第46話:家政の小妖精(ホーム・ヘルパー) ―49歳、家事の「重労働」を魔法で自動化する―
第46話:家政の小妖精 ―49歳、家事の「重労働」を魔法で自動化する―
1. 豊かさの裏側にある「日常の疲弊」
「盆山様、サンクチュアリは確かに素晴らしい場所です。……でも、家に帰ると山のような洗濯物と、煤だらけのキッチンが待っています。……私たちは、文明の恩恵を十分に享受する『時間』が足りないのです」
サンクチュアリの居住区で暮らす女性の一人が、荒れた手を見せながら盆山に訴えた。
盆山は、現場事務所で冷めたカップ麺(風の保存食)を啜りながら考え込んだ。
「……インフラが整っても、個人の生活が『現場』のままじゃあ、本当の豊かさとは言えねえな。……よし、地下2000メートルの古代遺跡(第39話)の隅っこで見つけた、あの『お掃除ゴーレム』の残骸……あれを現代風にフル・リノベーションするぞ」
2. 施工:魔導家事ゴーレム「サンクチュアリ・メイド」の量産
盆山は、古代の戦闘用ゴーレムの技術を、徹底的に「平和利用」へと転用した。
「まず、見た目だ。威圧的な鉄塊はダメだ。……丸みを帯びた、清潔感のある白いセラミック装甲(第40話の端材)を使え。……大きさは子供くらい。……これなら家族も怖がらねえ」
彼は内部の術式を、戦いではなく「清掃・洗濯・調理」へと書き換えた。
「ベア、こいつの指先に『超音波洗浄』と『温風乾燥』の魔法を組み込め。……皿洗いは30秒。……洗濯物は、畳むところまで全自動だ。……それと、安全センサーは妥協するな。……赤ん坊が触れても、0.1秒で停止する『物理遮断結界』を標準装備しろ」
さらに盆山は、以前開発した「魔導インターフェース」を使い、ゴーレムに『献立の提案機能』を付与した。
「……今日は少し疲れているようですね。……胃に優しいスープを作りましょうか? ……なんて気の利いたセリフ、俺が言われたいくらいだがな」
3. 49歳の職人談義:『時間』を贈るという仕事
「家事代行ゴーレム」が家庭に導入されると、サンクチュアリの風景は一変した。
夕方、汚れ仕事から解放された人々が、公園で子供と遊び、カフェで読書を楽しみ、大切な人と語らう「余暇」が生まれたのだ。
「監督……あんたは、ついに『人間の時間』まで設計し始めたのか?」
ガムリが、公園で子供と追いかけっこをするゴーレムを見て呆れたように笑う。
「……設計したのは『余裕』だよ。……俺がいた日本では、みんな忙しすぎて、何のために働いてるのか分からなくなってた奴が大勢いた。……インフラってのは、結局のところ『人間が人間らしくあるための時間』を稼ぐためにあるんだよ。……皿洗いなんて、魔法(機械)に任せときゃいいんだ」
49歳の現場監督、盆山茂。
彼は、巨大なダムや橋を造るのと同じ熱量で、人々の台所の「小さな幸福」をデザインしていた。
サンクチュアリは、ついに人々の「魂」を癒やす領域へと、その土木作業の手を伸ばしていた。
第46話、完。




