頭蓋の中身をのぞきたい女。脳は脳脊髄液でプカプカ。御武運を。

頭蓋の中身をのぞきたい女に出会ったのはこれが初めてだった。

とても頭のいい女だった。

「お前の脳をのぞきたい。」

「のぞいたところで変わらんよ。」

この言葉は僕をこれほどになく興奮させた。

「どうしてそんなにきれるんだ？」

「切るものは君が用意しているんじゃないか。」

一つ一つの言葉の選びが、神経を通りやすく計算されている。

「僕の考えていることをあててごらん」

僕は挑戦状をたたきつけた。

「蝶は半だと老い先は短い。」

「え！？」

「半分の蝶だよ。」

「ちょうって虫の？それとも消化器？」

「虫さ。」

自分が先ほど何を考えていたのかなんてどこかにいってしまいそうだ。そんな強烈な時間。

でも、僕の考えは違うんだよな。

「叩き割るつもりか？」

「へ？」

「のぞきたいんだろ。ここ。」

女は改造されていた右手をえびの殻をむくようにもぎ取った。

「のこぎりさ。」

女の最後の言葉さ。なんてクールなんだろう。

頭蓋を割るではなく、はがす。これこそが煙迷路を解くかのように難しい。

菱形をした大頭口を立て切りにする。頭蓋の縫合にそいたい。ここまで沿いたいと思う人物像は、他に周囲には見当たらない。

脳は硬膜に包まれ、毛細血管につつまれ、ＢＢＢ《ブラッドブレインバリア》につつまれ、てろんと綺麗だ。

女の脳はきっと、とろとろに使い込まれてるの違いない。

でもそんなん鼻糞にしかみえんじゃろ。

あの女は間違っていた。

俺は自分より頭のいい脳を許せない。

俺は除きたいんじゃ脳を