第72話:星の掃除機(スターライト・クリーナー) ―49歳、空からの「自動制裁」を解体する―
第72話:星の掃除機 ―49歳、空からの「自動制裁」を解体する―
1. 警告なしの「神罰」
「マスター、緊急警報! 外宇宙の静止軌道上に待機していた、古代の『自動環境防衛衛星』が起動しました! ……地軸の修正(第67話)を『無許可の惑星改造』と判断。……現在、バベル・シャフトを標的に、高出力の荷電粒子砲をチャージ中です!」
ルナの悲鳴に近い報告が、月面事務所に響いた。
かつての文明が、星が自分たちのコントロールを離れた際に「初期化」するために配置した、無人の警備ロボット。それが、盆山の善意による修繕を、テロ行為と誤認したのだ。
盆山は、空を見上げた。
「……やれやれ。……許可、許可ってな。……現場に顔も出さねえ役所(衛星)が、勝手に工事を止めるんじゃねえよ。……ベア、バベル・シャフトの全出力を、頂上の『スカイ・ミラー(第56話)』に回せ。……撃たれる前に、こっちから『掃除』してやる」
2. 施工:超広域・光学的「目潰し」工事
盆山は衛星を破壊するのではなく、その「目」を機能不全にする作戦を立てた。
「アイリス、あの衛星のセンサーは『魔力波』と『光学波』の合成だろう。……なら、地上全域の魔導インフラを一時的に『過負荷状態』にしろ!……世界中の魔導LEDを一斉に上空へ向け、最大出力で発光させるんだ!」
盆山の指示により、夜の大陸が、昼間以上の輝きを放った。それは地上から宇宙へ向けて放たれる、巨大な「フラッシュ(照明弾)」だった。
「ガムリ、バベル・シャフトの頂上から、以前月で回収した『光学迷彩スラグ』を成層圏に散布しろ!……宇宙からの視界を完全に遮断するんだ。……衛星に『この星はもう存在しない』と思い込ませろ!」
衛星のセンサーは、地上の過剰な光と、突如現れた情報の「空白地帯」に混乱。チャージされていたエネルギーは目標を失い、宇宙の彼方へと霧散していった。
3. 49歳の職人談義:『暴力』には『技術』で蓋をする
沈黙した衛星を、月面の重力ビームでゆっくりと軌道外へ押し出し、大気圏で燃え尽きさせた。
「……監督。あいつ、ただ命令に従ってただけなんだよな」
アイリスが、燃え尽きる光を見つめて寂しそうに言った。
「……ああ。……道具ってのはな、使う奴が居なくなっても動き続けちまうことがある。……だが、時代に合わなくなった古いマニュアル(命令)は、現場を殺すだけだ。……壊したんじゃねえ、役割を終えさせてやったんだよ。……これからは、俺たちがこの星の『新しいマニュアル』を書いていくんだ」
49歳の現場監督は、空の脅威さえも「不適切な設備管理」として片付け、惑星の安全を再び確固たるものにした。
72話~完~




