表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロエ武芸帖 ~豪傑SE外伝~  作者: 8D
朱雀国編
137/145

十七話 即堕ち二年! 信じてフォローした劉が……

前回共に短いので、合体させて出せばよかった……。

 劉の動向を聞き、それから少しして本格的に劉は武装蜂起したそうである。

 それについて、王宮は今大騒ぎのようだ。


 漢麗様もこちらへ渡る暇がないほどに忙しいらしく、詳しく訊こうにも高呂とは会えていない状況だ。


 いずれこうなるんじゃないか、とは思っていた。


 自分達を虐げていた相手……。

 それも今まで手が届かず、見上げるばかりだった相手に報復ができるかもしれない。

 そう思えば、攻撃したくなる者もいるだろう。


 ここまではいい。

 悪政のツケみたいなものだ。


 けれど、問題はこの反乱が成功した時の漢麗様の処遇だ。


 漢宝なら漢麗様が傀儡である事にも気付いている。

 責任の在り処も宦官連中である事を理解しているだろう。


 何より、私との約束もある。


 ただ、この蜂起は民衆を御せなくなった結果のように思える。

 民意を抑えきれぬ事で蜂起となったのならば、あの時の約束も果たされるか怪しい。


 本格的に、漢麗様を連れて逃げる算段を立てた方がいいかもしれない。

 そんな事を考えつつ、日々を過ごしていた時だ。


 高呂が後宮へ訪れた。

 漢麗様を伴わず、一人で来るのは珍しい。


「クロエ。力を貸してくれ」


 開口早々に高呂は言った。

 その性急さに、事態の重さを感じた。




 高呂に連れられて向かったのは、玉座のある間である。

 玉座には漢麗様の姿があり、そこから見渡せる場所には各種の官が揃っていた。


 しかし……。

 前に見た時よりも数が少ない気がする。


「クロエ・ビッテンフェルト。参上いたしました」


 漢麗様の前方。

 玉座に繋がる低い階段の前で私は跪く。


「うむ。よく来てくれた。……圭杏」


 漢麗様の労いを受けると、そばに控えていた圭杏が私の所へ近づいてくる。


「貴様に勅を発する。謹んで受けよ」

「はい」


 何をすればいいのか? とは問わない。

 勅というのはそういうものだ。


 ただの命令ではない。

 それは絶対であり、発せられた時点で拒否権はない。


 とはいえ、謹んで受けたのだからやっぱり説明はほしい。

 まぁ、内容に心当たりはあるが。


「頼んだぞ、クロエ。人心を乱す、悪しき叛徒を鎮圧せよ」


 ほらね。


 勅と状況について詳しい説明があったのは、謁見が終わってからである。

 高呂が説明してくれた。


「倒官排帝。その四字を頼りに、叛徒どもはこの都へ向かっている」

「私は戦地にて、それを迎え撃てばよろしいのですね?」

「そうだ」

「私に与えられた権限と兵数は?」

「権限はない。ただし、お前だけに従う五千の兵を用意してある」


 総兵数がわからないから、五千が多いのか少ないのかわからない。


「他の部隊と比べればたいした数ではないが、皆私が選りすぐった精鋭だ」

「ありがとうございます。……私は期待されていると思ってよろしいのでしょうか?」

「無論だ。天子様と私、それに圭杏すら期待している。でなければ、五百程度の兵で前線に送られていただろうな」


 私を排除する目的でって事かな。


「圭杏は何故そんなに切迫しているのですか?」

「倉に備蓄されているはずの糧食、それに武装の半数以上がなかった」


 ん?


「帳面の上では存在していたはずのそれらが、すべて秘密裏に金へ変えられていた。無論、その金は朱雀王朝に還元されていない」


 えーと、つまり……。

 管理者が私腹を肥やしていたという事か。


「それが露見し、幾人かの官が出奔した。恐らくは劉に着くつもりなのだろう」


 切迫しているのは圭杏ではなく、朱雀王朝全体だったか。




 私は後宮に戻ると、すぐにアードラーを探した。

 私室で彼女を見つけると、そこにはイェラとすずめちゃんも居た。


「漢麗様の用事はなんだったの?」


 そう問いかけるアードラー。

 私は部屋の戸を閉めて、彼女の前に座る。


「それについて、話しておかなくちゃいけない事がある」

「嫌な予感がするわね」

「あまり話したくないとは思うよ」


 私はそう前置いて、今の朱雀王朝の状況と受けた勅について話した。


 アードラーの難しかった顔は、話が進むのに比例してさらに難しくなっていった。


「私も行くわ」

「いや、アードラーには家族を守って欲しい。それに、漢麗様が許すかどうかもわからないし」

「大丈夫なの?」


 正直、何とも言えない。


「大丈夫だよ。何があっても、私はここに帰ってくる」


 けれど、正直に答えればアードラーは何があってもついてくるだろう。


「だから、私が帰ってきた時のためにすぐ動く準備をしていてほしい」

「……ここから逃げるという事?」

「場合によっては」


 聞いている限り、朱雀王朝が破れるという可能性は低くない。

 個人の奮戦でどうにかなるとも思えない。


「最悪の事態は考えなくちゃいけない。そして、その時にできる最善も……」

「……わかったわ」


 もう少し言い募るかと思ったけれど、アードラーはあっさりと引き下がった。


「あなたの言う家族には、漢麗様も含まれるのかしら?」

「うん。そうだね」


 アードラーは私の考えをよくわかってくれてる。


「こちらの事は任せておいて」

「ありがとう」


 後顧の憂いはなさそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ