出会い-放課後の教室にて:綿村 晴那(わたむら はるな)
私には誰にも言えない趣味がある。
放課後、部活を途中で抜け出して。誰もいない教室で、スポーツバッグの底に隠していた拳銃を取り出す。もちろんエアガンだけど、ブローニングハイパワーとCZ75の二つ。同じ銃で揃えたいけれど、少ないお小遣いをやりくりするのには同じものを二つ買うのは躊躇ってしまう。きっと種類を揃えたいコレクターな性分なのだろう。
紙コップに黒服の男を印刷した紙を両面テープで留める。教室の前と後に三つずつ並べて準備完了。コートの内ポケットにエアガンを仕舞って着込んだ。気分はもうヤングガン。中央に立って深呼吸。窓の外は既に夕焼け。オレンジの光が教室に差し込む。少しまぶしいけれど、私かっこいい!
一息でコートから銃を取り出し、左は前の、右は後の的に向けて撃つ。ポン、という音を聞きながら腕を交差し、左で後を、右で前の的。最後に両腕を広げてトリガー……。計六発のBB弾を撃って、両腕を降ろして深呼吸。教室の前後を首だけを動かして確認すると、的は三つ立っていた。命中率は50%、か。私、かっこわるい。
ため息を吐きながら後片付けをするべく後を向く。教室の前の出入り口に男子。目が合った。手から力が抜け、持っていたものを落としてしまった。いやそんなことよりも、
「あ、どうも」
「ひっ!」
見られた。
「あ、その」彼は少しだけ言い淀んで、「み、見なかったから」嘘だ。絶対嘘だ。頭の中真っ白で何も出来ないのにそれだけは何故か強く思えた。絶対に見られてる。
「う、あ」言葉にならないというか言葉すら頭に登らない。目を逸らせない。逃げないと。どこに。隠れる。もう顔もばっちり見られてる。奴は誰。知らない。逃がしたら、絶対バラされる。だったら。
「ああそうか」頭が晴れやかになって、すっきりとした気分だ。思わず顔が緩む。
「うぇ?」私の変化を感じ取ったのか、彼は愛想笑いを浮かべて後ずさる。逃がすか。
「こういう時は、口封じよね」
言うが同時に床を強く蹴り教室の前方へ跳ねる。最前の机に手を当ててターンの支点にし奴に突進てところで彼は「うわあああああ」悲鳴を上げ逃げ出す。逃すか。
廊下に出て追うしか無い。私の密かな楽しみをバラされて堪るか。