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第一章

ゲームセンター。通称、ゲーセン。

今や手軽に暇を潰すことができる場所として若者に親しまれている遊び場である。

最近はカラオケ、ボーリングなどなどの別の遊び場とリンクしたゲームセンターも多い。

まあ、私―――――いちゲーマーの雨水円からとしてみれば別にそんな機能的なゲームセンターでなくとも良いわけである。

私が望むのは格ゲー。所謂格闘ゲームの台数、対戦相手の豊富さ。後、シューテイング、体感ゲーム、音ゲーがあることである。

プリクラやクレーンゲームは別にいらない。

割合で言うと格ゲー5、シューテイング1、体感1、音ゲー2、クレーンなどなど1、であってほしいわけだ。

だが、そんな私の希望に叶ったゲーセンはそうそうない。

私がいつも通っているゲーセンはと言うと―――――評価でいうとまあまあ。何か物足りない気もするが、ここ『アミューズメント・ハイスタ』が一番家と学校からの距離に近いから交通の便がいいという点であるため、利用はもっぱらここである。


そして――――今日も私は瑞希を連れてゲーセンを訪れた。

「やっぱりゲームセンターはタバコの匂いがすごいね」と瑞希。

「んー、私は慣れれば平気かな?」

「あははっ、私は絶対に慣れないけどね。慣れって恐いね」

そんな会話をしながら私たちはゲーセンのドアを潜った。

さあ、さてさて。

これからが今日の私の始まりである。

手前に設置されている、体感や音ゲー、クレーンゲームのスペースを抜ける。そして奥にあるビデオゲームコーナー。つまり格ゲー、シューティングゲームが設置されているコーナーへと向かった。


「ねー―――」

「ん?」

可愛らしくこちらを見てくる瑞希。

「いつも思うけどさ、なんで体感やクレーンがどのゲーセンでも店の手前にあって奥にはビデオがあるのかな?」と、ふと最近よく思った疑問を聞いてみる。

「んー、やっぱり、はじめてくる人はビデオよりも体感とかで遊び人が多いからじゃないかな?」

「いやいや、そーかも知れないけど、私が思うに値段の違いじゃないかな?ビデオは50から100円、レトロゲームは安りから50円2プレイとかあるじゃない。けど、今の体感は1プレイに200円、高い奴は300円もするじゃない。あと、カード制が多いからお金がどうしても懸かってしまう。店はそれを狙っているじゃないのかしら」と私が思う意見を述べる。

「なるほどね。確かにクレーンゲームとかは一度しだすとついつい2000くらいつかってしまうよね」

「取るまでやらないと何か負けた気がして堪らないからね」

私もまだ未熟だったときはついついあのBOX相手に剥きになったものだ。あまりにムカついたので蹴って警報を鳴らしたこともあったような。

「――――…………」


「さて―――――」

私は財布を取り出して中から百円玉を一枚取り出した。

そして両替機に入れて50円玉二枚へと替える。

そして、いつものごとく格ゲーの台に座り、さきほど両替した50円玉を投入する。

隣には瑞希がちょこんと椅子に腰を掛ける。

「まどちゃん、最近はそればっかりだよね」

「んー、ばっかりって訳じゃないけど、このゲーム良ゲーだしコンボの追求、立ち回りの練習と色々やってもやり足らないくらいだからね」と私はキャラを選択しながら返答する。

良ゲーとは好良のゲームのことである。良ゲーに対してクソゲーがあり、今出ている新しいゲームの大部分はクソゲーにあたる。良ゲーは近年ではまれにみるバランスの取れたゲームのことを言う。

最近は変に一撃必殺技を入れたり、妙な回復システムと色々なクソゲーが出ている。

ちなみに今私がやっているのは良ゲー中の良ゲーである。

「私は良ゲーが好きだしね」とステージ1のCOMを颯爽と倒して私は言う。

おおっ!と瑞希が小さく驚いてみせる。

「でも、この前そこのクソゲーって言ってたゲームやりながらクソゲーやりながら、このゲームおもしろいって言ってなかった?」

瑞希は後ろに設置されているゲームを指を指して言った。

「ああ、それね。まあ、確かにクソゲーは楽しいよ。良ゲーもクソゲーも両方楽しいけど初心者がやるならクソゲーの方が楽しいんじゃないかな?」

「えっ!?クソゲーっておもしろいゲームもクソゲーなの?」

びっくりした風に聞いてくる瑞希。

「うん。まあ、クソとか言いながら面白いんだよ。中にはクソゲーマニアもいるみたいだし」

「へぇ――――。なんか面白いね」と関心の念を入れる瑞希。そして、いつものように可愛らしく笑う。

「ははっ、瑞希は可愛いなぁ」と茶化してみる。

「ん?もぅー!まどちゃんたら、いつもそう言って馬鹿にする!」口に膨らませる瑞希。

ははっ、それが可愛いって言っているのに、まったくこの子は可愛いなぁ。

私はゲームをしながらそう思った。

その時のステージは既に5を回っていた。



「んー、そろそろかな」

私は椅子を座り直して気を入れ直す。

「そろそろって?」と瑞希は尋ねてくる。

「ん、ああ。そろそろ乱入が入る頃合いかなって思ってね」と私が言うと。

チャリン。

クレジットの追加音が鳴る。

「ははっ、そう言ってたら、本当にちょうどだね」

どうやら乱入者が出てきたようだ。

「対人戦?」

「そうそう。おっ、この人、そのキャラを使うのか?それはプレイヤーとしての技量がためされるよ」

と私は画面に向かって言った。

無論。向こうに座る乱入者には聞こえるはずもない。ゲームセンターは色々なゲーム音が鳴り響いているために小さな音とかにはまったく気がつかないものである。ゲーセンから出るときにはいつも携帯の着信があったりする。

「まどちゃん、勝てそう?」

「ん。1ラウンドやってみればわかるよ。まあ、私は大抵の人には負けないけどね」

「うわぁ、まどちゃんいつも強きだね」

「うん。まぁ、あっ。試合開始するから、ちょっとゴメン」

私はそう言って画面に集中する。

1ラウンド。と言うか、開始10カウントで私は勝ちを確認した。

相手ではない。

基本コンボはしっかりしているが、このキャラは応用コンボがあって生きるキャラである。できないなら話にならない。

あと、立ち回りが弱い。やり込みがまったく足りてない。

私に勝つには、あと2年はブッ通しでやり込まないと。まあ、二年やっても、この私に勝てるとは思えないが。

「ふー……………」

私はラウンド2が始まる前に肩の力を抜いた。

「どうだった?」

「余裕」と当然と言わんばかりに言う私。

「ラウンド2は瑞希がやっていいよ」と私は席を譲る。

「えっ?でも私この前にまどちゃん家で少しやったくらいだよ」

突然の私の行動に慌てる瑞希。

ははっ、私は単に慌てる瑞希を見たかっただけなのかもな。と内心思う私。

慌てる瑞希に萌ぇ。

「大丈夫。結構張ると思うよ」と背中を押す。

「うーん、なら………。負けたらゴメンね」

瑞希がスティックを握ると同時にラウンド2が開始された。

「あっ!はっ!ああっ!!」

「………………」

私は無言で横から瑞希を観察。

初心者同士の戦いは見ていて飽きないが、私としては戦いでダメージを食らうたびに声や表情に出す瑞希を見るほうが面白かったりする。

「ああっ!…………ゴメンまどちゃん。負けちゃった」と本当に申し訳なさそうに謝る瑞希。

「いいって。ラウンド3でコイツの負けは確定してるわ」

そう言って席を再び交替する。

ラウンド3は手加減無しである。

開始15秒で幕を閉じた。

「わぁ!すごいねっ!」

「まあ、瑞希ほどじゃないけどね」

私がそう言うとえっ?っと首を傾げる瑞希。

私は対して

「ははっ」と笑った。まったく可愛い奴だ。

私はそう呟いた。


そして、そのクレジットは25WINSするまで続いた。

辺りには人だかりが出来て、試合見物人がたくさん集まった。

まあ、いつものことだ。私はここらでは有名なプレイヤーであるから。

「まどちゃん、今日も調子いいね」

「まあね」と相づちを打つ私。

そう何回目になるか、そう言う会話を瑞希としていると――――――。

「あの―――――」

さきほど負けたプレイヤーが私に声を掛けてきた。

「何?」

私は平然と対応する。

向こうは大人、それか大学生ってところだ。

しかし、私はタメ口の口調で対応する。

「いや、すごいなぁって思って」と男。

当たり前だ。器が違うからね。そう思ったが口にはしない。

「まあ、やり込んでるから。あなたは何使ってる人だっけ?」

「あっ、俺の使用キャラはナギです。ナギ使いですよ」

男は自らをナギ使いと称する。私はその男に対して、ナギ使いって呼ぶには、ほど遠いけどね――――と思ったけど、口には出さない。

「ああ、さっきの前に入ったナギか。でも、あれじゃダメよ」

「ダメですか?」

「うーん、むしろダメダメよ!まったくキャラの特性を生かし切れていないわ。あれじゃ、キャラが死んでる」とまったく手加減無しに色々と告げ込む私。

「死んでる――――ですか?ひょっとしてキャラ選択でもミスってます?」

「うーん、まあね。でも要はキャラ愛よ」

「そうですか。よかったら今度、1から教えてくれませんか?」

すると、男は私にゲームの指導を願ってくる。

「別にいいわよ」と返す私。

指導なんてゲーセンに行けば、しょっちゅうやっていることだ。

だから指導対象が一人、二人増えても特に変わりはない。

そう気軽に承諾をした私に――――――。

「あの!できたら僕も」

「俺も!」

「よかったら僕も」と周りに集まったギャラリーが一斉に詰め寄ってきた。

「―――――…………」

「ゲームセンターだとアイドルだね。まどちゃんは…………」と瑞希は隣で呟いた。

うーん、これが学校とかなら良いわけだが―――――いや、学校でも嫌か。うっとおしくて気持ち悪い。まあ、別に誉められる分には悪い気はしないのだけど――――。



それで結局、夜の9時を回るくらいまでゲーセンで時間を潰すはめになり、ただ今帰宅中。

瑞希とは、つい先程に別れを告げたばかりである。

つまり、今は一人で帰宅している。

ゲーセンの空気とは打って変わって、静かで綺麗な空気である。

私は空を見上げて息をついた。ああ、やっぱり――――――ゲームって最高!



「ただいま」

私が家の敷地を跨いだのは、10時過ぎのことであった。

「ああ、姉貴。おかえりー!!」

扉を開けると妹の奈保がいきなり抱きついてきた。

「うわっ!」私は瞬時にうまく抱き上げて倒れそうになった体のバランスをとった。


雨水奈保。

雨水家の次女にあたり、円の三つしたの女の子。

歳は13。中学一年生である。ちなみに一年三組。

髪はかなり長く。もう少しで胴体を越して足までたっする長さである。

顔立ちが中1にしてみればかなり整っていて、まるでフランス人形のようである。

おそらくクラスでもかなりもてているだろう。我の妹ながら可愛い奴だ。

ちなみに趣味は――――――本人所謂私らしい。

年から年中、私にべったりくっついている。そのためゲームをよくやる。二人で格ゲー、アクションは毎日の日課と言えよう。

性格は普通の人に対してはそれなりに普通。まあ、天然からかなり入るから普通では無いとも言えよう。

ちなみに私の前になると―――――もう、可愛くて、可愛くて。奈保は可愛さの宝石箱みたいなものだよ!!

まあ、可愛さの宝石箱って自分で言ってて意味わかんないけど。


「姉貴!今日はどうだった?」抱きついたまま、いつもの質問。私がゲーセンから帰ると私の対戦成績を知りたがる妹。

「えーっと、30WINS近くまで行ったかな?あと、帰る前に音ゲーやってスキルが2上がった」と本日の成績を述べる。

「ずこーい!さすが姉貴!大好き!」

そう言って奈保は頬を擦り寄せてくる。

凄いの後に大好きって意味が掴めない。しかし、まったく―――――我の妹ながら可愛いやつだ。

私からも頬を擦り返したいが、しかし!

奈保を私から離して置いた。

「奈保、姉ちゃん、今たばこ臭いからダメだよ」という理由である。

「うう!なら部屋で待ってるからね!お風呂急いでね!」

「はい、はい」と愛想笑いで言う私。


結局、私は20分の入浴で上がった。

最近の女子高生が20分入浴?と、友達に言えば、絶対にそう言われてしまうだろう。

瑞希に言わせれば20分は髪を洗うときに使う時間であるらしい。

まあ、彼女の場合マイペース過ぎるだけかもしれないが、さすがに20分入浴は一般的に考えて女子の入浴時間ではないらしい。

まあ、私として見れば、時間を掛けるよりも早く上がって、ゲームをやる時間に注ぎ込みたいわけだ。

さて、今日も奈保と布団に入って格ゲーでもしよっと―――――。

私は自室へと上機嫌で向かって行ったのだった。



最近のゲーム。それは妙に凝っているものが多い。

しかし、私に言わせると変な拘り方である。画質、映像にだけものを言わせた作品や、以前のRPGには無い奇妙なシステムを盛り込んでいる。

恋愛シュミレーションもRPGシュミレーションと合作した作品など様々なジャンルの分野のゲームが変化している。

しかし、やはり原点は初期なのだ。私は最近出ているゲームに飽き飽きすることがある。

だから私はゲーセンに逃げ込んだのかもしれない。ゲーセンのゲームはあくまで対戦である。対戦というものは不思議で飽きることはない。勝っても、勝っても、更に極みがある。

それが私を虜にしたゲームセンターマジックである。でも、最近は――――――連勝、連勝、連勝と負け知らず。

もう、私がこのゲームにおいて一番なのか?上に立つ人間はいないのか?

そう思ってしまい―――――何か物足りなさを感じる。

私が強すぎるのがいけないのか?私が天才的なのがいけないわけ?

最近の私はそんなことを考える。



「でさ、うちのお母さんときたら―――――」

学校の昼休み。

瑞希と弁当を一緒に食べている。

瑞希は良く自分から自分のことを話す。

「ところで、まどちゃんは昨日の夜は何してたの?」と唐突に話が切り替わる。これも瑞希ならではの技である。前の話はこれで終わり?みたいな感じにさせつつ、新しい話題を持ってくる。まあ、これには慣れが必要だ。瑞希とは小さい頃からの縁であるため私はとっくの昔に慣れてしまっている。

「うん?昨日の夜――――奈保と一緒に格ゲーしたかな」

「そっか、まどちゃんと奈保ちゃんって仲が本当にいいよね」

「だね」

これは、あっさりと認める。普通の姉妹や兄弟なら、そんなことない、と反発の声を上げているところだろう。

だが私たち、雨水姉妹は本当に仲がいい。だって、奈保ったらかなり可愛いんだから!

仕方がないよ―――――うん。

「でも、いつでもゲーム、ゲーム、ゲームだね。今、お弁当食べている時でも携帯ゲームだし」

瑞希は半ば呆れたように携帯ゲームに没頭している私を指摘する。

「うん。最近の携帯ゲームってすごいのよ。1世代前のTVゲームをこの小さなゲームに表現できるし、メモリーステッィクしだいで中の容量も変わるし、仕舞には自作ゲームですら入れれる始末よ」

「うーん、何か良く解らないけど確かにすごいよね。画像が綺麗だもん」

「瑞希も買えば?おもしろいわよ」

「それもいいね。だけど、この前に服買って、もう今月はお金が厳しいから」

「そっか。私にしてみれば服なんかにお金なんて出したくないけどね」

まあ、これは感性の違いだ。それに、どちらかというと瑞希の使い方の方が一般女子高生的には合っていると言えよう。

「でも、私はまどちゃんみたいなのがいいな。ゲームセンターのプリンセスだよ。やっぱり凄いよ」と私を誉め讃える。

「久々に聞いたわ。プリンセス」


バトルプリンセス。

これは私、雨水円が初めて地区で行なわれている小さな格闘ゲーム大会に出て与えられた称号である。

プリンセス。

私はこの響きは嫌いではなかった。弱者の上に立ち一人の女性王者。

まあ、天才的な私だからプリンセスなんだよ。

と、自己解釈した私。

「最近のゲーマーは温いからね」

「あははっ、まどちゃんが強すぎるんだよ」

「あら?そうかしら?―――――まあ、それもそうね」

私は冗談を言うように笑ってみせた。

まあ、内心では私に勝てる人間はもういないわよ!そう思っていたりする。

すると―――――。

「まどかちゃん!」と私を呼ぶクラスメートの存在に気付いた。

「何?」と私。

「七組の越岩君が呼んでるよ」

「コイワ?瑞希誰か知ってる?」

聞き覚えの無い名前。

「ううん、知らない」と首を振る瑞希。

「とにかく行ってきたら?知ってる人かもしれないし」

「ああ、うん。なら、ちょっと行ってくるわ」

そして、私は席を立ち、廊下へと向かった。


「えっと、君が越岩くん?」と疑問系で質問。

廊下に出て、実際に越岩というやつの顔を見たが、やはり見覚えはなかったからだ。

顔は、それなりに良かった。このクラスの男子と比べると一番になれるのではないのか?と思うくらい。

「あっ、ああ!」と何故か緊張しまくりで返事を返す、越岩というもの。

「えっと―――――何かしら?もしかして私の美貌に惚れた?」

いつもと変わらぬ口調で冗談を言う。初めて会った人にコレはないかと思ったが。

すると―――――。

顔中赤面する越岩という男性。

そして。

「そうだ!俺は昔からおまえが好きなんだよ!」

そう突如に告白をされてしまった。

「――――――。はぁ―――――?」

私は本気で?みたいな呆気にとられた顔になった。

「ええっ―――――と。ええぇ!?」

予想外。私の感は鋭い。投げ、あばれ読みは人一倍である。

まあ、これとそれとではどうやら話が違うらしい。

「ええっと、本気?」

間違っていってるのではないのかと質問。瑞希なら解るが私でいいの?

まあ、私もプリンセスと呼ばれた女。顔は美しいでしょうね。

と、自分を評価している。が―――――。

このように顔も知らない人に告白は初めて受ける。

「本気だ!」

どうやら冗談ではないらしい。

「さっき昔からって言ったわよね。昔から私を知ってるの?」

私はあなたを知らないけどね。

「ああ」

どうやら知ってるらしい――――――。

「俺はおまえが好きなんだ!」とはっきりと言われてしまう。

どうやら、かなり真面目な男らしい。普通は、こんなはっきりと告白は言えないものであるだろう。

まあー、でも…………。

「残念だけど越岩とか言う人。私はあなたのことなんかまったく知らないし、とくに興味があるわけでもない。私が興味を示すのは私よりもゲームがうまい人くらいよ」

私ははっきりと述べ切った。

しかし、これは普通の発言ではない。普通の人なら引いてしまう。ゲームに命を注いでいる私なりの告白の断り方だ。

興味無し。

本当に興味が無い。普通の男が、この私に吊り合うはずもない!

それが私の意見。

「――――――」

越岩という男子は唖然としていた。

あまりに直球に行き過ぎたのかと少し反省。さすがに好意を持って告白までしてくれた人に興味がまったくないは無かったか?

そう思ったが…………。

「さすがだ!」

予想外のことば。

「はあ?」

今度は私が呆気に取られた。

「それでこそ雨水さんだ!だから俺は諦めない!」

「―――――…………」

何だか知らないが、かなり気に入られているみたいだ。

「でっ、でも、さっき言ったでしょう?私はあなたなんか興味無いって!」

「だからだ!勝負しようぜ!雨水さん!」

なんだか解らない方向へと話が進展していきそうであった。



「あらあら、まどちゃん、そんな面白いことになってたの」

放課後。

ただ今、教室内で瑞希と、昼休みの件について会話中である。

「面白くないわよ。誰だか知らない人に告白されると引くわよ、普通―――」と私はうんざりと答える。

「あははっ、でも、まどちゃんはその人の決闘を受け入れたんでしょう?」と笑顔で言う瑞希。

はあ―――――。

そうなのだ。結局、私はあの越岩とかいう人と戦うことになった。

無論、リアルファイトなどではない。男と女が戦ったら大抵、力の差で負けてしまう。例外は男が貧弱であるか、女が強いかくらいである。

よって、フェアに決闘と言ってもあくまでゲーム。格闘ゲームの話である。ま、私と格ゲーで戦うってのもフェアでは無い気もするが――――ま、よしとしよう。

「はあー、こんなことならゲームで私に勝つ人間にしか興味がないみたいな発言するんじゃなかったわ…………」

「でも、まどちゃんなら負けないでしょう?」

「ま―――そりゃ、当たり前でしょう」

自信満々で言う。

「ならいいんじゃない?」と何とも気楽な発言をする瑞希。

「やよ、めんどくらいじゃない」

「あははっ、まどちゃんは告発されるたびに、それだよね。せっかく、もてるのにめんどくいですませちゃうもん………もったいない」

「だって瑞希、私はプリンセスよ!私に吊り合う男なんていないわよ!」

まったくもって私には男と女が付き合う意味が解らない。恋愛?

何それ!?ゲームの恋愛シュミレーションならまだしも現実?正直にありえない。

シューティングゲームでもやってた方が百倍増しである。


『私はプリンセスだから!』と称する私に対して―――――。

「あははっ」といつものように笑う瑞希。

「たぶん、男子はまどちゃんのそう言うところに弱いんだと思うよ」と瑞希は可笑しなことを口にする。

「はあ………そういうところって」

私は首を傾げて問いてみる。すると笑って瑞希は短く答える。

「今風に言えばー…………ツンデレなところっていうのかな?」

「なっ!――――――!!」

ツンデレ!?

「私はつんつんしてないわよ!」

「ほら、つんつんしてるよ」

「なっ、なら!一満歩譲ってツンはあってもデレはないわよ!」

「あははっ。だね。まどちゃんはツンだけだね」

「―――――」

はあ―――――。まったくなんて会話だ。だから恋愛なんて嫌なんだよ!

私は頬をぷくっと膨らませて怒った。



瑞希と少々会話をした後に私たちはいつものようにゲーセンへと向かった。

ゲーセンに着くと、既に越岩という人は先に来ていた。

「よっ!雨水さん!」越岩は私を見つけるなり、手を振って私に声を掛けてきた。

「あれが例の越岩君?」

瑞希が隣から小声で問いてくる。

初めての人の前では声が小さくなってしまうという困った体質の瑞希。そのせいでかなりの奥手に見られる。まあ、かなりの奥手であるのは間違いないのだけれども。

「へえ、以外と普通の人なんだね」と感想を洩らす瑞希。

「まあ、見た目はね」

「まどちゃんの話からするともっと変な人かと思ってた」

「てか、変な人なのよ。性格?頭が変なのかしら」と私はいう。

「てっ、おいおい!さっきから話聞こえているよ…………変な人は無いだろう」と自己主張する越岩。

「変な人はいくらあがいても変なのは変わりないわよ」と変わらぬ口調で答える。

「あいかわらず口が強いな…………」

「まあ、私の口の達者なのは有名じゃない?初めて知ったの?」

「いや、俺はそんな所に惚れたんだよ」と恥ずかしい台詞を真顔で言ってくる越岩。

それに対して――――。

「うわぁっ…………」と思わず感嘆する瑞希。

「うわぁっ――――」と思わず退く私。

「恥ずかしい奴ね」

「おいおい…………そんなに退くなって」

だって、今時にそんな昭和くらいことばを吐く男性がいただなんて。よく言えば古風だが、悪く言えば古い。

「まあいいわ――――。で、勝負内容を決めましょう」と私は話を本題へと移した。いつまでも、こんな奴の相手をしてられない。さっさとゲームに勝って諦めてもらわないと。

「勝負内容って――――ルールとかあるのか?」

「もちろんあるわよ。勝負は公平にしないと。シューティングとかだと勝負の勝ち負けで不公平とかがでるしクイズゲームとか出題問題の得意不得意もあるからね」と私が言うと。

「なら格ゲーで勝負すればいいじゃないか?あれだと負けは負け、勝ちは勝ちだろ?」

「えっ―――――?」

私は思わず呆気にとられてしまった。格ゲーで勝負?それは考えてもいなかった。

「越岩くんだっけ?ねえ、あなた、私を誰だと思ってるの?」

私はおもわず、自己主張をした。

「私はゲーム界のプリンセスよ!特に格ゲーでは負けなしよ!あなたなんかみたいな青二才が勝てるとでも思ってるの?」と思わず過激になる。

「―――――――」

これに対して越岩という人は硬嫡する。

口をポカーンと開けている。

「いいわ!私は初心者には指導モードで戦うところだけど、あなたには私の凄さって言うものを見せてあげる!」

私はそう言った。

ああ!ぎたぎたのぼっこんぼっこんなんだから!

「ま、まどちゃん―――目が恐いよ」と瑞希は言うが私は無反応で示す。

「あなたもさっさと座りなさい!あなたに掛ける時間なんてないの!」

「――――あっ、はい!――――。」

越岩はそう返事をして私の反対にある台に座った。


キャラ選択を終えて間もなく試合開始である。

私は1P側、越岩は2P側である。

ふうー。

私は息を軽くついた。

そして

「ラウンド1ファイト」と言う掛け声と共に試合開始であった。

先制。

私はなんの牽制も入れずにハイジャンプで相手に突っ込んだ。

普通、上級者と上級者の戦いは牽制から始まる。弱パンチや距離をとって飛び道具で相手をうかがう。

しかし、今回私はいきなり飛び込んで接近戦へと持ち込んだ。しかし、もともと私が使うキャラは技術、テクニックキャラであるため接近戦は普段しない。が、今回は違った。

何故なら、私は切れているからである。

一発も食らうものか!パーフェクト試合だ!

気持ちはそんな勢いであった。

実際にゲーム内での局面もそうだった。コンポ食らわせて、起き攻め。起き攻め。一端、間を取ると見せ掛けて相手が攻撃をしてきたのをシールドしてキャンセルカウンター。

一ラウンド目が終わり、画面にパーフェクトの文字が並ぶ。

「よしっ!」私は小さくガッツポーズ。

「ラウンド2ファイト」

直ぐ様、2ラウンド目が始まった。

これも断然に私が有利にことが運ぶ。

そして、無効のライフが残りわずかになる。

私はこのまま2連続パーフェクトを目指そうと攻撃の手を安めない。

向こうはガードのみ。固め状態に入る。

「これで終わり!」

私は思わず声を出して超必コマンドを出す。

が――――――。

避け。

「あっ!―――――」

そしてカウンター。

不覚にも一発攻撃を食らう。

「っ!」

しかし、反撃はそこまで。起きあがっりを暴れていた越岩にカウンターを打ちこむ。それで試合終了。


「あー…………まいった、まいった」ぼこぼこにされた越岩が向こうから、こちらへとやってきた。

「まさか、ここまで差があるとはな」

何故か負けたのに笑みを洩らす越岩。

「何がそんなにうれしいのよ!」対して私は苛立っていた。

「いや、もともと俺には雨水さんは上の人だったから。こうして勝負を吹っかけたのも、最後に少し関わりを持ちたかっただけなんだ」

そう腹の内を晒す。

まあ、私もそんなことではないのかと途中から少し思ってはいた。

私が格ゲーで有名なのは、それなりに有名た。なのに私に告白してくる奴がそれをしらないはずがない。なのにコイツは勝負を格ゲーで決めようといいだしたのだ。明から少しおかしい話である。

「で、なんで負けたのに笑ってるのよ。あなたは?マゾヒスト?」

「それはないだろ。ひどいな君は―――――。まあ、負けはしたけど、俺なりには満足だ。雨水さんに格ゲーで一発食らわせたって言えば皆おどろくぜ」

そう言って嬉しそうに笑顔を作る。

「――――――」

しかし、私としては気に食わない。初心者に一発食らった?

冗談ではない!

「越岩くんだっけ!」私はぶっきらぼうに名前を呼んだ。

「あなた明日からゲーセン来なさい!」

「えっ?」

なんで?みたいな顔をする越岩。

「あなたなんかにさほど興味はないの!でも初心者に一発食らった私のプライドが許さないのよ!」

正直に述べる。越岩?本当にどうでもいい。

初心者にダメージを食らった!?ありえない。

今の私の気持ちは、そんな感じである。

「なあ?雨水さん――――それ俺に得はあるわけ?結局は付き合ってもらえないわけでしょう?」

「付き合ってあげるわけないでしょう!あなたに得?そんなの知らないわよ!誰にものを言っているの?私はプリンセス。ゲーセン内の姫。バトルプリンセスなのよ!言うこと聞きなさい」と私は激怒する。

「―――――」

越岩は黙り込む。

「―――――」

試合をずっと横で見ていた瑞希も静かである。

あら、少し度が過ぎたかしら?

そう思ったが。

「ははっ、あははははっ!」

越岩は爆笑した。

「何がおかしいのよ――――。殴るわよ」

「はははっ…………いや、ごめん。本当に雨水さんはすげぇよ」

笑いながら越岩はそう言った。

私は何となく彼の腹をどすっと一発殴り入れた。

そして結局、越岩なんとか。下の名前は知らないが、越岩くんはゲーセンに通うことになった。

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