第54話:生ける設計図(ライヴ・アーカイブ) ―49歳、古代の「生身」と対話する―
第54話:生ける設計図 ―49歳、古代の「生身」と対話する―
1. 地下40層の「タイムカプセル」
「マスター、地下2500メートルの第40層……第48話で合格をくれた古代ゴーレムが守っていた領域の最奥で、生命維持装置を確認しました。……中には、人間がいます」
ベアトリーチェの報告を受け、盆山はキャリアーの指揮をガムリに任せ、急遽地下へと戻った。
漆黒のチタン合金で守られた小部屋の中、青白い光を放つカプセルに一人の少女が眠っていた。彼女の傍らには、盆山が使っているものよりも遥かに高度な「多次元ホログラム式・工程管理表」が浮遊していた。
「……こいつは、ただの生き残りじゃねえな。……ベア、このコンソールのインターフェースを解析しろ。……どうやら彼女は、この地下都市全体の『総監督』だったらしい」
2. 施工:超低温解凍と「現場の引き継ぎ」
盆山は、少女を安全に目覚めさせるための「クリーン・リカバリールーム」を即座に削り出した。
「解凍は急ぐな。……周囲の魔力密度を彼女の時代の基準まで徐々に上げろ。……潜水病(減圧症)と同じだ。……急激な環境変化は、人間という名の精密機器を壊す」
少女……アイリスが目覚めた時、彼女が最初に目にしたのは、作業服を着た49歳の男が、古い魔導端末を必死に叩いている姿だった。
「……アナタ……? ……この『低レベルな術式』で……私のサンクチュアリを……パッチ(継ぎ接ぎ)だらけにしたのは……」
「……やれやれ、挨拶より先に『手抜き工事』の指摘か。……耳が痛いね。……だが、あんたが寝てる間に、この世界は一度滅びかけてんだ。……現役の現場監督(俺)が、なんとか騙し騙し維持してやったんだよ」
3. 49歳の職人談義:『遺産』を『現役』に戻す
アイリスは、盆山が作り上げた「サンクチュアリ(第50話)」の全図面を高速で閲覧し、鼻で笑った。
「……非効率。……エネルギーの損失率が4%もある。……古代の基準なら不合格ね」
「……4%も、じゃねえ。……4%『しか』ねえと言ってほしいもんだな。……いいか、お嬢さん。……あんたの知識は確かに凄いが、それは『過去の完成図』だ。……俺が今やってるのは、『壊れた世界のリフォーム』なんだよ」
盆山はアイリスに、使い古した自分のヘルメットを差し出した。
「……文句があるなら、現場へ来い。……あんたの『理想』と、俺の『現実』。……どっちが今の連中を幸せにできるか、一緒に汗をかいて確かめようじゃねえか」
49歳の現場監督は、古代の叡智という名の「最高のスペシャリスト」を仲間に加え、インフラの真の完成へと向けて歩み出した。
54話~完~




