表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/145

終章 未知への境界線

  森の中を進む間。

 体力の戻りきっていないアードラーと、元々体力のまだ養われていないすずめちゃんは何度か足を止めたが、その都度私が負ぶって進んだ。

 その甲斐もあり、前に聞いていた通り八日の道程で私達は森を踏破する事ができた。


 そこでここまで送ってきてくれた女戦士達と言葉を交わして、別れを惜しむ。

 最後に、オルタナと言葉を交わす。


『おまえをむらへまねきいれたとき、こうなるとはおもわなかった。いろいろなものがかわっていった。わたしのこころも、むらのありかたまでも。それもよいほうこうにかわったとおもう』

「たまたまだよ」

『どうであれ、おまえのなはこのむらでながくかたりつがれるだろう。まじんクロエ』


 すごい肩書きをもらったもんだ。

 でもそれは私だけじゃない。


「そっちもでしょう。勇者オルタナ」

『そうだったな。いまとなっては、それほどこころもおどらない』

「どうして?」

『わたしのこころが、すでにむらのそとにあるからだ』


 それって……。


『ニナタがのぞむなら、わたしはいずれふたりでこのむらをでようとおもう。ここにはない、おおくのものをみつけたいのだ』

「そう」


 ニナタちゃん自身は、どうやらその気になっているようだけど。

 私は彼女が最後に見せた笑顔を思い出してそう思う。


『わたしたちはまた、いずれどこかであうことになるかもしれないな』

「わかった。その日を楽しみにしているよ」


 差し出された腕をがっちりと掴み、オルタナの言葉に応える。



 森が途切れた先には、草原が広がっていた。

 私達は、そこへ一歩踏み出す。

 次々に、歩を進めていく。

 一度立ち止まり、振り返った。


 オルタナ達はまだ、こちらを見ていた。

 森と草原の境目に壁があるかのように、一歩も草原に踏み出さず私達を見送ってくれる。


 私は彼女達に手を大きく振った。

 みんなが、手を振り返してくれる。


 今はあそこまで……。

 でも、オルタナの世界はいずれさらにあそこから広がっていくのだろう。


 そしていつか……。

 楽しみだな。


 そう思いながら、私も未知の世界へと歩き出した。

 大事な家族の待つ、家へ帰るために。

 密林編はこれで終了です。

 本当はかなり短い話の予定だったのですが、思っていた以上に長くなりました。

 不思議。

 次の話とセットで出す予定だったのですが、密林編以上に長くなる事は明らかなので密林編で区切りとします。

 続きはまた、いずれ。

 気長に待ってくださるとうれしいです。




 ある地域に残る伝承に、魔神クロエという名が出てくる。

 これは魔神クロエと勇者オルタナが、村を支配していた邪神を退治する内容のものとなっている。

 魔人という称号を賜った人間はその地域に多く見られるが、魔神という称号を得た者はこのクロエだけである。

 そして正確な時期については不明だが、同じ時期に世界各地に「クロエ」もしくは「ビッテンフェルト」という名が多く見られるようになる。

 これら全てが偶然の一致であると著者には思えない。

 各地に残る逸話にクロエという名があれば、それはクロエ・ビッテンフェルトの事なのではないかとそう思えるのだ。

 ともすれば、かの有名な大天使クロエルもまたその内の一つなのかもしれない。

 流石にそれは考えすぎだろうか?


『クロエ・ビッテンフェルトの伝説』より抜粋。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 魔神クロエ。その拳は空を裂き、その蹴りは大地を割ったという・・・ 「燃え上れ私の白色!クロエ流星拳!!」 とかやりだしそう。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ