第45話:鋼鉄の動脈(ハイウェイ・スター) ―49歳、魔導アスファルトで距離を殺す―
第45話:鋼鉄の動脈 ―49歳、魔導アスファルトで距離を殺す―
1. 物流のボトルネック:未舗装路の限界
「監督、第43話で橋を直したのは良かったんだが、その先の道がボロボロすぎて、結局、馬車が1日10キロも進まねえ。……これじゃ、せっかくの農作物(第42話)が届く頃には腐っちまうぜ」
ガムリが、泥だらけになった馬車の車輪を蹴りながらぼやいた。
地上は雨が降れば泥濘と化し、乾けば砂埃が舞う「悪路」の宝庫だった。
「……道路は文明の血管だ。血管が詰まってちゃ、どんなにいい心臓を作っても意味がねえ。……よし、世界初の**『全天候型・魔導高速道路』**の着工だ!」
2. 施工:自己修復アスファルトと「インターチェンジ」
盆山は、現代の道路舗装技術を、異世界の魔法で魔改造した。
「ベア、アスファルトの代わりに、以前ゴミ処理プラントで作ったスラグ(第30話)に、弾力性のある『魔導ゴム』を混ぜた新素材を使う。……こいつは魔法で『自己修復』する。ひび割れが起きても、夜の間に勝手に塞がるんだ」
盆山は魔導シールドマシンを「道路敷設モード」に切り替え、森を抜け、岩山を貫き、一直線の「黒い帯」を伸ばしていった。
「ガムリ、カーブの『カント(傾斜)』には気を遣え。……高速で走る馬車が外側に振られないよう、計算通りの角度で路面を傾けるんだ。……それと、これだ。……『立体交差』」
十字路で信号待ちをする無駄を省くため、盆山は美しい螺旋を描くジャンクションを設計。
さらに、50キロごとに「サービスエリア(SA)」を建設した。
「……ただの休憩所じゃねえ。……名物は、地下から直送されたソフトクリームと、24時間入れる大浴場だ。……ドライバーの疲れを癒やすのも、インフラ設計の一部だからな」
3. 49歳の職人談義:『舗装』という名の平和
開通したハイウェイを、サンクチュアリ製の蒸気・魔導ハイブリッドトラックが疾走する。
かつて1週間かかっていた距離が、わずか数時間へと短縮された。
「……監督、この道はすごいな。……揺れがまったくない。……ワインを入れたグラスを置いても、一滴もこぼれねえぞ」
試乗した商人が、驚愕の声を上げる。
「舗装ってのはな、ただ地面を固めることじゃない。……『不確実性を排除する』ことなんだ。……天候に左右されず、賊に襲われる心配もない、平坦な道。……それが保証されて初めて、経済は回り始める。……人間、安心して移動できるようになったら、わざわざ殺し合う理由も減るもんだよ」
49歳の現場監督が敷いた黒いアスファルトは、世界の「距離」という名の障壁を、音もなく削り取っていった。
45話~完~




