第102話:引退した巨人の心臓(ゴーレム・リノベーション) ―61歳、戦友の「再雇用」を画策する―
第102話:引退した巨人の心臓 ―61歳、戦友の「再雇用」を画策する―
1. 鉄クズと呼ばれた英雄
かつてバベル・シャフトの建設で、昼夜を問わず巨石を運び続けた大型重機型ゴーレム「タイプ・ヘラクレス」。平和になった今、それらの巨体は「魔力消費が激しすぎる」という理由で、地方の解体工事現場の隅で錆び付いていた。
盆山は、ある解体業者から「古いゴーレムを処分してほしい」という依頼を受け、その現場を訪れた。
「……マスター。この個体……製造番号004。……バベル・シャフト第3工区で、あなたの命を土砂崩れから守った個体です」
ベアの瞳に、かすかな哀しみが宿る。
盆山は、泥と油にまみれたゴーレムの頭部を、無言で叩いた。
「……まだ、生きてやがる。……駆動核が、かすかに『もっと働かせろ』って唸ってやがるぞ」
2. 施工:省エネ型・高トルク化「心臓移植(換装)」
盆山は、最新の「常温・低出力魔導エンジン」を自作し、旧世代のバカ食いエンジンと交換するリノベーション(大規模修繕)を開始した。
「……こいつの筋肉は、今の若いゴーレムよりずっといい鋼を使ってる。……ただ、胃袋がデカすぎただけだ。……ベア、こいつの感覚神経を、最新の『土質感知モード』にアップデートしろ」
盆山は、ボルトの一つ一つを丁寧に磨き上げ、高級な「グリフィン・グリス」を注油した。
「……いいか、道具ってのはな、使い倒して捨てるもんじゃねえ。……時代に合わせて『着替えさせて』やるもんだ。……こいつは今日から、山奥の開拓地で『森を傷つけない繊細な重機』として生まれ変わるんだ」
再起動したヘラクレスが、ゆっくりと巨大な腕を上げた。その動きは、かつての荒々しい破壊の力ではなく、赤ん坊を抱くような優しさに満ちていた。
3. 61歳の職人談義:『経験』は錆びない
再生されたゴーレムは、自ら盆山の前に膝をつき、感謝を示すように電子音を鳴らした。
「……マスター。……機械にも、誇りはあるのでしょうか」
「……当たり前だ。……こいつは、自分の仕事がどれだけ誰かのためになったか、その『手応え』を覚えてる。……人間もゴーレムも同じだ。……『必要とされる場所』がある限り、俺たちは何度でも立ち上がれる。……だろ、相棒?」
盆山は、自分と同じように少しだけ動きの硬くなった「老兵」と共に、次の現場へと向かう契約書に判を押した。
102話~完~




