第21話:地下の脈動 ―49歳、世界を「線」で結ぶ―
第21話:地下の脈動 ―49歳、世界を「線」で結ぶ―
1. 職人の野望:駅の建設
「垂直の次は、水平の移動だ」
盆山は、サンクチュアリの北側、最も強固な岩盤が続くエリアに、巨大な駅舎の基礎を打ち込んでいた。
「これまでのサンクチュアリは『点』だった。……だが、これからは『線』で世界と繋がる。……ベア、地上側の『始発駅』の候補地は決まったか?」
「はい、マスター。公爵閣下の領地の外縁部、街道の結節点にある廃村の地下を指定しました。……そこと、このサンクチュアリを、時速200キロの魔導列車で結びます」
ガムリが目を輝かせる。
「監督! ついに『鉄道』か! 俺たちの国でも、鉱石運搬用のトロッコはあるが、人を時速200キロで運ぶなんて、正気の沙汰じゃねえぜ!」
「だからこそ、俺が作るんだ。……安全、正確、そして快適。……日本の鉄道精神を、この異世界に見せつけてやる」
2. 施工:トンネルボーリングマシン(魔導式)
盆山は、今回のために新しい重機を「召喚」ならぬ「自作」した。
巨大なドリルを先端に備えた、自走式の**「魔導シールドマシン」**だ。
「ガムリ、お前さんはドリルの刃の強化を。ベア、あんたは掘削した土砂を瞬時に転送・排除する魔法回路を組め。……一日で100メートル掘り進めるぞ!」
轟音と共に、シールドマシンが動き出す。
ただ穴を掘るのではない。掘削と同時に、壁面にコンクリート(魔導焼き固め)のセグメントを装着し、瞬時に強固なトンネルを形成していく。
「……いいか、曲げは許さねえ。レーザー誘導で、ミリ単位の直進を維持しろ。……これが、サンクチュアリの『動脈』になるんだ」
3. 49歳の職人談義:インフラは平和への切符
作業の合間、盆山は駅のプラットフォーム予定地で、王女エルゼと向き合っていた。
「盆山様。……どうして、これほどまでに急いで、外の世界と繋がろうとするのですか? ここに閉じこもっていれば、貴方は平和でいられるのに」
盆山は、汚れた手袋を脱ぎ、完成間近のトンネルの奥を見つめた。
「……お姫様。……平和ってのは、壁を作って閉じこもることじゃない。……『いつでも行けるし、いつでも来れる』という信頼が積み重なった時に、初めて生まれるもんなんです。……道ができれば、物資が流れる。物資が流れれば、飢えがなくなる。……飢えがなくなれば、人は剣を置く。……俺が作っているのは、ただの鉄道じゃない。……戦争をするのが馬鹿らしくなるような、圧倒的な『便利さ』だ」
王女エルゼは、その言葉に深く、深く頷いた。
49歳の現場監督が描く未来。それは、かつて彼が日本の満員電車の中で夢見た、「誰もが平穏に家に帰れる世界」の再現だった。
21話~完~




