第28話:地底の動脈(ロジスティクス) ―49歳、ラストワンマイルを走破する―
第28話:地底の動脈 ―49歳、ラストワンマイルを走破する―
1. 物流の「目詰まり」への回答
「駅に荷物が山積みだ。これじゃ、鉄道の運行にも支障が出るぞ」
鉄道開通により、サンクチュアリには毎日トン単位の物資が流れ込んでいた。だが、駅から各施設、あるいは地上への配送が追いつかず、プラットフォームは荷物の墓場と化していた。
「……物流の滞りは、都市の便秘と同じだ。放置すれば毒が回る」
盆山は、駅の裏手に巨大な**「自動物流センター・パルス」**を建設することを決意した。
「ただ運ぶだけじゃねえ。……『どこに何があるか』を完璧に管理し、必要な時に、必要な場所へ、一秒でも早く届ける。……日本の宅配便システムをここに移植するぞ」
2. 施工:魔導式コンベアと「ソーター」の自動化
盆山は、広大な倉庫の床に、縦横無尽に走る「魔導ベルトコンベア」を張り巡らせた。
「ベア、このコンベアに『重量感知』と『形状認識』の魔法陣を組み込め。荷物が載った瞬間、宛先と重さを読み取って、自動的に仕分け(ソート)するんだ」
ベアトリーチェの指先から放たれた魔法が、数千もの可動式フラップを制御する。
さらに盆山は、倉庫内に「立体自動ラック」を構築。
「ガムリ、お前さんはこの『魔導フォークリフト』の調整を。……全自動で棚の最上段から荷物を引き出し、コンベアに乗せる。……人間が歩き回る時間は、すべて『無駄』だと思え」
倉庫内は、精密な時計の内部のように、音もなく荷物が流れていく。
「ピッ」という魔法の認証音と共に、荷物が次々と行先別のコンテナに吸い込まれていった。
3. 49歳の職人談義:ラストワンマイルの誇り
物流センターの完成により、サンクチュアリ内の配送は劇的に改善された。だが、盆山はさらなる「一手」を打った。
「駅まで取りに来る手間を省く。……各宿泊施設や住宅、さらには地上の拠点まで直接届ける『魔導式・小型配送ドローン』……いや、地下だから『自動走行カート』だな」
盆山が設計したのは、三輪走行で自律移動する可愛らしい外観の「配送ゴーレム」だった。
「こいつが玄関先まで荷物を運び、受取人の魔力指紋を確認して渡す。……これが『ラストワンマイル』の完遂だ」
ある日、王女エルゼが故郷の友人へ送るための小さな包みをセンターへ持ち込んだ。
「盆山様、これ、いつ届くのかしら?」
「……今日の夕方には、地上の受取人の手元にありますよ」
「えっ!? 100キロも離れているのに……魔法でも使わない限り無理よ」
「ええ、魔法は使ってますが……一番大事なのは『仕組み』ですよ、お姫様」
夕方、エルゼの元に友人からの「届いたわ!」という魔導通信が入ったとき、彼女は盆山が作っているのは建物ではなく、「時間」そのものなのだと気づいた。
地下1000メートルの動脈が、力強く拍動を始めた。
49歳の現場監督が描く「地下都市」は、もはや止まることのない進化のステージへと突入していた。
第28話、完。




