表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吠えろ!ガラクタ~塵芥戦術~  作者: 堀尾 朗
第1章「虚ろな涙」
1/7

序文

【がらくた】

使い道や値うちのなくなった雑多な品物や道具類

――大辞泉より引用――


とあるゴミ屋敷の主人は、溢れ返るそれらを「宝の山」と呼んだ。

また、とある老人は、廃墟と化した建物を見上げ、目に涙を浮かべた。

さらに、とある女は、山奥にある誰も見向きもしなくなった石像を、律儀に毎日掃除していた。


とある少年は、レストランのお子様セットに付属されたそれを玩具と形容した。

しかし一年が経つ頃には、それはガラクタへと変貌していた。

ガラクタと認定された末路は、決まって焼却炉行きである。

だが幸か不幸か、床に転がったそれを少年は無意識に蹴飛ばしてしまい、ベッドの下に隠れた。

これにより、それは焼却炉行きを免れた。


一方の少年は、かつてガラクタ扱いしたそれを押入れから引っ張り出した。

自嘲の笑みが溢れる。

積もった埃を払い落とすと、灰色であったそれがカラフルに彩られていく幻影が広がる。

電気を通すと、それは懐かしい音色を立てて起動した。


少女はそれを踏んづけて、「イタッ」と小さな悲鳴を上げた。

腹を立てた少女は、容赦なくそれをゴミ箱に放り込んだ。

少女はそれをガラクタと呼んだ。

だが、一つ下の弟はそうではなかった。

怒り出した弟に、少女は「床に放っておく方が悪い」と捨て台詞を吐いた。


ガラクタとは、所詮、人の主観による産物である。

ただひっそりと佇み、時に反感を買っては、理不尽な仕打ちを受けるだけの哀れな存在。


それでも――我々はどこまでも従順なのであった。

この国では、少しでも異なる者は“ガラクタ”と呼ばれる。

そして今日も、誰かが焼却炉へと運ばれていく。

お読みいただきありがとうございます。

よろしければ、評価して下さるとありがたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ