第47話:見えない毒(サイバー・サボタージュ) ―49歳、アナログの「強み」を再起動する―
第47話:見えない毒 ―49歳、アナログの「強み」を再起動する―
1. 聖域の「心臓」が跳ねる
「……マスター、緊急事態です。第46話で導入した家事ゴーレム『サンクチュアリ・メイド』の一部に、異常なマジック・パケットを確認。……制御アルゴリズムが書き換えられ、市民に『反乱』を始めています」
ベアトリーチェの、いつになく焦りを含んだ声が中央管理室に響いた。
盆山茂(49歳)は、モニターに映し出された凄惨(?)な光景を目にした。ゴーレムたちが包丁を振り回しているわけではない。だが、夕食のスープをわざと激辛にし、洗濯物をわざと破り、部屋の温度をサウナ状態に上げているのだ。
「……嫌がらせか。それも、高度に計算された『精神的攻撃』だな」
盆山は冷めたコーヒーを飲み干し、コンソールを叩いた。
2. 施工:論理の「遮断壁」と物理スイッチ
敵は、サンクチュアリの利便性を逆手に取り、ネットワーク経由で魔導ウイルスを流し込んだのだ。
「ベア、無線を切れ。……今の便利な世の中は、糸の切れた凧に弱いんだ。……ガムリ、倉庫から『アレ』を持ってこい。……第5話で使った、ただの『物理ケーブル』だ!」
盆山が指示したのは、情報の「アナログ化」だった。
「いいか、無線は便利だが、どこからでも侵入される。……なら、直接線を繋ぐ(ハード・ワイヤード)しかねえ。……重要拠点のゴーレムと管理魔石を、物理的な光ファイバーで直結しろ。……空中に漂う悪意ある魔力なんて、物理的な遮断の前じゃ無力だ」
盆山は自ら地下道の配管に入り、古い職人のように一本一本、通信ケーブルを手作業で繋ぎ直していった。
「……効率は悪い。だが、これが一番『確実』だ。……現場じゃ、最新の無線インカムが壊れた時に最後に頼れるのは、大声と手旗信号なんだよ」
3. 49歳の職人談義:『便利』に甘えるな
数時間後、物理的な隔離とウイルス駆除が完了し、ゴーレムたちは再び従順な家政婦に戻った。
「……監督、助かったぜ。……あやうく風呂の温度を100度に設定されるところだった」
ガムリが、汗を拭いながら安堵の息を漏らす。
「……ガムリ、ベア。……便利になるってことは、自分の命を『誰かが作ったシステム』に預けるってことだ。……それには相応の覚悟がいる。……俺たちはインフラ屋だ。……万が一、システムが全滅した時でも、手動でバルブを回せば水が出る。……そんな『泥臭い二重系』を残しておくのが、プロの最後の良心なんだよ」
盆山は、中央管理室の片隅に、重厚な「物理レバー」を設置した。それを引けば、すべての魔法が停止し、アナログな機械だけが動く。
49歳の現場監督は、デジタルの闇を経験したことで、改めて「自分の手で触れる確信」の重要さを噛み締めていた。
47話~完~




