第75話:鋼の相棒(アンドロイド・パートナー) ―50歳、新しい『体』を得た相棒に戸惑う―
第75話:鋼の相棒 ―50歳、新しい『体』を得た相棒に戸惑う―
1. 予期せぬ「追っかけ」
陥没事故を鮮やかに解決し、町外れの古い橋の袂で昼飯(玄米おにぎりとたくあん)を食べていた盆山の前に、一人の少女が現れた。
銀色の髪、透き通るような肌。だが、その瞳には見覚えのある「演算処理」の光が宿っていた。
「マスター。……独り立ちは素晴らしい決断ですが、私のサポートなしでは、現場での『工程管理』が30%以上遅延すると算出されました」
「……ベア!? お前、その体はどうしたんだ?」
盆山は、あまりに人間らしい彼女の姿に、思わずおにぎりを喉に詰まらせた。
「アイリスとルナが協力し、月の『生体プリンター』で出力した最新の『汎用人型インターフェース(試作機)』です。味覚、触覚、そして……マスターへの『小言』を言うための発声機能を完備しています」
2. 施工:崩落寸前の石造アーチ橋の「補強工事」
ベアトリーチェ……いや、新しい体を得た「ベア」と共に、二人は次なる現場へと向かった。それは、町と農地を繋ぐ唯一の生命線である、築200年の石造アーチ橋だった。
長年の震動と風化により、要となる石が今にも外れそうになっている。
「マスター、今の水圧と荷重を計算しました。……今夜の雨で、崩落確率は98%です」
「……よし、ベア。俺が下から支保工を組む。お前は上から、石の隙間に『高浸透性・魔導樹脂』を流し込め。……表面を塗りつぶすんじゃねえぞ。石の呼吸を止めないように、内部のヒビだけを狙い撃ちしろ」
盆山は川の中に浸かり、冷たい水の感触を肌で感じながら、木材を組み上げて橋を支えた。
「……へへっ、ベア。お前も『触覚』があるなら分かるだろ。……この水の冷たさ、石の重さ。……データだけじゃ分からねえ、これが『現場』の醍醐味だよ」
3. 50歳の職人談義:『心』を込めるためのセンサー
作業を終え、二人で夕焼けに染まる橋を眺める。樹脂で補強された石橋は、見た目は古いままだが、その強度は以前の数倍に高まっていた。
「……マスター。指先に伝わる『抵抗感』。これが、人間が言っていた『手応え』というものなのですね。……数式で解くよりも、ずっと納得感があります」
ベアが、自分の小さな手を見つめながら呟く。
「……そうだろう。……効率を考えりゃ、新しい橋を架けちまうのが早い。……だが、この橋を通って何世代もの家族が家に帰ってきた。……その『想い』ごと修理するのが、俺たちの本当の仕事だ。……なあ、ベア。……50代の旅は、少し長くなりそうだぞ」
49歳の現場監督から、50歳の巡回相談員へ。
盆山は、自分を「おじさん」と呼ぶベア(見た目は10代後半)に苦笑しながらも、新しいバディとの旅路を確かな足取りで進み始めた。
75話~完~




