第6話 相反する者はお互いに引かれ合う
すいません。GFはまだ出てきません…。
もっと短くすませるつもりが1話分になってしまいました。
大変申し訳ありませんでしたorz
――時刻は明け方だろうか。
辺りは薄暗く、真っ当な世界の住人であれば夢の世界を旅している時間帯だ。
そんな中、一人の女性――フランチェスカ・ペンドラゴンは、
模擬剣を抜刀し日課の鍛錬を開始する。
フェンシングの様に半身で構えを取り、想像で生み出した仮想敵を相手に
突きを主体として動きを組み立てながら、切り払い、連続技、
反撃を想定してのクロスカウンター、
時には守りの構えで敵の攻撃をいなす様に動く。
そうして彼女は、様々な状況を想定しながら目の前の仮想敵を打ち倒していく。
その純粋で真っ直ぐな剣術は、
相対した者を震え上がらせ、絶望に突き落とす殺人剣では無く、
戦いを挑んだ相手が敬意を表す様な、洗練された技巧の数々であった。
尤も剣術だけではなく、フランチェスカの姿もそこらの凡夫の様な姿ではない。
現在は無造作に束ねられているが、
太陽の様に輝く金の色をもった髪に、雪の様に白く艶のある肌、
ブルートルマリンにも負けない蒼い輝きを持つ、ややツリ目気味の凛とした瞳、
それらを最大限に引き立てる様な整った目鼻立ちをしている。
体つきの方も、身長は170cm程である事が覗え、
無駄な肉が削ぎ落とされた体は健康美を放ちながらも、
女性の象徴であるバストとヒップからは、
肉感的な魅力を十分に引き出す果実が激しく自己主張していた。
類稀なる美貌と、一つの芸術の様な剣術が相まって、
幻想的な雰囲気を作り出している。
彼女を例えるなら――そう、北欧神話に登場する複数の半神、
戦場において戦死した英雄や勇士を導く役目を持つ
戦乙女が相応しいだろう。
すると、暫くして一段落着いたのか、フランチェスカは汗を拭い一息付く。
そうして先程からこちらを伺っている人影に声を掛ける事にした。
「先程からそちらを見てる方、覗き見はあまり関心される事ではありません。
疚しい事が無ければ、姿を現して頂けませんか?」
鈴を鳴らす様な澄んだ声でフランチェスカが声を投げかけると、
相手の方は、まさか声を掛けられるとは思っていなかったのか、
酷く驚いた様子でぶるぶると体を震わせながら物陰から現れる。
茶髪のショートヘアに、くりくりっとした黒い瞳をした目が特徴的な少女だ。
身長は大分控えめであり、150cmと少し、といった所だろうか。
候補生と言う事はフランチェスカと同程度の年齢なのだろうが、
同世代と比べると、かなり控えめなスタイルと相まって
フランチェスカよりも3~4歳年下に見える。
しかしながら、見ている者をホッと和ませるようなその容姿は、
フランチェスカの様な美貌とは違うベクトルで、彼女の魅力を存分に膨らませている。
この小動物を連想する様な雰囲気を纏っている少女は、
フランチェスカと同じ候補生である同室のルーシー・リプトンであった。
「ご……ごめんなさい!覗いてた事は謝ります…。
でも、ペンドラゴンさんが部屋から出て行くのがわかって……。
覗きはイケナイ事だと思っていたんですけどっ!そのっ、
ペ……ペンドラゴンさんがあまりにも綺麗だったのでっ…目が離せなかったんです…」
噛みながらも、必死になって訴えるルーシーを見て、
流石にフランチェスカも毒気を抜かれてしまった。
彼女は寝ていた訳であるし、起こしてしまったフランチェスカにも非があるだろう。
「――まぁ、こちらも貴女を起こしてしまったのですから、
こちらの方も謝るべきでしたね。申し訳ありません。
しかし、こちらも一応気配を消して出てきたのですが……。
流石、訓練候補生といった所ですか。」
――その割りに、気配の消し方はお粗末であったのだが。
「その……何となく目が覚めてしまって。
そうしたらペンドラゴンさんがどこかに行くのが見えたので、気になってしまって。
寝ぼけていたので見失ってしまいましたけど、気になったので探してみたら……」
「ここに辿り着いた――と?」
「はい。見つかってしまったので、運が悪いのか良いのか分かりませんけど……。
でも、ペンドラゴンさんとお話が出来て良かったです。
こんな時でも無いと話す機会なんて、そうそう有りませんから。」
天下のペンドラゴン財閥のお方ですし、とルーシーは付け足す。
そのルーシーの様子に、フランチェスカは少々憤慨しながらも、
いたずらっ子が何かを企む時に笑う顔で、彼女に提案をする事にした。
「確かにもうこんな機会は無いでしょう。
その判断についてリプトン嬢、貴女は正しい。」
ルーシーはその言葉に、その通りです。といった風に頷き、
酷く悲しげな様子で目を伏せてながら呟く。
「そうですよね……、孤児院出身の私が、こうしてペンドラゴンさんと話す事も
本来であれば許されないはずです。出過ぎた真似をしてすみませんでした。」
ぺこり、と頭を下げるルーシーに、
企みが成功し、いたずらが成功した子供様な雰囲気で話を続ける。
「フフ……貴女は何か勘違いをしている様ですね。」
「……え?」
「これからは、身分違いの恋人が逢引をする様に忍んで話す必要はありません。
今日この時から貴女と私は仲間となるのだから。
仲間同士が話す時、人目を気にする必要など無いでしょう?」
「それって…!」
「リプトン嬢。貴女に私の名前を預けます。
宜しければ、こちらもリプトン嬢を名前を呼ぶ事を許して欲しい。」
「…ぁ……はいっ!も、勿論です!ペン…いえ、フランチェスカさん!」
「ルーシー、堅苦しいのは無しです。それと私の事はフランで良い。
親しい者は皆そう呼びます。」
「え…えへへ…。うれしいな…うれしいなっ!フラン、ありがとう!
…グスッ…何か、涙出てきちゃった。……泣いたのなんて久しぶり。」
感極まってしまったのか、涙を流しながらも、向日葵畑の様な明るい笑みを浮べて
ルーシーはフランチェスカに抱きつく。
「そう喜んで頂けるとこちらも嬉しい。これでも結構緊張したのですよ?」
フランチェスカも抱き返し、お互いとも暫くの間そうしていた。
お互いに打ち解けた2人は、ぽつりぽつりとお互いの身の上を話す。
実は2人供、腹を割って話す事が出来る友が出来たのは初めてだったのだ。
フランチェスカは、幼い頃から武道ばかりを磨いており、
その類稀なる容姿と相まって、近寄りがたい雰囲気を纏っていた為であり、
ルーシーは孤児院暮らしが長く、その中でも最年長で有った為、
下の子の面倒に付きっきりだった為であったからだ。
「私、ドジで…何をやってもダメだったんだ。その内仕事も無くなっちゃって、
孤児院の弟や妹達を養う為には、まともな働き口がもうココ位しかなくて……。
凄く怖かったんだけど…フランのお陰で頑張れそう…!ありがとね!」
「私も戦場に身を置く、と言う事は覚悟していたつもりでしたが…。
武人としては情けない話ですが、幾分か恐怖を感じていました。
しかしルーシー、貴女に会えて良かった。
貴女の太陽の様な明るさは、私に元気と勇気を与えてくれる。」
「フラン、これからも宜しくね!」
「こちらこそ、ルーシー。良い頃合ですし、そろそろ寮に戻りましょう。
……そうだ。今日は兄様がこちらに来るとの連絡を受けました。
良ければその時に私の兄様を紹介したいのですが、如何ですか?」
「フランが良ければ勿論お願いしたいな!
でもお兄さんかぁ?どんな人だろう…楽しみだなあ。」
少女2人は楽しそうに語らいながら寮への道を辿って行く。
フランチェスカは、素晴らしい友人が得られた事を神に感謝した。
自分を劇的に変える様な出会いはもう起こらないだろう、と、
この時は考えていたのだが…。
――彼女はまだ知らない。
彼女の兄と一緒に現れた少年との出会いが、
彼女の在り方をルーシー以上に大きく変えるという事を。
ヒロインの呼称が495年生きた妹様になってしまいましたね。
チェスカと悩んだのですが、
ロシアのサッカーチームと被ってしまうので、この様に落ち着きました。
ちなみに喋り方も某腹ペコ騎士王に似てしまいました…。
誇り高い、騎士の様な喋り方というのは難しいです。
ご意見ご感想等、お待ちしております。