第4話 朝に夕べを計らず
説明については深く突っ込まれると反論出来ません…ので、
こういうモノなんだなぁと考えて読んで頂けると幸いです。
「成る程ね…大まかに事情は理解したよ。
その様子を見る限りでは嘘を言っている様には見えないしね、
尤も、君が有能なヒットマンであったのならその限りでは無いかもしれないが、
ナガセに容易く後ろを取られている様だし、その可能性は低そうだ。
疑い出せばキリが無いのでね。君が真実を言っている事を前提に話を進めるよ。」
ケインは茶目っ気たっぷりにウインクをしながら話続ける。
そう言われて振り返ると、いつの間にかナガセさんが背後に回っていた様である。
もし疑いが晴れなかった事を考え、武は肝を冷やす。
あの後、武は自分の考えを話し、自分の世界の事を具に話した。
驚いた事にこの世界の歴史と武の世界の歴史は驚く程に似通っていた。
だが、一つだけ。武達の世界とを分ける決定的な出来事が起こっていたのだ。
皮肉にもその出来事は、
武の世界でVRネットシステムの公式発表が行われた日と一致したのだが。
「神様の贈り物。私達の世界ではそう呼ばれているよ。」
その事件が起こった日の出来事をケインが要約して話してくれる。
その日、宇宙ステーションで作業中の職員が、
偶然にも所属不明の電波信号をキャッチしたらしい。
電波信号の解析は出来なかったらしいのだが、
座標を特定し、サルベージしたポッドと思わしき物の中に
ケインが実験を行っていた、次元歪曲システムの原型が発見されたのだ。
この事件に、世界では激震が奔った。
夢物語や空想科学と思われていたワープ技術や、
時間旅行が可能になる様なテクノロジーである。
各国は総力を挙げて技術開発に躍起になっていたのだが、
未知の技術の前に研究は悉く難航し、
辛うじて次元歪曲の際に起こるエネルギーを利用した動力補助装置、
DL(dimension Link)システムが開発されるだけに留まったのだ。
その事件が起こった十数年経った今でも研究は続いており、
様々な亜種は出来上がったのだが、
未だにオリジナルの複製出来た物は存在しないと言われている。
しかしながらこのシステムは、現行で利用されていた様々な燃料効率を
何倍にも引き上げる事が出来た為、
この世界の燃料問題は一気に解決した様であった。
「で、君が言っていたゲームの事だけどね。
そっくりそのまま、とは行かないだろうけど、
それに似たモノはこの世界に存在するよ。」
まさか。と武は驚く。
武も現実世界にロボットが闊歩する事を願っていた一人ではあったのだが、
現実を考えると無理だろうなぁ。と思っていたのだ。
無線誘導によるミサイルが主力武器の空戦では、
どう考えても機動力の高い戦闘機に分があるし、
地上戦では、開けた場所ではMBT(主力戦闘戦車)につるべ打ちにされ、
V/STOLや戦闘ヘリに蜂の巣にされてしまうだろう。
唯一活躍出来ると思われそうな市街戦でも
歩兵の奇襲による携行型戦車火器で間接部やセンサーを狙われたら一撃である。
それらに対応する装甲を持ったとしても、今度はコストの問題が圧し掛かる。
どこかの国が2足歩行兵器を作ろうと考えたらしいのだが、
実践に耐えうる出来で製作すると同じ予算で何十台もMBTが作れてしまう為、
却下されてしまったという出来事もあった位だ。
武がそれらの理由を挙げると、
ケインも苦笑しながらDLシステムのお陰だよ。と語り始める。
この世界ではDLシステムの亜種による熱量感知妨害電波により、
赤外線ミサイルが全滅。
その後、レーダー、レーザー誘導式ミサイルが少しの間台等するのだが、
チャフの改良種とDLシステムを補助に使った電子戦装備による電波かく乱及び、
視界欺瞞による効果でレーダー、レーザー誘導式ミサイルも
実戦での決定打とする事が出来なくなってしまったのだ。
軍部も、このDLシステムをなんとか誘導に応用が出来ないモノかと
研究をしていたらしいのだが、コストの問題で悉く失敗。
結果、空軍は第二次大戦以来の有視界戦闘。
機銃同士のドッグファイトを余技なくされてしまったらしい。
「そこで開発されたのが、本来宇宙作業機械で在った強化外骨格を再設計し、
地球で使用出来るように作られたモノ。
それがGFという訳さ。」
――尤も、操縦というよりは自分の体を動かす様な感じらしいけど。
とケインは付け足す。
GFを起動する際、それに搭乗する本人を一時的に仮死状態にし、
その後蘇生措置を行う事で、
機体を自らの体の様に錯覚させ、同調させる…らしい。
文字通り、人機一体と行った所だろうか。
自分自身をCPUとして、
人間の何十、何百倍もの力を引き出す機体を操る。
現代戦争ではある程度装備で補えていた経験や戦闘技術、センス等が
GFには驚く程反映されるらしい。
更に、コストの面から見ても、GFの方が費用体効果は圧倒的であった様だ。
その結果、GF乗りは現代戦争の勢力図を一遍させてしまった。
話を少々脱線した為か、ナガセが話に割って入ってきた。
「話を戻しますが、ケイン様の妹君のフランチェスカ様もGF乗り志望です。
といっても訓練候補生ですが。」
「女性の方でもなれるんですか!?」
武は驚いた様に叫ぶ。
世の中に女性士官はそこまで少ない訳ではないが、
男性と比べると圧倒的に少ない。
理由は幾つかあるが、やはり身体能力の違いが一番の理由だろう。
その驚きに尤もだと言わんばかりにケインは語る。
「君の驚きも尤もだろう。
多分、男女間の身体能力の違いを比べたのだろうね?
しかしながら、寧ろGF乗りは女性の方が多いのだよ。
実は、GFを操るのに身体能力はそこまで必要ではないんだ。
勿論あるに越した事は無いようだがね。」
ソファーの腕掛けを指でトントンとたたきながらチェシャ猫の様な笑みを浮べるケイン。
「これは統計なのだが、女性の方が上手くGFと同調出来る様なんだ。
色々仮説は立てられているが、子供を生む事と関係があるという説が一番高いね。
尤も、うちの妹にはプロパガンダ絡みも入っているだろうけど。」
話を聞いていた武は、身体能力がそう関係無いのであれば、
もしかすると、自分も乗れるかもしれない!と考えケイン達に聞いてみる。
ゲームと感覚が一緒なら同調するのもそう苦では無いはずだ。
「あの…僕もGFに乗ってみたいです!
その…前の世界ではゲームの世界大会で準優勝者だったので…。
それに何時までも此処にお世話になる訳にもいきませんし。仕事も見つけないと!」
尤もらしい言い訳をしながら武はケイン達に交渉してみる。
「乗ってみたいって…軍に入るつもりかい?
そりゃ、軍にいけば食い扶持は稼げるかもしれないが…
軍には危険が付き物だし、
私の不手際でこちらに呼び寄せた君を危険に晒す訳にはいかない。
そもそも軍人になる、という事は国を守る為に人を殺す事もある。という事だ。
その覚悟は出来ているのかね?」
ケインの厳しく窘められふと気が付く。
言われてみるとその通りである。
しかし、発展途上国ならともかく、先進国で早々紛争もあるまい。
適当に乗ってみたら退役すればいいのだ。―と
長い間紛争など、対岸の火事。身近に戦争を感じられなかった武は楽観していた。
「大丈夫です。元の世界に帰るまで、無駄死になんて出来ません。
何とか頑張ってみます。」
ケインは暫く渋っていたが、思わぬ所からの助け舟が入る。
「ケイン様。本人が言っているのですし良いのでは無いでしょうか?
それにフランチェスカ様の様子を知る良い機会ではありませんか。
第一、候補生になる前に試験もあります。そう深く心配する必要も無いでしょう。」
ナガセに説得され、ケインは不承不承といった様子で首を縦に振る。
「分かった。推薦状は私の名前で書いておこう。しかし、だ。
私は、君を当家の客人として対応するつもりだ。
危険が迫ったらこちらに戻ってくれて構わない。君は異世界の人間だし、民間人だ。
何も恥じる事はない。それを約束してくれ。」
彼なりの謝罪の表れなのだろう。
武はありがとうございます。と返事をし、
この世界の基礎知識や必要な事を2人に尋ね始める。
――それから数時間後…。
「お二人とも。シートベルトは締めましたか?
少々飛ばして運転しますのでしっかりと、締めて下さいませ。」
「ブライズ・ノートン空軍基地はやや遠い。
まぁ久々にバカンスといこうかね?ナガセ。」
「メイドさんがハンヴィー運転してる…。」
大型のハンヴイーの中には、メイド服のまま運転するナガセに、
助手席でラフな格好で葉巻をくゆらすケイン。
そして、後部座席に座り、漫画やアニメと違って、実際にはシュールだな。
と思う武の3人の姿があった。
説明の回になりました。
誤字脱字の指摘、感想などお待ちしております。
9/1 ミサイル関連、GFのコストの問題を追記しました。