第29話:地底の心臓(コア) ―49歳、無限の熱量を調教する―
第29話:地底の心臓 ―49歳、無限の熱量を調教する―
1. エネルギー危機と現場監督の予見
「電気が足りねえ……いや、この世界じゃ魔力の供給不足か」
盆山茂(49歳)は、中央管理室のモニターに映し出された、激しく点滅する赤い警告灯を見つめていた。
鉄道の運行、駅ビルの24時間照明、カプセルホテルの空調、そして物流センターの自動化。サンクチュアリが消費する魔力量は、盆山が当初設置した小規模な魔導発電機では到底賄えないレベルに達していた。
「ベア、今のままじゃ数日以内にブラックアウト(全域停電)だ。停電は現場の死、都市の死を意味する。……ガムリ、もっと深いところへ行くぞ。地下1000メートルのさらに下、この星の『体温』を直接借りに行く」
2. 施工:超深度地熱発電
盆山が目をつけたのは、サンクチュアリのさらに数キロ下方に眠る「マグマ溜まり」だった。
彼は魔導シールドマシンを垂直に立て直し、地殻を貫通させるための「超高温耐性ボーリング」を開始した。
「ただ熱いだけじゃダメだ。熱を『安定』させて取り出すのがプロの仕事だ。……ガムリ、この『ヒートパイプ』には、お前さんが作った最強の耐熱合金『アダマンチタン』を使え。ベア、あんたはパイプ内の冷却水が沸騰した際の圧力を、そのまま回転エネルギーに変える『高圧魔導タービン』の術式を組め」
盆山が設計したのは、現代の地熱発電を魔法で極限まで効率化させた**「魔導・地熱ハイブリッド発電所」**だ。
地下深くから汲み上げた熱エネルギーを、ベアトリーチェの「圧縮魔法」でさらに高密度化し、巨大な結晶体(魔石ストレージ)へと流し込む。
「いいか、冗長性を忘れるな。発電ユニットは三系統。一系統がメンテナンス中でも、他の二系統で都市を回せるようにしろ。……『予備がない』なんてのは、設計ミスと同義だ」
3. 49歳の職人談義:エネルギーは「自立」への切符
数日間の不眠不休の工事の末、サンクチュアリの地下深くで、巨大なタービンが「キィィィィィィン」という重低音を響かせて回転を始めた。
モニターの警告灯が次々と青に変わり、サンクチュアリ全域に、かつてないほど安定した「輝き」が戻った。
「……監督。これだけのエネルギーがあれば、この国一つを丸ごと光らせることも可能なんじゃないか?」
ガムリが、唸りを上げるタービンを見上げて呟く。
「……かもしれないな。だが、俺が欲しいのは権力じゃねえ。『誰にも邪魔されずに、自分たちの生活を維持できる自由』だ。エネルギーを自給できねえ街は、いつか外から首を絞められる。……これで、このサンクチュアリは本当の意味で『独立』したんだよ」
盆山は、発電所のコントロールパネルにそっと手を置いた。その温もりは、彼が作った都市が生きている証だった。
29話~完~




