第51話:灰色の雨(アイアン・シージ) ―49歳、防衛を「解体工事」と定義する―
第51話:灰色の雨 ―49歳、防衛を「解体工事」と定義する―
1. 平和を切り裂く「主戦派」の暴走
「マスター、警告です。……地平線より、帝国の『強硬派(主戦派)』が率いる魔導装甲師団、約5000が接近中。……彼らは、サンクチュアリが提供した『大橋(第43話)』を逆手に取り、我が物顔で高速道路(第45話)を侵攻しています」
ベアトリーチェの瞳が、戦闘モードの深紅に染まった。
平和的な交流を望む皇帝の意志を無視し、サンクチュアリの富と技術を独占しようとする軍部のクーデター軍だった。
「……やれやれ。俺の作った道を、人殺しの道具にして走ってくるとはな。……職人として、これほど不愉快な使い方はねえな、ガムリ」
「ああ、監督。……あいつら、俺たちの『現場ルール』を完全に無視してやがる。……教育が必要だな」
2. 施工:動的ディフェンス・インフラ「自動解体エリア」
盆山は慌てることなく、手元のタブレット(魔導端末)の「非常時管理メニュー」を開いた。
「ベア、第45話で敷設した高速道路の第4区画から第8区画までを『メンテナンス・モード』に移行させろ。……敵を倒す必要はねえ。……ただ、進めなくすればいいんだ」
帝国軍がサンクチュアリの地上拠点まであと1キロに迫った瞬間、目の前の道が「消えた」。
盆山が仕込んでおいたのは、**「瞬間・路面反転システム」**だ。アスファルトが魔力で液体化し、アリ地獄のような深い砂地へと変貌した。
「ガムリ、仕上げに『バリケード』だ。……ただし、ただの壁じゃねえ。……以前ゴミ処理で作った魔力スラグ(第30話)を、超高圧で噴射して固定しろ!……高さ10メートルの『インスタント擁壁』を、奴らの周囲360度に展開しろ!」
わずか数分で、無敵を誇った装甲師団は、高さ10メートルの強固なコンクリート壁に囲まれた「巨大な肥溜め」の中に閉じ込められた。
3. 49歳の職人談義:『壊す』より『止める』方が難しい
壁の中から放たれる魔導砲の衝撃も、盆山が計算し尽くした「耐震構造」の前では無意味だった。
「監督、あいつら、出られなくて泣き叫んでるぜ」
「……当たり前だ。……現場で一番怖いのは、出口がねえことだからな。……いいか、軍人さんよ。……あんたらが持ってる武器は『破壊』のためのもんだ。……だが、俺たちが持ってるのは『維持』と『固定』のための技術だ。……壊すだけの力で、この『ガチガチに固まった善意』は突破できねえよ」
盆山は、包囲された帝国軍に「サンクチュアリ特製・あったか弁当」をドローンで投下した。
「……腹が膨れたら、自分たちの仕業がどれだけ『現場の迷惑』か、ゆっくり反省しな」
51話~完~




