最後の手
「来るなー! 近寄るなー!」
僕は超大型EVタンクローリー車の運転助手。
助手席側の窓から身体を乗り出してバットを振り回し、運んでいる石油類を強奪しようと群がって来た無頼共を威嚇している。
まぁ、全然効果無いけどね。
無頼共は電動バイクに乗って襲いかかって来る。
運転している先輩に言わせると、電動バイクのお陰で静かだからまだマシなんだそうだ。
ガソリンが配給制になって簡単に手に入らなくなったから電動バイクだけど、配給制になる前は電動なんかでは無いバイクに跨り、「パラリラ〜! パラリラ〜!」というホーンの音やマフラーをぶった切って出す騒音を撒き散らしてた。
それで奴等は僻地に配給のガソリンを運ぶタンクローリーを襲い、ガソリンを手に入れようとしているんだ。
ただ救いは、奴等も馬鹿じゃないから闇で手に入れた銃器類を持ってても、僕や先輩を脅すのには使ってもタンクローリーに向けて撃つって事はしない。
超大型の車体に物を言わせて群がる電動バイクの群れを蹴散らしてはいるけど、蹴散らしても、蹴散らしても群がり集まって来る。
あ! ヤバい、タンクローリーの車体に乗って来た奴がいる。
そいつはタンクのバルブを開けようとしていた。
バックミラーでその事を視認した先輩が叫んだ。
「最後の手を使う、何処でも良いから掴まれ!」
そう叫んだあと先輩は運転席脇の赤いボタンを押した。
途端、タンクローリーの両脇から飛行機の翼のような物が飛び出て来ると同時に車両の後方からロケットの爆音が響き渡り、助手席側ドアの上の取っ手に掴まった僕の身体が助手席に押し付けられる。
そしてタンクローリーが大空目掛けて飛び上がった。
タンクに取り付いていた奴を振り落とし、呆気に取られた表情て固まる無頼共を置き去りにして、タンクローリーは空を飛ぶ。
十数キロ飛んでから先輩はタンクローリーを着陸させ、何事も無かったかのようにタンクローリーを走らせる。
呆気に取られていた無頼共のように放心していた僕は我に返り、先輩に文句を言う。
「こんな凄いものがあるなら、最初から使ってくださいよ」
「馬鹿を言うな、ロケットに点火するって事は燃料を使うって事だぞ、万が一の時に使えって支給されている燃料だけどな、あ〜あ使った所為で儲けか半分消えちまった、助手のバイト料半分にしようかな」
「先輩! それは勘弁してください」
そんな僕たちを乗せてタンクローリーは目的地に向けてひた走るのであった。




