第52話:動く避難所(ロジスティクス・キャリアー) ―49歳、要塞を「現場事務所」に改造する―
第52話:動く避難所 ―49歳、要塞を「現場事務所」に改造する―
1. 戦火に焼かれる周辺諸国の救済
「監督、帝国軍の暴走は一部に留まりませんでした。……彼らはサンクチュアリに手を出せない腹いせに、近隣の無防備な村々を焼き払っています。……人々を救いたいのですが、サンクチュアリまで避難させる間に、冬の寒さと飢えで力尽きてしまう!」
エルゼ王女が、悲痛な叫びを上げた。
盆山は、広大な資材置き場に立っていた。そこには、第39話でレストアした古代の飛行船舶の「予備エンジン」と、膨大な量の「魔導鋼」が余っていた。
「……待ってろってのは酷な話だ。……なら、こっちから『街』を持っていくしかねえな」
2. 施工:超大型・移動式物流拠点「サンクチュアリ・キャリアー」
盆山が着手したのは、全長200メートルを超える、巨大なクローラー(無限軌道)を装備した**「移動式要塞事務所」**の建設だった。
「ベア、こいつの基本構造はRC(鉄筋コンクリート)じゃ重すぎる。……ハニカム構造の古代素材をメインフレームに使え。……中には、第41話で作ったプレハブ住宅1000戸分を即座に射出できる『オートメーション・デッキ』を完備しろ」
ガムリは、巨大なクローラーの軸受を叩いていた。
「監督! このサスペンション、魔法で『重力軽減』をかけねえと、地面が陥没しちまうぞ!」
「分かってる。……ベア、地面への接地圧を常に0.5キロ以下に保つように浮力魔法をリンクさせろ。……この巨大な塊が、雪の上でも沈まずに、時速60キロで巡航できるようにするんだ」
完成したのは、巨大なビルがそのまま動いているような異形の姿だった。
内部には、巨大な「魔導キッチン」「移動式病院」「広域通信アンテナ」を搭載。
まさに、盆山がかつて大規模現場で指揮を執った「動く現場事務所」の究極進化形だった。
3. 49歳の職人談義:『支援』はスピードと物量だ
「サンクチュアリ・キャリアー」が、唸りを上げて荒野を進む。
戦火に怯える村に到着するやいなや、キャリアーの側面が開き、温かい食事と、数分で組み上がる仮設住宅が次々と「配布」されていった。
「監督……これじゃ、まるでもう一つの『サンクチュアリ』が歩いているみたいだ」
「……支援ってのはな、ガムリ。……『頑張れ』って言葉をかけることじゃねえ。……『もう大丈夫だ』っていう実感を、物量で叩きつけることなんだよ。……物資が届き、屋根ができ、道が繋がる。……そのスピードこそが、職人の誠意ってやつだろ?」
49歳の現場監督は、キャリアーの操縦席でコーヒーを啜りながら、次なる「救済現場」の座標を定めた。
彼にとって、この巨大な要塞は武器ではなく、世界で最も頼りになる「災害復旧車両」だった。
第52話、完。




