第57話:空の防犯パトロール(スカイ・セーフティ) ―49歳、鳥衝突(バードストライク)を防止する―
第57話:空の防犯パトロール(スカイ・セーフティ) ―49歳、鳥衝突を防止する―
1. 巨大建築物が招く「予期せぬ衝突」
「マスター、警告です。……成層圏まで到達したバベル・シャフトが、この地域の精霊種や飛行魔獣たちの『渡りのルート』を遮断しています。……昨夜だけで、ワイバーンの群れが外壁に衝突する事案が3件発生。……シャフトの表面装甲に、わずかな凹みを確認しました」
ベアトリーチェの報告に、盆山はコーヒーを吹き出しそうになった。
高さ10キロの「棒」がいきなり空に現れたのだ。鳥や魔獣たちにしてみれば、いきなり家の廊下に電柱が立ったようなものだろう。
「……バードストライクか。……現代の空港でも頭を悩ませる問題だな。……ガムリ、装甲を厚くするんじゃねえぞ。……衝突そのものを防ぐ『交通整理』が必要だ」
2. 施工:超音波・指向性誘導システム「精霊の道標」
盆山は、アイリスの古代知識を借りて、シャフト全域に**「広域・非致死性・忌避システム」**を構築した。
「アイリス、魔獣たちが嫌がる周波数の『魔導パルス』を解析しろ。……それと、ベア。……シャフトの周囲1キロに、肉眼では見えないが魔力感知には引っかかる『航空障害灯』を設置する」
盆山がこだわったのは、魔獣を「殺す」のではなく「避けてもらう」ことだった。
「いいか、ガムリ。……ここは奴らのナワバリだ。……後から来た俺たちが、『邪魔だから死ね』ってのは筋が通らねえ。……奴らにも分かる言葉(音と光)で、『ここは通行止めですよ』と教えてやるのが、まっとうな施工管理だ」
さらに盆山は、シャフトの途中に「空中給餌場兼・休憩テラス」を設置した。
「……追い払うだけじゃなく、迂回ルートに餌場を作って誘導する。……名付けて『魔獣専用・パーキングエリア』だ。……これで、無駄な衝突は激減するはずだ」
3. 49歳の職人談義:『共存』という名の安全管理
数日後、シャフトの周りをワイバーンたちが大きく弧を描いて避けていくようになった。
一部の賢い個体は、盆山が作った休憩所で羽を休め、サンクチュアリの住民が用意した果実を食べて帰っていく。
「監督……あんた、魔獣とまで『協定』を結ぶつもりか?」
ガムリが、テラスで巨大な鳥に餌をやる盆山を見て呆れる。
「……協定じゃねえよ。……『お互いの安全距離』を保ってるだけだ。……現場じゃな、近隣住民とのトラブルが一番長引くんだ。……それは人間も魔獣も変わらねえ。……『すみません、ちょっとお邪魔してます』っていう姿勢を忘れたら、インフラ屋は終わりだよ」
49歳の現場監督は、空の先住者たちに敬意を払いながら、バベル・シャフトを世界で最も「優しい」ランドマークへと変えていった。
57話~完~




