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不老不死のリリィ

作者: 夢見 歌鳥

 むかしむかし。ある村にリリィというとても美しい娘が住んでいました。性格は明るくて気立てがよく、真面目に働く娘だったので、村人達からも好かれていました。


 ある日、美しい娘の噂を聞きつけてお城から従者がやってきました。王子様の結婚相手を探していたのです。その日のうちにリリィはお城へ連れて行かれ、王子様と会いました。すぐに気が合ったようで、一緒にお話をして、食事をして、夜にはダンスを踊って二人は仲を深めました。明日にでも式を挙げようと、結婚式の準備が始まりました。


 しかし不幸なことに、リリィは当日階段から落ちて死んでしまいました。突然の事に王子様は悲しみ、結婚式ではなく葬式が盛大に執り行われました。その日は晴れから一転して雨が降り、天もリリィの死を悼んでいるようでした。

 その後王子様は部屋に閉じこもるようになり、毎日泣いて暮らしました。


 死んだリリィが降り立ったのは、冥王が治める死者の国。ここに来た死者は罪を償いながら生まれ変わる時を待つのですが、リリィは生前の働きぶりが気に入られ、特別に冥王の神殿に仕えることになりました。

 どんな仕事も嫌がらず真面目働いたので、冥王のお世話係になりました。冥王はすっかりリリィの事が好きになり妻に迎えようとしましたが、リリィは愛する人を裏切れないと断り続けました。


 死者の国の生活にも慣れてきた頃、いつものように食事の準備をしていると、リリィの体が光輝き浮かびあがり、光の玉になってすうっと消えてしまいました。冥王は慌てて部下達を使って死者の国中を探しましたが、見つかりませんでした。


 リリィが目を覚ますとそこは小高い丘の上。目の前には王子様がいました。王子様は涙を流しながら、リリィを強く抱きしめました。

 実は王子様はリリィが死んだ後、ずっと死者をよみがえらせる方法を研究していたのです。それは金銀宝石を魔法で溶かし合わせた液と、よみがえらせたいという強い想いを、ドラゴンの血で書いた魔法陣の上に置いた死者の体に注ぎ込むことによってよみがえらせるというものでしたが、成功したのは世界で初めての事でした。


 二人が手をつないでお城へ帰ろうとすると急に空が黒い雲で覆われ、地の底からおどろおどろしい声が聞こえてきました。リリィは冥王の声だと気が付きました。

「おのれリリィ裏切ったな。私はお前を許さぬぞ。お前から死の安らぎを永遠に奪い、二度と死者の国へ入れぬようにしてくれる」

 冥王は来るものは拒みませんが、自分の元を去ろうとするものには容赦しません。死を許さないという、最も恐ろしい呪いの言葉をリリィに吐いたのです。


 冥王が去ると空は何事も無かったかのようにまた晴れ渡り、王子様は大丈夫だと言い聞かせましたが、リリィはもう恐ろしくてたまりませんでした。

 冥王の呪いは何年か経ってからその効果がはっきりと現れてきました。リリィは若く美しいまま歳をとらないのです。刃物で傷をつけても、すぐに治ってしまいます。海へ身を投げ込んでも、気絶して浜辺へ打ち上げられるだけでした。

 それでも時間はどんどん過ぎて、王子様はもちろんのこと、自分の子供も孫もみな先に死んでしまいました。どんなに悲しんでも、謝っても、同じ所へ行くことは叶いません。


 時代が移り変わって国は滅び、リリィは旅に出ました。どこにも留まることのできない、終わりなき放浪の旅です。

 今日もどこかで、仕事をしていることでしょう。もしかしたら、あなたの住んでいる町にいるのかもしれません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 余計な感情や修飾を省いた、すっきりとした文章に好感を抱きました。 無理矢理な展開ではないのに、どこか斬新でハッとさせられました。 [一言] はじめまして。夢見 歌鳥様。 『私が異世界転生…
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