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俺が拾った武器に宿った精霊がドS  作者: 双葉
第一章 『拾った武器と』
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第一章10 『レヴィルタ』







「セイレン村から結構歩いたけど、まだ着かないね」


 村を出たのは夕方頃、空も夕焼け空から星空へと変わった、無限に広がる星は幻想的で、月を神々しく魅せる。

 後ろを振り向けば、村の明かりが薄らと見えている、暗い夜道は月明かりのおかげでハッキリと森へ続いているのがわかる。



「森は見えているんだ、すぐに着くよ」



 そんな会話をした後、ドライグはふと考えていた事を口にする。


「レヴィルタ国って森が国境になっているって言ったよね?」


「あぁ、そうだね」


「森だと色んな場所から侵入されるんじゃない? 国境警備の意味ってあるのかな?」



 大きな森では無いものの実際は死角が多いのも確か、しかし地図を見る限りでは検問所はその一箇所のみ、何か理由があるのかそれとも魔法による罠を仕掛けているのか、ドライグは不思議な気持ちでエヴォルドに質問をする。



「村でも話したけど、王都レヴィルタは元々は村だった、セイレン村とは違って貧困層の割合が高く、商人の流れも悪かったらしい、ある日その村に目をつけたレヴィルタは村を買取り、国を作った」


「でもさ、それって村人達も反対とかしたんだろ? 自分の生まれ育った場所が違う人に変えられる訳だし」



 例え小さくても生まれた場所が変わると知れば、少なからず反対する人間も居るはず、小さな村で育ってきたドライグも、生まれた場所は違えど長く居た事には変わりはなく、今でも故郷だと思っている。


 大切な場所を知っている村長から知らない人間が統治し始めるとなると、不満や心配事がフツフツと湧き上がってくる。


 しかしレヴィルタ国はそれを成し遂げた、エヴォルドの話によれば元々の村民達の半分以上が今でも反感を買っているらしい。

 それを上手く黙らせているレヴィルタはどんな政策を行っているのか。



「村から国に変われば流通量が増える、そうなればお店に置く商品も増えていく」


「でも元は貧困しているのに増えても買えないよね?」


「そこなんだ、レヴィルタはそこを突いたんだよ」


「と言うと?」



 エヴォルドの説明はこうだ。

 村から国に変え、外から来る新規の人間を取り入れ、さらには村民を城の兵や給仕として使えさせ給金を渡す、話を聞けば国の成り立ちとしては普通な事だ、働いた者にはお金を渡してそれを自分の為に使う、それが国を回す為の行動。


 なら普通の国と一緒な上に、村民達も反抗的になるとは思えない、ドライグは少し分からなくなる。



「新規の人間を国民として生活をさせる、村民は反対を続けるがそれはいつまでも続かなくなる」


「まさかそれって……」


「弾圧ね」


「弾圧って……」



 王政、王とその下の階級を持つ側近等が国のルールを作っている事。

 レヴィルタは古い人間を捨て駒とし、新しく入る人間を国民とし生活させる、さっき言ったことではあるがこれは所謂(いわゆる)やり直し。

 詳しくはまだエヴォルドにも分からない事で、今話してくれた事も村を出る前に父親に聞いたばかりの内容。


 エルザライトが口にした『弾圧』は酷く、惨い(むごい)ものであり、労働を強制させ休みを与える事がほとんどない。


 反感を持っていても、それをさせないようにする。



「それが王のすることなのかよ……」


「話を戻そう、森の警備が雑な理由は弾圧による強制労働だ、警備は村民が行っているせいで死角がありふれている、警備が居ない場所については理由は知らない、僕が知っている事はこれで全部さ」


「…………」



 ドライグは何も言えず、皆も森へ向けて歩く足音だけが耳に入る。

 最初に聞いた話から深みに入ると、事実は聞くに耐えない話で複雑な気持ちになる、外出聞いた話でここまで酷いならば中は一体どうなっているのか、見たくない光景が目に焼き付く可能性は十分にある。


 平和な村で育ったドライグ、最初の村から次の国へ行くには重すぎる話、ドライグ自身好奇な視線に晒された事はあっても、身体を打たれたと言う事は無い。



「あのさ」


「下僕、お前が何を言うのかわかるわよ」


「例えそうでもさ!?」


「お前はまだ戦えない、知識が無いのよ。それなのにまさか救いたいとか考えているの?」


「くっ……」



 無謀と勇敢を勘違いすると結末は『死』

 握る拳は手のひらに爪痕が残る、実際に見た訳では無いがドライグの頭の中では、赤黒い何かがドロドロと流れているのがわかる。


 エルザライトの言う通り、一瞬でも救いたいと考えてしまう、戦いの知識何てものはドライグには無い、下手をすれば旅はそこで終わりを告げエルザライトも消滅する。



「ドライグ、君の気持ちはわかるよ、でも僕達も居ることを忘れちゃダメだ。もう1人だけの旅とは違うんだ」


「そうだよね、ごめん」


「あ、あの」



 ずっと黙って歩いていたヘルテートは、エヴォルドの右側から顔だけをひょこっと出し、ドライグに話し掛ける。

 その動きでツインテールがフワッと揺れる、エヴォルドの手を握り歩いてる姿は兄妹そのもの。



「どうしたの?」


「あ、えーと、大丈夫ですよ! きっと」


「な、何が?」


「エルザライトさんも私も居ます、何かあれば助けますし!」



 グッと親指を突き立てるヘルテート、それを見たエヴォルドも同じ様に親指を突き立てる、精霊であるヘルテートと人間のエヴォルドは本当の兄妹では無いが、絆がそうさせているとドライグも心で暖かな気持ちになる。


 ドライグの左側を歩くエルザライトの手の甲に、自分の手の甲が少し当たる、チラッとその姿を見る。


 月明かりを浴びているエルザライトは、ワインレッドのドレスを煌めかせ、軽くウェーブが掛かった髪は情熱に満ちて、その瞳は狩りをする猛獣の様に猛々しい真紅。



 ――触れてみたい。



 ヘルテートの様に手を繋いで見たい、心臓が少し速まる、手には汗が少し滲み出る、何でもない相手ならそんな風にはならないだろう、しかし相手はエルザライト、高嶺の花、高貴なたたずまいに躊躇する。


 ましてや契約者、何かあるかもしれない。

 だがドライグは思い切って手を少し伸ばす、あとちょっと伸ばせば、



「着いたわよ」


「へ!?」



 気が付けばかなり歩いていたようだ、検問所までは少し距離はあるが、ここからは脇道を歩いて国に入る事になる。


 1人何かの一大決心とまではいかないが、考え込んでいるうちに到着してしまったようで、エルザライトが到着を知らせる声にビックリし、手を引っ込めてしまった。


 心臓はドキドキしているが、手汗はゆっくりと引いていった。



「さ、ここからは警戒しながら行こう」


「あ、うん」


 兄妹はドライグから預かっている古い地図を見ながら先に進む、それを静かに追いかけようと歩き出した時だった。


 前に踏み出した身体が後ろへグイッと持っていかれる、服の首元を誰かに引っ張られ、ドライグは一瞬息が出来なくなるが直ぐに正常になる。



「ゲホッ!! な、何するんですか」


「意気地無しね」


「へ?」


 冷たく、鋭い眼光をした彼女にそんな事を言われ、暫く呆然と立ち尽くす。

 言われた意味を理解する為に考えたが、それよりもドライグより先に歩き出したエルザライトを慌てて追いかけた。



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