第99話:赤いヘルメット(還暦の総決起集会) ―60歳、世界中から『ご安全に!』を贈られる―
第99話:赤いヘルメット(還暦の総決起集会) ―60歳、世界中から『ご安全に!』を贈られる―
1. 惑星規模の「朝礼」
60歳の誕生日。サンクチュアリの中央広場には、入りきれないほどの人々が詰めかけていた。
そこには、王族も、冒険者も、かつての敵も、そして盆山が育てた何万人もの職人たちがいた。
「……本日、盆山総監督の還暦を祝し……全惑星土木連合より、記念品を贈呈いたします!」
テオが、少し緊張した面持ちで壇上に立った。
手渡されたのは、赤いちゃんちゃんこ……ではなく、深紅に塗装され、金色の「安全第一」の文字が刻まれた、特注の**『超硬質オリハルコン製・赤いヘルメット』**だった。
2. 施工:感謝の「全土ライトアップ・パレード」
盆山がそのヘルメットを被った瞬間、バベル・シャフトを起点として、世界中の街道、橋、ダム、そして家々の灯りが、盆山の好きな「夕焼け色」に染まった。
「……監督。……これが、あんたが作った『景色』だ。……どこまで行っても、あんたが直した道が続いてる。……あんたが繋いだ灯りが消えることは、もう一生ねえよ」
ガムリが、涙を堪えながら盆山の背中を叩く。
盆山は壇上に立ち、集まった人々を見渡した。
「……皆、ありがとな。……だが、勘違いするなよ。……俺は今日で定年(引退)するつもりはねえ。……還暦ってのはな、暦が一周回って『新人』に戻るってことだ。……明日からは、新人のつもりでまた、お前らの現場を抜き打ち検査しに行くからな!」
広場に爆笑と、地鳴りのような「ご安全に!」の唱和が響き渡った。
3. 60歳の職人談義:『道具』から『風景』へ
式典の後の静かな夜。盆山は赤いヘルメットを脱ぎ、傍らのベアに見せた。
「……どうだ、ベア。似合ってたか?」
「……ええ。……世界で一番、強情で、誇り高い赤でした。……マスター。……還暦おめでとうございます。……これからの60年も、私のメンテナンス、よろしくお願いしますね」
ベアがそっと盆山の腕に頭を預ける。
盆山茂、60歳。彼は「世界を作った男」ではなく、「世界を愛し、修理し続ける男」として、再び歩き出す決意を固めた。
99話~完~




