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屋根の上では井戸端会議

「大丈夫ですか!?」

「問題ありません。少し驚きはしましたがね」

「HP半分近く減ってるじゃないですか」

「おかまいなく。ちょっとやそっとじゃ死なないように出来てますから。

 そうじゃないプレイヤーは、ほとんど教会に送られちゃいましたけどね」


青丸はすぐに移動を始め、俺を追い越す。

相変わらず姿は見えない。

追いかけるように進んでいくと、屋根の上に立つ人影が見えた。

葉月くんと、見たことのない髪の長い女性。

引きずるほど長い青のスカート、上半身はアクセサリーをつけているが、胸以外は露出している。

誰だろうと思っていると、如月さんが姿を現した。


「久しぶりじゃな、如月」

「こんにちは、サファイアさん。今日は見学ですか?」


如月さんが持ってる俺を通して声が聞こえる。


「そこの葉月と同じく召集されたのじゃ。ただ、その必要もないようじゃが」

「というと?」

「さっきの攻撃で、あのパーティーが殺したプレイヤーの延べ人数が100を超えたはずじゃ。

 間もなく指名手配がかかるじゃろう」

「それはご愁傷さまです」


何のことかと思っているとシステムメッセージがスクロールしてきた。

『噴水広場前に凶悪犯が現われました。付近にいらっしゃる方はご注意ください。賞金は123000Gです。繰り返します・・・』

なるほど、そういうシステムか。

PKが認められてるとはいえ、ある程度の秩序は必要だ。

第一、PKが蔓延れば新規のプレイヤーが入ってこないし、それではゲームとしての運営が成り立たない。


「こ、こんにちは・・・」


なんとか如月さんと同じ屋根まで辿り着いた。

屋根の上に佇む3人に遅ればせながら挨拶をする。

サファイアと呼ばれた女性はこちらを一瞥し、如月さんに目線を向けた。


「こいつは、お前のパートナーか?」

「形式上はそうですね」

「ふむ。お初にお目にかかる。妾はグループストーンのサファイアと申す。

 知能の低い男は嫌いじゃが、お主の相手ならしてやらんでもない。東地区のアシスタントカフェに来た際は指名するがいい。よろしくな」

「よろしくお願いします」


これは東地区にもアシスタントカフェがあるということだろうか。

そしてそっちのアシスタントは女の子がメインなんだ!そうに違いない!!


「雑談は後にしましょう。見つかりましたよ」

「降りかかる火の粉は払えばよいだけじゃ。面倒じゃがな」


広場の様子はここからならはっきり見えた。

噴水の近くにいる男女。

男は鎧で、女はローブ。典型的な攻撃職と魔法職の組み合わせ、に見える。

二人のいる場所を中心に陣が描かれており緑色の光を放っている。

時折男が振る剣は斬撃を飛ばしているようで、遠く離れた場所にも攻撃が届くようだ。


「さあ、かかってこいよ!俺を倒してみないか!!?」


見つかってはいるものの、向こうから攻撃を仕掛けてくる様子はないようだ。

その台詞に挑発されたのか、向こうの通りからオーガが距離をとりつつ近づいていた。

パーティーを組んでいるようには見えないが、あちこちから補助効果のありそうな光が飛んでくる。

振り上げたのは斧、オーガにしては俊敏な動きで距離を詰めようとしたところで、地面が爆発した。

煙でこちらからは見えないが、その煙に向かって鎧の男が斬撃を放つ。

あたりの空気を震わせるような雄たけびを上げて、オーガは煙の中から現れた。

鎧の男に向かって構えた斧を横になぎ、下から切り上げ、上から打ち下ろす。

斧が光ったので何かのスキルを発動しようとしたのだろう、だがそれだけだった。

それらの攻撃の全てを鎧の男は盾ではじき、斧が光った一瞬の隙に鎧の男が剣を突き出した。

剣はオーガに突き刺さり、大きな体が沈む。

間もなくオーガは光の塵となって消えていった。


あっという間の出来事で唖然とする。

すごいかすごくないのか、今の俺では分からない。

オーガが無謀すぎたようにも見えるので、ここはひとつ皆さんに聞いてみることにした。


「強いんですか?あの鎧の人」

「体術の熟練度が高いんでしょうか。相手の攻撃のタイミングに合わせてシールド出来るなんて只者じゃありませんね」

「あの武器でオーガが一撃ってことは、カウンターで急所に当てたんだろうね。すごいよねぇ」

「魔法で攻撃するにしても女子のプロテクトが邪魔じゃな。おそらく男のシールドにはリフレクトがかかっていると判断してよいじゃろう。

 シンプルかつ合理的なパーティーのお手本じゃ」


揃いも揃って賞賛の嵐。

この人たちにここまで言わせるとは、かなりの腕なんだろうな。

いつか俺もあんな風に戦うことが出来るだろうか。


「戦わないんですか?」

「私達の仕事はお客様に癒しと萌えを与えることです」

「いや、でもさっき召集がかかったって」

「指名手配になりましたからね。私達がやらなくても誰かがやるでしょう。ほら」


如月さんが指差す先には、我先にと鎧の男に向かって突進するプレイヤーの数々。

教会の方から流れてきたので、多分復活してそのまま来たのだろう。

一人が無理なら複数で、という考えに反対はしないが、状況は把握するべきだ。

と思ってるうちに、また地面が爆発した。

光の塵が立ち上っていくので、また何人か犠牲になったらしい。


「トラップはってるの、どっちだとおもう?」

「妾は女子の方だと思いたいが、如月の意見も聞きたいのぅ」

「・・・難しいですね。男でないのは確かです。もう一人いるかな?でも私達の【察知】にかからないとすれば」


うーん、と唸る如月さん。

そうやって黙って立ってる分には害のない人なんだけどな。


「消去法で女の方ですね。スライムを懐に隠し持っているという可能性もないわけではないですが・・・」

「あー!如月だめだよー!それ以上言ったらぺなるてぃだよー」

「ふ。如月は随分とそのスライムに入れ込んでいるようじゃな」


ん?スライム持ってると何かいいことあるのか?


「さっきのでまた賞金が上がったようじゃな。252000とは」

「大金ですね。誰が倒すんでしょう?」

「β終了時にランキング上位に入っていた者なら余裕じゃろうて」

「まだおーぷんして2日目だけど?」

「彼らに時間は関係ないでしょう。そして噂をすれば・・・いらっしゃったようですよ」


如月さんの目線を追うと、路地裏に隠れるように噴水広場を眺めてる獣が一匹。


「猫?」

「猫人間ですね。モンスターですが、能力値が貴方とは段違いです」

「ほう。DEXとSPDに極振りしてあるのか。誰かさんと一緒じゃな」

「その誰かさんでしょ。これは面白いものが見れますよ」

「ふたりともっ!そういうお話もきんしなのー!!」


三人が何のことを言ってるか分からないが、猫人間の見た目はかわいい。

それほど高くない身長、猫耳の生えた頭に、手足は完全に着ぐるみのアレという外見である。

武器を持っている様子はなく、瞬きした瞬間に姿を見失ったかと思うと、隣の路地にいたりする。

時々影が薄くなって姿が消えるのは【迷彩】だろうか?違うんだろうな。

尻尾がゆらゆらしているのは微笑ましいが、猫人間はどこか得体の知れない雰囲気をその身に纏っていた。



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