第69話:鉄のクジラを繋ぎ止めろ(パーマネント・ムーアリング) ―49歳、海の「基礎打ち」を指揮する―
第69話:鉄のクジラを繋ぎ止めろ(パーマネント・ムーアリング) ―49歳、海の「基礎打ち」を指揮する―
1. 漂流する巨大都市
浮力は確保したが、次なる問題は「固定」だった。
全長5キロのレヴィアタンは、海流に流されるままでは巨大な「凶器」となり、サンクチュアリの地上拠点や沿岸の村々を破壊しかねない。
「……監督、このデカいもんをどうやって止めるんだ? 碇を下ろしても、この深さじゃ底まで届かねえぞ!」
ガムリが、波に揺れる甲板で踏ん張りながら叫ぶ。
盆山は、手に持った海図をじっと見つめ、一箇所を指差した。
「……海底山脈の頂上だ。……ここに『恒久的な係留』を施す。……アイリス、ルナ。……月から重力ビームで、このレヴィアタンをピンポイントで押し下げろ。……海底に『杭』を打ち込むまでの数時間、こいつを不動の重石にするんだ」
2. 施工:大深度・吸引式基礎工法
盆山が選んだのは、超巨大な「吸盤」で海底に固定する**『サクション・パイル工法』**の魔導進化版だった。
「ベア、直径50メートルの魔導鋼管を海底に突き刺せ。……中の水を魔法で抜き去り、真空圧で海底地盤に食い込ませるんだ。……摩擦力だけじゃねえ、地球の重力そのものを味方につけるんだよ!」
盆山は自ら潜水艇に乗り込み、暗黒の海底でパイルの水平度を確認した。
「ガムリ、地上から持ってきた『超高張力・魔導ワイヤー』をパイルと船体に繋げ。……テンション(張力)は均等にしろ。……一本でも緩めば、この鉄のクジラは暴れ出すぞ!」
バベル・シャフトから送り込まれる電力と、月の重力制御が噛み合い、ついにレヴィアタンは海底と一体化した「動かぬ島」となった。
3. 49歳の職人談義:『止める』技術こそが一流
「……ふぅ、ようやく揺れが収まったな」
盆山は、海上都市の広大なデッキから沈む夕日を眺めた。
「監督。……これ、もはや都市じゃねえ、一つの大陸じゃねえか」
「……ああ。……でもな、ガムリ。……作るより、止める方が難しいんだ。……勢いに任せて進むのは簡単だが、責任を持ってその場に留まり続ける。……それが一番の重労働なんだよ。……さあ、ここを拠点に、世界中の『海』を綺麗にする工事を始めるぞ」
49歳の現場監督が海に打った「杭」。それは、不安定だった世界に、もう一つの不動の「安全地帯」を築き上げた。
69話~完~




