第39話:深淵の翼(プロトタイプ・アーク) ―49歳、空の「安全」を地下から組む―
第39話:深淵の翼 ―49歳、空の「安全」を地下から組む―
1. 地下2000メートルの「格納庫」
「監督! 第37層の奥、第36話で見つけた黒い壁のさらに先だ……とんでもねえもんを見つけちまった。……これは、建物じゃねえ。『乗り物』だ!」
ガムリの叫び声に、盆山は再びヘルメットを掴んで現場へ向かった。
そこには、地下2000メートルの巨大なジオード(晶洞)の中に、静かに翼を休める「銀色の巨体」があった。全長100メートル。流線型のボディを持つ、古代の**「魔導飛行船舶」**だ。
「……船か。いや、この形状は『航空機』に近い。……ベア、こいつの動力源を解析しろ」
2. 施工:アビオニクス(航空電子機器)のリノベーション
盆山が着手したのは、数万年の眠りについていた機体の「レストア」だった。
「外装の強度は、あの古代素材のおかげで生きてる。問題は中身だ。……制御系が全滅してやがる。……ベア、ここにサンクチュアリの通信網(第37話)と連動する『魔導OS』をインストールしろ」
盆山は、コックピットの計器類をすべて撤去し、現代のグラスコックピットを模した「全周パノラマ・ホログラム」へと換装した。
「ガムリ、お前さんは『降着装置』の油圧……いや、魔圧シリンダーのシールを全部交換しろ。……着陸時に足が折れたら笑えねえからな」
さらに盆山は、この船を地上へ出すための「垂直離着陸用シャフト」を、サンクチュアリの中心部にぶち抜いた。
「直径50メートルの垂直坑だ。……壁面には『電磁加速』を設置しろ。……エネルギーは地熱発電(第29話)から直接引く。……地下から宇宙へ、弾丸のように射出するんだ」
3. 49歳の職人談義:『点』から『立体』へ
試験飛行の日。盆山は自ら操縦席に座り、スロットルを押し込んだ。
「ギュゥゥゥゥン!」という、空間が歪むような重低音。銀色の巨体は垂直坑を猛烈な勢いで上昇し、数秒後、地上の山脈を突き抜けて青空へと飛び出した。
「……おお、これが『空』か」
モニター越しに見る世界の広大さに、ガムリが言葉を失う。
「鉄道(第25話)が地上の『線』なら、こいつは『立体』だ。……これで帝国の封鎖網なんて無意味になった。……物資も、人も、この『サンクチュアリ・エアライン』が直接運ぶ」
盆山は、49歳の疲れた目に青空を映しながら、かつて日本の空港ビル建設に携わった時のことを思い出していた。
「空を飛ぶのは魔法じゃねえ。……徹底した整備と、完璧な管制システムだ。……ベア、サンクチュアリの屋上に『管制塔』の設計を入れるぞ。……空の渋滞はごめんだからな」
地下の聖域は、ついに「空」という名の、もう一つのフロンティアを手に入れた。
39話~完~




