襲を仕掛けてきたが、一度までならアンブッシュからの奇襲が許されているのである。

 だから問題ない。


 しかしながら、目の前のニンジャは挨拶を返さずに手裏剣を投げつけてきた。

 スゴイシツレイである。


 手裏剣をガントレットで弾く。

 次いで、小刀で斬りかかってくる。


 その斬撃をガントレットのソードブレイカーで受け止め、折ろうと捻る。

 が、小刀は思いのほか頑丈で、折れぬまま持ち主の手から放れた。


「くっ」


 ニンジャが呻く。

 その声は甲高く、どうやら女性のようである。


 そのバストは豊満ではなかったので気付かなかった。


 ニンジャは失敗したと見て一歩退く。


 その時である。


 天井の板を踏み抜き、もう一人のニンジャが降りてきた。

 こちらは男である。

 空中より落ちながら刀を振るってくる。


 私はガントレットのソードブレイカーで防ごうとする。

 しかし……。


 もう一人のニンジャは正確にソードブレイカーの根元へ刃を合わせ、諸共にソードブレイカーを斬り取ってしまったのである。

 ゴウランガ!

 なんというワザマエであろうか。


 着地したニンジャは私へ向けて、再度斬りつける。


 その時である。


 私の後腰で、チャキッと金属の擦れる音がした。

 咄嗟にそこへ手を回し、そして……。


 白狐を手に、ニンジャの斬撃を防いだ。


 防ぐどころか、ニンジャの刀が半ばで折れる。

 いや、折れたのではなく、白狐によって切断されたのだ。

 防御のため咄嗟に振っただけだというのに、恐るべき切れ味だ。


 その様子から不利と見て取ったのか、ニンジャ二人が逃走を図ろうとする。

 部屋のショウジ戸を蹴り破り、外へ出ようとするが……。


「はぁっ!」


 ショウジ戸の外にいた斉藤さんが刀を振って、男の方のニンジャを斬りつける。

 しかし彼のニンジャ動体視力は斉藤さんの不意打ちを捉え、冷静に身をかわして避けた。


 そのまま斉藤さんを通り過ぎ、庭で立ち止まった。


「ご無事か?」

「はい」


 答えてから、私はニンジャ二人に目を向ける。


 その時である。


 二人の他に、さらに四人のニンジャが姿を現した。

 私達の前にいるのは、計六人のニンジャ達である。


 その内の二人が鎖鎌を手に持ち、分銅を振り回していた。

 もう二人は何故か手ぶらである。

 チャドーの使い手だろうか?


 というか、そんな素直に出てきていいの?

 もっと忍ぶべきじゃないの?


 しかし六人がかりとは……。

 汚い!

 さすがニンジャ汚い!


「ここでじっとしててね」


 すずめちゃんが、私の言葉に頷く。

すずめちゃんを部屋に残し、私はニンジャ達のいる庭へ出た。


 その瞬間、飛んでくる鎖鎌の分銅。

 白狐で受けると、分銅がそのまま巻きついた。

 絡め取られて引かれるが、逆に力いっぱい引っ張る。


「うわぁっ!」


 鎖鎌を持っていたニンジャが声を上げて逆に引き倒された。

 白狐に巻かれた鎖を解く。


 何かが倒れる音がする。

 そちらを見ると、もう一人の鎖鎌ニンジャに刀を取られて倒れる斉藤さんの姿があった。

 白狐で鎖を断って助ける。


「かたじけない」


 斉藤さんが礼を言う。


 たった一人だけいる女ニンジャが手ぶらのニンジャへ目配せするのが見えた。

 もしかしたら、あの女ニンジャがこのニンジャを率いるリーダーなのかもしれない。


 手ぶらのニンジャ二人がそれぞれ手を組み合わる。

 いんというものだろうか。


 そして一人の足元が盛り上がり、巨大な蝦蟇蛙ガマガエルの形となった。


 うわ! 思った以上にフィクション寄り!?


 蝦蟇蛙がニンジャを乗せたまま、私に圧し掛かってくる。

 そんな蝦蟇蛙の腹にアッパーをブチ当て、殴り抜ける。

 その感触からして、どうやらこの蝦蟇蛙は土を集めて作った物のようだ。

 魔力を感じるから、これは魔法の類である。


 どうやらこの国で魔力を扱うのは、陰陽師だけじゃないみたいだ。

 忍者も陰陽師も秘匿性が高いから、魔力技術が広まらないんだろうな。


 蝦蟇蛙を殴り抜け、そのまま上に乗っていたニンジャの顎を強かに打った。

 ニンジャの意識が失せ、蝦蟇蛙が土に戻る。

 大量の土山がその跡に残った。


「びてんふえると殿!」


 斉藤さんに名を呼ばれ、私は振り返る。

 見ると、もう一人の手ぶらニンジャが口元に指で輪を作って当てていた。


 その指の輪を通して発せられた息が、炎に変わる。

 火炎放射じみた炎が私に迫る。


 それに対抗して、私は口から大量の水を噴き出した。

 水流は炎を消し、そのまま炎を吐いたニンジャを押し流す。


 ちなみに唾じゃないよ?

 魔力で作った水だからね。


 その時になり、女ニンジャが鈴を鳴らした。

 そして、小さな玉を地面へ投げつける。


 途端に玉が爆発し、あたりに黒煙が撒き散らされる。

 煙幕だ。


 私はすぐさま風の魔法で煙幕を散らす。

 しかし――。


 庭にはもう、一人として忍者の姿はなかった。

 気絶していた忍者も姿を消している。


 恐らくあの鈴は、逃走の合図だったのだろう。


 こうして私は、暗殺者を退ける事に成功した。


 なんて苦しい戦いだったのかしら。

 ニンジャとか妖怪とか宇宙とか、技や能力の頭に単語をくっつける作品が好きです。

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