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Freedom Sky  作者: ふーりん
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第5話 一寸先は闇

ロンドンから、ブライズノートン基地に向けて出発した一向であったが、

出発地点から基地までは、おおよそ80km程の距離がある。

尤も、武はこの世界での常識や、歴史、英語のおさらい等を2人に頼んだ為、

あっという間に時間は過ぎていったのだが。


そうして基地まで約10kmという所で、ジェット機が飛ぶような音を響かせながら、

GFが編隊を組んで移動していた所に出くわした武は興奮気味に叫ぶ。


「うおおお!!!本当に人型ロボットが空飛んでる…!」


かなり遠くに居る為かおぼろげな全体像しか見えなかったが、

確かに人型をしていた。

VR技術で幾度と無く目にした物とは違い、現実世界で

ロボットの鼓動を、感じ取る事が出来た武は軽く感動を覚えてしまった。

アニメやゲーム、漫画等でしか描かれる事のなかったロボットが、

おぼろげとはいえ、実際に動いていたのだ。

幾らVR技術が優れていたとしても結局は空想の産物であり、

現実の物では無いのである。


(コレを見る事が出来ただけでも良かった!)


唯一残念な点は、空が青ではなく、黄土色という所だった。


「これで空が青空だったら、凄く映えると思うんですよね。」


興奮した武の声に反して、ケイン達2人は、苦笑いしながら話す。


「青空ですか…。私の生まれた時は、もうこの空の色だったんです。

写真は見た事がありますが、何時かは実物を見てみたいですね…。」


「そうだね…。私達の世代辺りが丁度、【shattered sky】世代だから

青空を見た事のある君は正直羨ましいよ。」


「【shattered sky】?」


――君の言っていたゲームと正反対のネーミングで恐縮だけどね。

と、苦い顔をしながらケインは語り始める。


「GFが開発される前にミサイル兵器が役に立たなくなった事は話したね?

 当時、主力となっていたのは改良型赤外線ミサイルだったんでね。

レーザー・レーダー誘導式に換装が遅れていた途上国なんかは、

侵略を恐れて、環境汚染なんて御構い無しに新型チャフを使いまくったのさ。」


「この現代に侵略なんてそうそう起こり得ない。

しかしながら、もし…かも?の論理(ロジック)は、そうそう忘れる事は出来ません。

最初は些細な事から、そこからはあっという間です。

腐った果実があっという間に周りの果実を腐らせるように広がっていくんですよ。」


「その内環境汚染を食い止める為に

アメリカやPKF(国際平和維持軍)が出張ってね…。

それらの攻撃を防ぐ為に又チャフを使う。ここからは負のスパイラルさ。

GFが開発されて、高度な電子戦が出来るまでこんな事の繰り返しだったね。」


「ま、そんな感じでこの濁った空を作り上げた戒めとして、

【shattered sky】と呼ぶようになったのさ。」


ケイン達は軽い口調で話しているが、武は愕然とした。

少し道が違えば、自分達の世界もこうなって居たかもしれないと。

武は両親を早くに亡くしていたが、

それでも面倒を見ていた伯父や伯母に非常に感謝していた。

血の繋がりが殆ど無いとはいえ、

大切な血縁や友人を戦火で失ってしまう事を考えると震えが止まらない。

武はこの世界に来て初めて後悔を覚える。

武の動揺を見かねてか、ケインはややあって口を開く。


「うーん…やはり君を軍に連れて行くのは失敗だったかな。」


「…無理もありません。武様は、争いの少ない平和の世界で生活していたのですから。

争いに対して怖い。と思うのは正常でしょう。寧ろ、そう思わない方が心配です。」


「…どうするかい?見学だけして帰ってもいいんだよ?

新しい友人に、観光と妹への顔会わせ、と言う名目で来たという事で良いしね。

働き口が無ければ君が良ければだが、私の助手として雇ってもいい。

給料も十分な額を出すし、住居もこちらで手配しよう。どうだい…?」


――僕は一体どうしたいんだ?

武の中で思考が渦をまく。


こんな良い条件を提示してくれているんだ。わざわざ危ない橋を渡る必要は無い。


(僕は基地に行かなければならない)


ケインさんが、帰還方法を見つけるまで安全に暮らしていけばいいじゃないか。


(それは許されない)


ロボットだって見学させてくれるんだ。もう満足だろう?


(己の役目を理解しろ)


――先程から頭痛が酷い。

何故か武が幾ら思考しても、結局基地に行く、という選択を取ってしまうのだ。

こうなれば覚悟を決めるしかない。


「…僕は。僕は正直言って怖いです。

 ケインさんの言う条件で争い無く暮らしたいです…。

けど、僕は基地に行きたい。いえ、行かなければならない気がするんです。

こう、上手く言えないんですが…そうしないと、

――自分が自分で無くなってしまう気がして…。」


武は頭を抑え、痛みを堪えながらもケイン達にハッキリと答える。


「…ま、決めるのは君だ。

私の所に、戻りたくなったら何時でも言ってくれたまえ。」


「…ありがとうございます。」


先程まであった浮かれた気持ちなど遠に吹き飛び、

武は、基地に着くまでの道取りを空虚に過ごす事になる。


今回は移動回+説明会でした。


それと、空が濁っている事も明らかに。

次話からようやく、ロボット+ヒロインの登場です。


誤字脱字報告、感想、お待ちしております。

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