第33話:沈黙の防衛線(セキュリティ・アップ) ―49歳、見えない敵を「排除」する―
第33話:沈黙の防衛線 ―49歳、見えない敵を「排除」する―
1. 繁栄の影に潜む「毒」
「……マスター、不審な動きです。北の第3換気ダクト付近で、魔力シグネチャーの不一致を検知しました。……登録されていない『影潜み(シャドウ・ハイド)』の術式です」
中央管理室。ベアトリーチェの冷徹な声が響く。
サンクチュアリが公認の中立地帯となり、巨大な富を生み出すにつれ、その「心臓部」であるエネルギーコアや通貨管理システムの情報を狙うスパイが急増していた。今回の侵入者は、隣国の帝国が放った「影の暗殺者」たちだ。
「……やれやれ。教育だなんだと忙しい時に、無粋な客だ。……ベア、こないだアップデートした『防犯フェーズ4』のテストをしよう。……殺しはしねえ。だが、『二度とここに来たくねえ』と思わせてやる」
2. 施工:動的な「罠」と感覚の攪乱
盆山は慌てて武器を手に取ったりはしない。彼はコンソールのレバーを静かに操作した。
「まず、ダクト内の空気を『高粘度酸素』に切り替えろ。……息は吸えるが、泳いでいるような重さを感じさせる。……次に、これだ。……『多角反射・幻惑ミラー』」
侵入者が通路に出た瞬間、壁一面が魔導鏡となり、彼らの姿を数千に増殖させ、距離感を狂わせる。さらに盆山は、以前開発した「指向性スピーカー」から、超高周波の不快音と「赤ん坊の泣き声(の逆再生)」をミックスした音響弾を浴びせた。
「ガムリ、仕上げだ。……床を『全反射・超低摩擦セラミック』に反転させろ。……摩擦係数0.001。スケートリンクよりも滑るぞ」
暗殺者たちは、重い空気に翻弄され、鏡の中の自分たちに恐怖し、最後にはツルツルの床の上で無様に転び回る「ボール」と化した。
3. 49歳の職人談義:建物そのものが「武器」になる
「強制ログアウト」システムにより、暗殺者たちは意識を失ったまま、地上の雪山へと転送された。起きた時には、自分たちの武器も衣服もすべて「リサイクル工場」へ送られ、代わりに盆山特製の「派手なピンク色の着ぐるみ」を着せられていることだろう。
「監督……あんたの戦い方は、ある意味で戦士よりも残酷だな」
ガムリが苦笑いする。
「戦いじゃねえよ。これは『建物管理』だ。……不法侵入者は、放置すれば建物(街)を傷つける。……なら、速やかに、確実に、かつ『清掃の手間をかけずに』排除する。……それが管理者の責任だろ?」
盆山は再びモニターに目を戻し、異常がないことを確認すると、冷めたコーヒーを一口飲んだ。彼のセキュリティは、力ではなく「不快と屈辱」によって、鉄壁を誇っていた。
33話~完~




